3月7日(月)地域移行国際セミナー「withコロナ時代の地域移行制度確立に向けて」を開催しました
去る3月7日にDPI日本会議による脱施設化の国際セミナーが実施されました。全体としては2部制で、第一部は韓国とカナダの脱施設・地域移行に関する取り組みについて報告していただきました。
韓国からの報告
韓国自立生活センターのパク・チャノ氏からは「韓国の脱施設進行過程と課題」について報告していただきました。
チャノ氏はまず、脱施設は権利であり障害者が施設で暮らすこと自体が問題であることを述べ、韓国の脱施設運動が入所者の苦痛の叫びから始まったのだとおっしゃっていました。
また障害者権利条約や米国のオルムステッド判決など、国際的に見ても施設収容が権利侵害であるとなどを紹介する共に、韓国での脱施設の転換期となった1990年代後半から現代にいたるまで、数々の闘争が経られてきたことに触れ、現在は特に知的障害者の脱施設を重要と捉えている旨が語られました。
また他には、韓国では自立生活の基盤である「住宅」についての支援を重要だと考えていること、当事者運動側と政府側の「脱施設」の捉え方の違いなどについても報告があり、そんな中であっても政府に脱施設のロードマップや法案を作らせ更なる内容改善に向けた取り組みを行っているとのことでした。
そして、今後の課題としては、予算と介助者の獲得を挙げられましたが、最後に「同じ言葉を叫ぶことが障害者運動である」と述べ諦めず貫く姿勢を私たちに示してくださいました。
カナダの脱施設の運動
続いてカナダの脱施設の運動については同志社大学の鈴木良氏から報告していただきました。カナダは州政府が大型施設を運営していた。最大2000名を超える規模の施設が多かったようですが、親の会や当事者運動であるピープルファーストにより、1980年代から現在にかけて施設閉鎖の動きが盛んになった。
カナダの脱施設化運動の特長としては当事者の会と親の会が協力しながら運動を進めてきたことにあり、それを受けて州政府も脱施設化に取り組み始め、現在に至るとのことでした。
なお、地域生活の維持については、地域と本人をつなぐファシリテーターの役割や家族支援、ピアサポート、居住支援や意思決定支援、ダイレクトペイメントが非常に重要であるとの述べられると共に、日本では脱施設の動きは施設秋冬より資金がかかるため、費用対効果の主張ではなく「市民権の実現」という主張を繰り広げなければならないと示唆されました。
「オンライン地域移行モデル事業」の取り組み
そして第2部は、日本財団より助成していただき1年間にわたり行ってきた「オンライン地域移行モデル事業」の取り組みについて、実働した自立生活センターおおいたと京都の日本自立生活センターより報告がありました。
まず、大分からはこの事業を通して体験室の環境整備を行い、ILPをするなどして実際に筋ジス病棟から地域移行を果たされた方のコロナ禍での地域移行支援の様子について語られました。
写真:実際の支援の様子を動画で流しました
オンラインでの支援についてはZOOMを活用し、介助体験や買い物、家事やコミュニケーション、介助者研修についても遠隔で行われたとのことで、いつでも何処でも誰とでも繋がれるオンラインの長所と、対面ではないため、あくまでも介助内容をイメージするところまでしかできないという短所を実感したと述べられていました。
また現在は新たに筋ジス病棟からの退院を希望されている方もおられるとのことでした。
一方、京都の取り組みは、2017年から2020年にかけて筋ジス病棟から地域移行された方々の地域定着支援や病棟からの地域移行を振り返る座談会の実施、スタッフが委員として関わっている京都市施策推進審議会の脱施設化に向けた取り組み、筋ジス病棟以外の施設入所者へのアンケート実施、地域移行啓発PV作成など多岐に渡る活動概要が報告されました。
なお、第2部の最後は、この事業に関わったメンバーへのインタビュー研究を行った鈴木良氏から「病院から自立生活への移行支援はどのように行われ、退院した当事者がどのように捉えているか」について報告されました。鈴木氏によれば、当事者スタッフと健常者スタッフが支援に関わることは、それぞれに異議・役割があり重要であることと、コロナ禍においては地域移行支援の各段階でオンライン活用が有効であること、病院スタッフとの対話や家族への支援がポイントになること、そして、この事業で行われてきた取り組み全般を制度化することが重要だと締めくくられました。
そして、最後にDPI日本会議から今村が地域移行を巡る施策の検討状況および本事業の取り組みを踏まえたDPIとして地域移行促進に向けた提言の報告を行いました。
私は今回のセミナーに参加して改めて、その国ごとに適した脱施設・地域移行の進め方を模索し続けると同時に、普遍的な「障害者としての叫び」を粘り強く形にしていくことが重要だと痛感しました。
報告:下林慶史(DPI常任委員、日本自立生活センター)
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