新型コロナウイルス感染症の流行にともなう対策に関する要望書
本日、厚生労働大臣宛に「新型コロナウイルス感染症の流行にともなう対策に関する要望書」を提出しました。
1.予防対策の推進、2.検査体制、3.発症時の対策、4.入院にあたっての対応、5.障害福祉サービス事業所及び精神病院等における発生時の対応についての、5点に関する要望です。
2020年4月27日
厚生労働大臣 加藤 勝信 様
認定NPO法人DPI日本会議
議長 平野みどり
新型コロナウイルス感染症の流行にともなう対策に関する要望書
日頃から障害福祉の推進にご尽力頂いていることに厚くお礼申し上げます。
私たちは、全国94の障害当事者団体から構成され、社会のあらゆる場面で障害の種別や程度に関わりなく障害のある人もない人も安心・安全に共に生きることができるインクルーシブ社会の実現に向けて活動しています。
さて、新型コロナウイルス感染症の国内外の流行拡大を受けて4月7日に7都府県を対象として出された緊急事態宣言は、その後、40道府県に拡大され5月6日を期限とした不要不急な外出等の自粛が全都道府県に要請されました。
しかし、介護・福祉関係の事業所には自粛要請ではなく通常通りのサービス提供を求めることでも明らかなように、こうした事業は、難病患者を含む障害児・者(以下、障害児・者)にとって必要不可欠な社会資源であり、中断・自粛は困難な業種です。
また、介助・介護等という業務内容から、密接や対面を避けることも不可能であり、一人の介助者が複数の利用者を担当し、毎日異なる利用者宅を訪問することや多くの利用者を日中活動等の場において受け入れている状況からクラスター(感染者集団)となることが全国各地の実態からも明らかです。
そして、国民に求められている3密を避けること、外出を減らすこと、出勤時間の調整、在宅勤務は極めて困難であり、利用者も介助者も感染のリスクは非常に高く、利用者や介助者がPCR検査で陽性で14日間の自宅待機となったとしてもこうしたサービスは必要不可欠なものであり介助・介護崩壊に陥ることも想定されることから一事業所だけで対処できるものではありません。
つきましては、このような状況を踏まえるとともに、緊急事態宣言の延長及び更なる深刻な状況をも想定し、新型コロナウイルス感染症の予防と検査及び発症時等の対策について以下のとおり要望するので、地方自治体及び関係機関等との連携を確保しつつ、特段のご配慮と対策を進めて頂けますようお願い申し上げます。
記
1.予防対策の推進について
感染リスクが高いと思われる障害児・者(特に医療的ケアを受けている人)及び障害児・者の生活を支えている障害福祉サービス事業所等の職員に対して予防対策を進めるために必要なマスク・消毒剤、清浄綿・酒精綿(アルコール綿)、使い捨てグローブなどを優先的に供給してください。
2.検査体制について
(1)障害児・者が新型コロナウイルスに感染した疑いがある場合は、重度化のリスクが高いと思われるため優先的に検査を受けられるよう検査体制を整備してください。併せて、感染した疑いのある者の濃厚接触者(介助者等)も同様としてください。
(2)現在、4月からの実施が検討されている抗体検査については、有効性が認められる場合は医療職と同様に介護・福祉関係事業所の職員も優先的に受けることができるようにしてください。
3.発症時の対策について
(1)介助者がいないと生活はもちろん生命の維持が困難になることから、速やかに治療と介護を受けられる環境を確保してください。なお、呼吸器系障害・既往症等がある場合は、速やかに入院できるようにしてください。
<考えられる対応>
① 民間ホテル等を確保する場合は、バリアフリールームの確保等、障害児・者の利用に対応できる施設を確保する。 ② 介助者や支援者が本人の介助等ができる環境を確保する。 ③ 医療機関、訪問看護事業所、介護事業所など医療と福祉が連携して対応できる仕組みを確保する。 ④ 医福連携スタッフの宿泊施設を別に確保する。 ⑤ 感染者及び医福連携スタッフの送迎体制を確保する。 ⑥ 必要備品・消耗品の確保と供給を進める。 |
(2)在宅で介助サービスの継続を行うことになった場合は、介助者の感染防止対策は、感染者の対応にあたる医療者と同等の装備の確保と提供を速やかに進めてください。
(3)障害児・者と同居する家族等が発症した場合は、介助者不在となることから、個々の状況に応じて訪問系サービスの支給時間の拡大やショートステイの利用等により介助者を確保するための措置を速やかに講じるよう市町村へ指導してください。
(4)障害児・者を医療機関が受入れるために必要な環境整備を進めるとともに、とりわけ国公立病院が率先して受け入れるように体制の整備等を進めてください。
4.入院にあたっての対応について
(1)障害や疾患及び年齢等を理由として人工呼吸器治療等を行わないなどといった優生思想に基づく命の選別をしないでください。
(2)障害児・者が入院する場合は、障害支援区分6以外の障害者であっても重度訪問介護または居宅介護を利用できるようにしてください。
(3)障害者・児へ派遣される介助者及び支援者については、医療職と同様に防護服、マスク、使い捨てグローブ等の支給等により最大限の感染予防対策を講じるとともに当該介助者及び支援者の検査体制等を確保してださい。
5.障害福祉サービス事業所及び精神病院等における発生時の対応について
(1)障害福祉サービス事業所等は、難病患者を含む障害者・児にとって必要不可欠なサービスであることから、当該事業所等の職員、利用者及びその家族が発症した場合のサービス停止または休止が最小限となるための対策を講じてください。
(2)新型コロナウイルス感染症により生活介護等を実施している事業所がサービスの停止または休止した場合は、当該事業所の利用者は、在宅介護が必要となることから重度訪問介護等の支給時間を迅速に拡大するよう市町村へ指導してください。
(3)発症した障害児・者へ派遣される場合は、介護報酬を医療報酬と同様に増額してください。
(4)精神病院内で入院者が発症した場合は、速やかに他科への受診・転院ができるようにしてください。できない場合は緊急措置として専門医を含む医療スタッフを派遣するなど適切な措置を講じてください。
以上