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ネパール障害女性運動家ラマ・ダカルさんとの交流(前編)

2018年08月22日 障害女性

来日中のネパールのラマ・ダカルさん(障害女性協会元会長、現・全国身体障害者協会)にお会いしました。8月に京都で開催された障害と性的志向・ジェンダー自認についてのアジアの国際会(注)のため招聘されたそうです。ラマさんは、8月11日のDPI日本会議常任委員会を訪問し、また8月17日にDPI女性障害者ネットワーク代表の藤原久美子・副代表の佐々木貞子(両名ともDPI日本会議常任委員)と交流しました。

ラマさんに伺った話を藤原さんの記録を元に、前編・後編の2回に分けてお伝えします。ネパールの障害女性の課題と現在の活動について伺いました。
ラマさん、DPI女性障害者ネットワーク代表の藤原久美子・副代表の佐々木貞子

【ラマさんの話】

従来、ネパールでは、障害のある少女は一生家にいるのだから教育は必要ないと考え、障害のある子どもを学校に行かせないことが普通でした。今でもせっかく通学を始めても、学校建物がアクセシブルでなかったり、家から遠方だったりして、通うのをやめてしまう場合があります。一方で、障害のある男子の場合は教育を受けて収入を得られるようにと親が一生懸命になる傾向があります。

私は15歳くらいの時、看護師になりたいと思いましたが、下肢に障害があり、看護学校には私が使えるアクセシブルなトイレがないと言われ諦め、フラストレーションを抱えていました。そこで障害分野で、特に農村の女性を支援するプログラムで働くことにしました。現在、私は長年働いていた障害女性の団体ではアドバイザーを務め、身体障害者の団体で働いています。この団体は、中央政府と、7つの地方政府を通じてさまざな活動を行っています。また手話通訳者でもありますし、視覚障害者のガイドヘルパーとしても働いています。
また、私はネパールで結婚した最初の障害女性ではないかと思います。ネパールでは障害児が生まれるとその子は一生家にいるという前提で、結婚するということはほとんどの家族は考えていません。でも最近では都会に行って、恋に落ちて結婚する人も出てきました。私もそうでした。結婚相手が自分より低いカーストの出身でしたので、家族の賛同を得られるのに何年もかかりました。今は娘がいて、夫の母親と一緒に6人で住んでいます。

●ネパールでの障害女性
DPIネパールが1993年にできた時、障害のある女性は4人しか参加していませんでした。団体の定款には障害女性についての視点や項目がありませんでした。そこで1998年からDPIネパールと一緒に活動を始めましたが、若すぎたので誰も信用してくれませんでした。障害者団体の幹部はすべて男性で、教育を受けていない私たちのことを信用してくれませんでした。
2006年に障害女性のためのセンターを設立してからは参画できるようになり、2009年位から、いくつかのプロジェクトを立ち上げました。障害女性に訓練を提供したり、専門家に協力を要請したり、助成金を出したりしました。
特に暴力に反対して取り組みたいと思っていました。障害女性に対する態度を変えること、性と生殖についての研修、犯罪にあった場合にどのように警察に行って報告するかの支援、法的な手段に訴えるための支援、また自己防衛のためのトレーニングも行いました。

私が考えるネパール障害女性の課題は、これは他のアジア地域における障害女性の課題とも共通していますが、教育、雇用、エンパワメント、社会参画、能力向上などです。障害女性は障害者団体に参加はしていますが、決定権がない地位にいることが多いです。ネパールでは女性は会計が得意だという考えがあって、経理担当には女性がいますが、他の意思決定に関わる役職についている人は少ないです。団体の中でずっと闘っているわけではありませんが、時には闘うこともあります。

●収入・技能向上の支援
雇用については、障害者雇用率の割り当て制度はありますが、障害女性についての配慮は何もありません。障害のある男性と雇用のパイの取り合いになってしまいます。障害女性の多くは自営業を営んでいます。そのため、彼等が収入を得る活動を応援するよう、技能向上のプログラムと自営業に対する少額の資金貸し出しをしています。例えば、パンを作る技能を学ぶために3ヶ月間働いて、その後で自分の店舗を借りるための初期費用を援助する仕組みです。また事務作業などの技能訓練を経て、秘書などの職を得られる人もいます。収入を得られれば、家族の中での待遇も違ってきます。とりわけ重度の知的障害や重複障害のある女性は家庭でネグレクトされている可能性が高いため、家族への支援も行っています。

(※注) 
今回ラマさんはオスロ大学ノルウェー人権センター(NCHR)・立命館大学・中国の武漢西湖研究所(East Lake Institute at Wuhan University in China)共催イベント「障害、性的志向とジェンダー自認についてのアジア・カンファレンス(Inter-Asia conference on disability, sexual orientation and gender identity)」に招聘され来日されました。女性だけでなく全ての障害者に通じる性と生殖、第3の性、LGBT等について、ラオスやカンボジア、パキスタン、インドネシア、韓国、中国、日本の参加者が話をしたとのことです。2年間のプロジェクトで、来年度は南アジアで後続ワークショップが予定されており、今はネパールでアクセシブルな会場や宿泊施設を探しているそうです。

なお、同じノルウェー人権センター(NCHR)の主催で去年2017年10月に韓国で「アジアにおける障害とジェンダー平等のワークショップ(Workshop on Disability and Gender Equality in Asia )」が開催され、平野みどりDPI日本会議議長が招聘され参加しています(同行、DPI女性障害者ネットワーク 瀬山紀子)。

後編につづく)

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