【報告】みんなが行けるキャンプ場を目指して~気仙沼大島キャンプ場のユニバーサルデザイン調査~
2026年10月30日 バリアフリー

DPIでは、国立公園のバリアフリー化を目指し、2021年に当時の笹川博義環境副大臣(現在環境大臣)に要望を行いました。それがきっかけとなり、上高地、足摺岬、八幡平と毎年環境省主催でバリアフリー調査を行なっています。
今年度は宮城県気仙沼市のキャンプ場の調査を行い、八木郷太常任委員がバリアフリーチェックに行ってくれました。
みんなが行けるキャンプ場を目指して
10月15日(木)に、三陸復興国立公園の一部である宮城県気仙沼市の気仙沼大島キャンプ場のユニバーサルデザイン調査に行ってきました。これは、キャンプ場のバリアフリー改善を目的とした調査で、当日は環境省の方々と障害当事者3名(車椅子ユーザーと視覚障害当事者)で実際にキャンプ場を歩いて調査を実施しました。調査をした場所は、大島の休暇村キャンプ場と若木浜という海辺のエリアです。

△視察前に駐車場で10人ほどが輪になって打ち合わせをしている写真
休暇村キャンプ場では、シャワールームやトイレなどが整備されているサニタリー棟や調理に使う炊事棟の調査が行われました。入り口の段差や流し台などの高さはもちろん、手すりや点字の位置、介助者と利用した場合の広さなど、あらゆる利用者や場面を想定しながら一箇所ずつ丁寧に調査が進められました。
一緒に潮風を浴びられる喜び
最も印象的だったのは若木浜の潮風と音です。若木浜の浜辺は砂浜ではなく小さな石がたくさんあり、波が寄せて、引いていく時に、石と石が擦れる音がするのです。その心地よく響く音が今も耳に残っています。
なぜこの音が最も印象的だったかというと、「この音が聞こえる場所まで車椅子でも行けたことが本当に嬉しかった」からです。調査前には、この施設が30年前に作られた施設であることから、若木浜の芝生のエリアは車椅子では走行できず、浜に近づくことは困難だろうと説明を受けていました。

△7名が浜辺から海を眺めている後ろ姿。青い海の奥には山や小さな島が見える
しかし、実際に車椅子で芝生エリアを進んでみると、予想に反して芝生がそれほど沈むことなく、車椅子で走行できるルートが確保されていました。このルートには土床という芝生の沈み込みを抑える仕組みが施されていました。そのおかげで、海のすぐ近くまで行くことができ、みんなと同じ場所で、潮風を浴びながら浜辺の音を聴くことができました。

△芝生の上で車椅子ユーザー2名と環境省職員が地面の沈み具合を調査している

△車椅子ユーザーと環境省職員がサニタリー棟の近くの水道代の高さなどを調査しながらメモをとっている
車椅子で走行できるルートの場所が分かりづらかったことは課題ですが、バリアフリーがまだ世の中に浸透していなかった30年前に、このような設計をしてくれていた設計者がいたことに感動しました。
みんなと同じ場所まで行けるということ、みんなと一緒に潮風を浴びられることは、それらを体験できる喜びと同時に、「私だけ取り残されなかった、私もみんなと同じだ。」というふうに、私の尊厳が守られていることを実感させてくれます。
ユニバーサルデザインは、すべての人の経験の機会だけでなく、尊厳を守るためにも大切なのです。
「八木さんの『嬉しかった』が、1番嬉しかった!」
視察後に会議室で意見交換会が開かれ、見つかった課題や改善策について活発な議論が行われました。そんな意見交換会終了後、一人の環境省東北局の方が私に言ってくれた一言こそが、「みんなが行けるキャンプ場」を創り上げるために最も大切な想いだと感じました。
その方はしみじみと、そして少し微笑みながら、「八木さんが『若木浜の近くまで行けたのが嬉しかった!』と言ってくれたことが、1番嬉しかったです!」と話してくれたのです。私はこの言葉を聞いて、みんなが行けるキャンプ場を作ることは、みんなを笑顔にすることができる!と心から思いました。「楽しくキャンプをした人」だけでなく、「楽しいキャンプを提供できた人」も幸せな気持ちになるのです。
ユニバーサルデザインは、サービスを受ける人だけでなく、サービスを提供する人にとっても非常に大切な「喜びの土台」なのです。
障害者も楽しめる場所にするために、障害者と考える。
今回の視察を経て、大島のキャンプ場と若木浜の素晴らしい景色や美しい自然の音を体感することができました。一方で、ここからが本番です。本当の意味でみんなが行ける、ユニバーサルなキャンプ場にバージョンアップするために、今回見つかった課題を整理して、具体的な整備計画にしていきます。
障害者も楽しめるキャンプ場にするために、障害当事者と一緒に視察をして課題を見つけ、そして障害当事者と一緒にその課題について考えていく。これが「当事者参画」のプロセスです。
多くの障害者が「キャンプって最高に楽しい!」と思い、多くのキャンプ場の職員が「楽しんでもらえて最高に嬉しい!」と思えるような、そんな素敵な空間と時間を作っていけるように、引き続き環境省さんと一緒にワクワクしながら取り組んでいきたいと思います。
八木郷太(CILいろは・DPI常任委員)
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