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本の紹介 「死んだほうがいい」が問いかけるもの 安楽死をめぐる言葉をたどる

2026年08月05日 尊厳生書籍紹介

書影

■著者: 渡邉琢(わたなべ たく)
■ 出版社: 岩波書店
■価格: 2,640円(税込)
■発売日: 2026年5月11日
■判型:四六・並製・292頁、ISBN:9784000617574
■ 電子書籍版(電子版)あり

『「死んだ方がいい」が問いかけてくるもの』は、日本自立生活センターの介助者であり障害者運動に長年携わる著者の渡邉琢が、自身の経験や参考文献、裁判の傍聴記録を元に、障害者・高齢者・難病患者等に対する「死んだ方がいい」「自分がこんな身体になったら死んだ方がまし」という語りに対し、安楽死の是非をめぐる議論の手前にある言葉や思いをたどり直したものです。全体は4部構成になっています。

第1部は、エッセイから「生死がどのように揺らぐのか」を読み取り、介護を題材にした文学作品から介護やケアという営みの「悲喜こもごも」について述べています。第2部は、「安楽死」をめぐる報道や事件に関する諸課題を取り上げています。第3部は、「相模原障害者殺傷事件」の全容を複合的に書いています。第4部と終章では、「自己決定による安楽死」を黙認した場合に、いつの間にか「自己決定によらない死」へと拡大していく古今の事例が語られています。

日本自立生活センターは、2019年に放映されたNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」の報道の仕方に対し、懸念点を申し入れました。またその5ヶ月後に起きたALS嘱託殺人事件にも声明を出し、裁判を傍聴し、集会をしたりするなどの発信をしてきました。障害者運動に対しては批判・抗議の声も多くありました。この本では、抗議者たちがなぜそこまで強く言いたくなるのか、その背景を探っています。

当時私も、団体で公表した声明に対する抗議の電話を受けました。例えば、「安楽死が認められなければ、自殺するしかない。自殺は怖い。」という声。私なら死に方には関係なく死ぬこと自体に恐怖を感じます。「死に方による恐怖感の違いは何なのか」「自殺に恐怖心があるなら、じつは『生きたい』という気持ちもあるのではないか」と疑問を持ち、考え続けてきました。

この本は、この心情・状況を深く考察する手掛かりになりました。同書が語るように、死の選択をする人たちには、トラウマやスティグマ、死と生の選択の揺らぎがあるのかもしれません。

しかし、この揺らぎは安楽死制度では大切にはされません。終章で触れられている安楽死法制化後の対象者の緩和・拡大など、諸外国でどのようなことが起きているか、日本でどのような議論がなされているかを知ったとき、私は痛烈な危機感を覚えました。

この本には「悲喜こもごも」という言葉が何度か出てきます。自分の地域生活を振り返ったとき、まさにその通りだなと強く実感しています。色々ありながら揺らぎながらも生きている。そして、その生活を支えている介助者も多くいます。そういった障害者の日常も知っていただくきっかけとしても、ぜひ手に取っていただきたい1冊です。

下林慶史(DPI常任委員/日本自立生活センター)


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