ニュースレター3号 |
障害者欠格条項をなくす会 ニュースレター 3号 電子メール版 1999年10月発行(2000年1月改訂増刷) 特集…なぜ入れない、公営住宅 大久保さんは、脳性まひによる全身的な障害をもつ男性です。 兵庫県で毎年開かれている「障害者甲子園」での発言など、活発なご活動を知る人も多いと思います。 1996年5月、大久保さんは、群馬県桐生市内で民家を借りて、学生やホームヘルパーなど一日平均7時間の有償介助者を確保し、親元を離れて一人暮らしを始めました。家主からの嫌がらせが続く中で、大久保さんは、市営住宅に申し込もうとしました。 桐生市は、大久保さんに対して露骨に差別的な態度をとり、公営住宅法・建設省通達を盾にして、申し込みをすること自体もなかなか認めませんでした。半年以上たって出された通知は「身体障害者手帳等級1級により施設入居(収容)が適当」というものでした。 大久保さんは、毎日介助者をつけていること、住環境の工夫や機器の利用で安全に生活ができることを主張しました。自立生活の新しい考え方も説明しながら、公営住宅の単身入居を認め、民間アパートの借り上げなどで障害者がまちの中で暮らせるように、という要望書を市に提出し市長と面談、建設省にも不服審査請求を出すなど、精力的に活動されました。 現在は、宮城県にお住まいの大久保さんに、公営住宅法の欠格条項によって住宅入居をはばまれたご経験から、当時の生々しいやりとりとご意見を、執筆していただきました。(本文と資料 2〜9頁) 〈事務局から 読者の皆様へ〉 いつもご支援ご参画をありがとうございます。今号でニュースレターも3号目となりました。 1号から3号にかけて、企画においで下さった方や、パンフレットのご注文をいただいた方に、「試読誌」の意味で、会員非会員を問わずお届けしています。 ニュースレターは、会員むけのサービスとしてお約束していたものですので、次号(4号、十二月発行)からは、発送先は基本的に会員に限定させていただく予定にしています。この機に、ぜひ、ご入会をご検討くださいますよう、宜しくお願いいたします。 なお、1、2、3号は余分にあり、今後も「試読紙」としてご提供します。ご入用の時はいつでもご連絡ください。 公営住宅法の障害者欠格条項による入居拒否 わたしの体験から (大久保健一 宮城県在住) 公営住宅単身入居の欠格条項を盾にした理不尽な対応を経験したことを書こうと思う。このことで、矛盾の多い欠格条項だということを多くの皆さんに知ってほしい。 1995年春に地元(群馬県桐生市)の養護学校高等部を卒業し、物件を約40件も捜し歩いた末、翌年5月20日に同市内のアパートで自立生活を始めた。しかし、この部屋は家主宅の離れになっており、家主から再三、嫌がらせを受け、すぐに退去しようと物件捜しを再び始めた。民間住宅はやはり障害者の入居拒否が多く難航し、市営住宅の状況を聞きに桐生市建設部住宅課を訪れ聞いたところ頭ごなしに「空き部屋はあるけど障害者の単身入居はできない」と言われ、公営住宅の知識がまだ僕はなかったので疑問を感じながら渋々帰ってきた。それから僕は公営住宅の制度を調べてみたら、「障害者の単身入居」は認められており、申し込みをした上で入居できるか判定することになっていた。だから、申し込みもできないのはおかしいと再び市住宅課へ行き、「申し込みだけはできるはずだ」と詰め寄ったところ職員からは「なぜ親と暮らさないのか。施設に入所した方が良い」とあきらめさせることを言われるばかりだった。でも、何とか入居申込書をもらって来た。すぐに記入し提出に行ったら、障害者の単身入居の申込書は受け取れないと言われ、理由を聞いても正当な理由は聞かれず、10分ぐらい押し問答ののち、奥にいた課長が部下に僕を指さして支持を出し、そしたらその部下が僕の車椅子を無理やり押して市役所の玄関から出されて提出しようとした申込書を僕に投げつけられた。そのときの、空しさ、憤りは未だに忘れられない。 この事件をバネに本気で取り組もうと仲間やマスコミなどに広く協力を呼びかけ、ある市議会議員が市長面談をセッティングしてくれ、そこで市長に要望書と同時に入居申込書を受け取らないのはおかしいと訴えた。市長は典型的な保守市長なので「検討する」という答えだけだった。福祉部長と建設部長は壁の裏で面談中の話を聞いていた。この市長面談は市役所記者クラブから全記者が取材に来て、それぞれの地方版に掲載してくれた。 市長からの回答書が後日、届いたが、建設省通達を守るという何も変化がない回答だった。でも、建設省通達を守るというのなら入居申込書は出せるということで、仲間5人と共に7/16に住宅課長に会いに行った。当時の住宅課長は終始、傲慢な態度(こちらが名刺を出しても課長から名刺を出さないなど)で「入居申込書は受け取っても良いがお前さんらの希望にかなうかはわからん」という「お前」呼ばわり等、人権を完全に無視する言動が続いた。これでようやく申込書が受理され、書類による正式なやりとりが始まった。 資料 新聞記事 桐生タイムス1996年7月2日 EMAIL版では省略 見出し 障害者の実情聞いて 市長と面談、支援を要望 「自立」求める大久保さん (場面写真入り) そして3カ月後の10月に「単身入居の不適格決定通知」が住宅課住宅管理係長名でFAXで送られてきた。6月に郵送で申し込んでいた群馬県営住宅についても、10月に住宅課主査名でFAXされてきた。知事や市長宛の申込書なのに係長や主査の名前で決定され印もないFAXで送られて来るとは、バカにするのもはなはだしい限りだ。そこで、どういう調査を基に今回の決定に至ったのか、市住宅課に聞きに行ったところ、独自調査と福祉事務所からの意見書と本人からの自活状況申立書の3つを基に介護状況を中心に総合的に判断したという。独自調査とは、住宅管理係長が僕の自宅に訪問したが留守だったため僕が住むアパートを回りから見ただけのことだという。そうなると福祉事務所の意見書がカギを握っている訳だが、この閲覧は結局、拒否された。県営住宅にいたっては県として調査をした気配もないので、市の決定に追随しただけと言わざるを得ない。このあと建設大臣へ行政不服審査請求を行なったが、それも棄却され、僕は兵庫県へ転居することになり、この問題は教訓としながらあきらめることにした。 以上の経験から言えるのは、障害者は生活を束縛(行政が決める)されても当然だという考えが役所に根強く残っており、建設省の公営住宅の欠格条項はその重要な根拠とされている。今後も公営住宅(今は宮城県だが)に申し込み続け、この欠格条項がなくなるのを願っている。 公営住宅法の障害者欠格条項とは 身体又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とする者で、その公営住宅への入居がその者の実情に照らして適当でないと認められる者は、単身で公営住宅に入居することができない。(公営住宅法施行令六条より) 建設省は、「常時の介護を必要とする者は、自立して日常の生活を行うことが極めて困難」いう理由で、「単身入居申し込み者の自活状況申立書等により判定する。判定基準は、身体又は精神上の著しい障害のため、常時臥床しており、かつ、その状態が継続すると認められるかどうか等による」と、総理府の調査に対して回答しています。 常時臥床…古めかしい言葉ですが、「重度障害者」=「寝たきり」というイメージなわけです。 公営住宅法の欠格条項にあらわされている国の姿勢は、「常時介護必要な」障害者は、親(親族)と暮らすか、施設へ行くべきだということです。 30年ほど前から、 民間のアパートなどでは、ホームヘルパーや、自分で雇った介助者から、必要な介護を受けて自立生活する人が増えています。しかし公営住宅法を所管する建設省は、「常時介護必要な」重度障害者の入居は親族と同居が前提とし、単身入居を原則として認めていません。 なぜなのか。今年七月に建設省と交渉をもちましたが、「公営住宅にひとりで生活するには、最低、自分ひとりで身辺のことができることだ」という考えが強くうかがわれました(ニュースレター2号に報告あり)。 実際に、「自活状況申込書」は、「ひとりで○○ができるか」という質問のオンパレードとなっています。こんな機器を使ってできるとか、介助者を通してできるという可能性は、まったく考慮の外であることが、よくわかります。 現在、日本で長時間介助必要な身体障害者が公営住宅に単身入居できている例は、大阪、東京などの一部の自治体の公営住宅で、わずかな数にとどまっています。精神障害者、知的障害者の場合は、単身入居枠自体がなく、事実上門前払いされています。 介助必要な重度障害者の入居(ただし単身向でなく世帯向)を自治体独自の判断で認めている例 岡山市が重度障害の夫婦の市営住宅入居を認める (1993/5/26) 24時間介助が必要な岡山市内の重度障害者夫婦が,全国で初めて公営住宅に入居を認められた。国は〈自活できていない〉などとして重度障害者の公営住宅への入居拒否の方針を示しているが,岡山市が〈ボランティアの介助で自活が期待できる〉と独自に判断した。 情報源 http://www.ojw.or.jp/cgi-bin/browseLex.cgi?code=c199300-194 桐生市・公営住宅単身入居拒否にかかわる経過 1996年 5月20日 大久保さん、民間貸家で自立生活を開始 桐生市住宅課に入居申込に行き、「障害者は単身入居を申し込めない」と言われる。 6月28日 桐生市長に「障害者の住宅に関する要望書」を出す ・市営住宅の単身入居条件の緩和 ・福祉型借上公共賃貸住宅制度の導入 ・介護人派遣制度、ケアつき公営住宅、グループホーム、自立生活センター支援事業 6月 群馬県県営住宅にも申込を出す。 7月10日 桐生市長(市広報課)から回答書 ・建設省通達に基づき、常時介護を要するかの判断が前提となる。 7月16日 市営住宅入居申込書を出す 8月8日 桐生市建設部住宅課から「自活状況申立書」送付 「単身入居の有資格であるかどうかを総合的に判定するため」申立書に記入回答を求めるもの。 質問事項は次のような内容。 現在の住居・同居人・障害の有無、障害等級、補装具使用 現在、買物・身のまわりのことは一人でしているのかどうか。 公営住宅に入居した場合、次のことは一人でできるか。 (炊事・買物・食事・普通の便所での排泄・入浴・掃除洗濯・住居の出入り) できない項目について、それをどのように補うつもりか。 10月1日〜10月9日 公営住宅法に基づく単身入居不適格処分(桐生市建設部住宅課・群馬県土木部住宅課)大久保さんの実家にFAXで送信通知。 11月21日 亀井静香建設大臣に「行政不服審査法による審査請求書」を出す (要旨)常時介助が必要な者というだけで単身入居不適格というのは不当。どんなに重い障害があっても地域で自立して暮らせる街づくりが課題。障害等級を問わず住宅に困窮しており、介助者や機器の利用で安全に暮らせるならば、本人の意見、実情をよく聞いて有資格と認めるべきであり、岡山県で24時間介助必要な障害者が市営住宅に入居できた先例もある(1993年)。障害者の自立生活を支援する立場に立ち、自立生活の土台になる住宅を公的に保障することを求める。面会と口頭意見陳述、本人立ち会いの検証を要求する。 12月10日 桐生市に、福祉事務所長の建設省への意見書閲覧と写しの交付を請求 1997年 1月17日 桐生市建設部長が、閲覧写し交付拒否と、単身入居拒否を文書通知 (要旨)公営住宅法・公営住宅法施行令の規定に基づき、「施設入所対象者又は施設収容対象者に相当すると判断される。理由として、本人の障害程度が身体障害程度等級表の1級に該当するため。」単身入居の希望には応じられない。 資料 大久保さんの最初の要望書1996年 6月28日付 障害者の住宅に関する要望書 1996年6月28日 桐生市長・日野茂 様 桐生市… 大久保健一 いつも市民福祉の向上のためにご尽力いただき、ありがとうございます。 僕は、今年5月20日に民間一戸建て住宅へ転居し、自立生活を始めました。障害者の単身入居ということで、貸家だと大家からお断りが多く、貸家を30〜40件も探し歩き、やっと見つかり建物賃貸契約を結びました。生計は生活保護や手当を受け、介護は有料介護人等を雇いながら生活を営んでいます。この間、大家から嫌がらせ(契約時に鍵を直すと約束したのに直さず鍵が無い状態で僕の家に無断で入り込み説教されたり、電気や電話を外の元スイッチで切られたり、僕への郵便物を郵便受けから地面へ投げ捨てたり)を受け、安心して眠れない毎日で、住む場に困っている現状です。 そういう中で、桐生市住宅課へ市営住宅の入居を申し込みに行ったら、単身入居の場合は男性60歳以上、女性50歳以上でないと申し込めないと言われ、障害者や生活保護世帯での例外措置も無いそうです。障害者が自立するのを応援している行政が、公営住宅入居を僕は阻むのはおかしいと思います。担当者からは、設備的に整っていないので危険だという心配を言われますが、一般向け住宅でも障害者住宅改造制度や生活保護家屋修繕費を使って、改造(段差解消や緊急警報装置など設置)すれば安全に住めるので入居を認めるか認めないかの問題です。 この現状を踏まえ、以下、要望事項を3項目、書きます。 ◆1.市営住宅の単身入居の条件を見直して、障害者入居では年齢制限を緩和( 例・20歳以上等)してほしい。僕自身の住宅に困窮している現状を理解いただき、緊急入居等の措置を早急にご配慮いただきたい。試験的な意味でも、障害者の単身入居を認めてほしい。入居の際には、障害者(車いす)は、スペースが広い部屋でないと生活しづらく、介護人が複数で泊まることも多いので、単身入居の場合でも家族向け住宅に入居させてほしい。 ◆2.郊外の市営住宅だと地理的に障害者には生活しづらい面があるので、民間賃貸住宅、アパートを桐生市(又は土地開発公社等)で借り上げ、障害者等の住宅困窮者に優先的に貸す措置もご配慮いただきたい。国の「福祉型借上公共賃貸住宅制度」などを参考にして、僕自身が市街地で安心して自立生活を営めるよう措置を講じてほしい。市街地だと緊急時でも近所が多く避難しやすいため。 ◆3.どんなに重い障害があっても、自己の意思が尊重され、自己の決定が自由にでき、楽しく安心して自立生活ができる桐生市をつくってください。それには、将来的に「障害者介護人派遣制度」「障害者向けケア付公営住宅の供給」「障害者グループホーム設置」「自立生活センター支援事業」などをご検討ください。 以上、3項目を、貴殿を信頼し、心から要望いたします。 では、障害者の新しい自立生活の概念と、僕自身の困窮をご理解いただき、よくご検討くださり、早急に最善の対応をしていただきたく、お願い申し上げます。 資料 自活状況申立書 (別記様式2) 自活状況申立書 住所 氏名 1.現在の生活状況 (1) あなたの現在の住居は 一、自宅 二、公営住宅 三、借家 四、間借 五、その他( ) (2) あなたの住んでいる住宅の階層は 一、平屋 二、2階 三、3階以上 (3) 同居している人は 氏名 続柄 年齢 (4) あなたの身体について 一、障害が ある ない 二、障害がある場合は障害の程度 第 級 障害の部位( ) 三、補装具を使用していますか いる いない 補装具の種別( ) (5) あなたの今までの生活について 一、買物等外出する用事は ・一人でしている ・( )に頼んでいる 二、身の廻りのことについて ・一人でしている ・( )に頼んでいる 2.公営住宅に入居した場合の生活状況 (1) 日常生活状況について 一、炊事は自分でできますか できる できない 二、買物は自分でできますか できる できない 三、食事は自分でできますか できる できない 四、排便は普通の便所で一人でできますか できる できない 五、入浴は自分でできますか 六、掃除、洗濯は自分でできますか 七、住居の出入は自分でできますか (2) (1)で「できない」項目について、それをどのように補うつもりですか。 上記申立のとおり相違ありません。 平成 年 月 日 氏名 (印) ※電子メール版について特に補足します。 紙版のニュースレターでは、 大久保さんの了解を得て、住所記載を除く生の資料を掲載しました。 大久保さんの記載ものっています。 ここでは詳細は省きますが、たとえば 「排便は普通の便所で一人でできますか」という質問に対して 小便は自力可能。大便時、ウォシュレットなら自力可能 と、欄のわきに具体的に回答されています。 「自活状況申立書」にはそういう回答を書き込むスペースもなくて できる、できない の二者択一の選択肢があるだけです。 資料 桐生市の最終的な回答書 1997年1月17日 桐住発第8・58号 平成9年1月17日 大久保健一 様 桐生市建設部長 五十嵐 源一 閲覧及び交付申請について(対:1996年12月10日付け) ご承知のとおり公営住宅法第17条で入居資格が定められ、同施行令第4条の7及び通達により、高齢者・身体に障害のある方などに対する入居者について規定しております。 こうした規定の中で、大久保健一さんが単身で入居できる資格者であるかどうかの判定は、「常時介護が必要か否か、自立した生活が可能かどうか」が重要な要件となります。 したがって、上記判定のため桐生市福祉事務所長の意見書を求めた訳ですが、これは、市営住宅主管部局の長である建設部長あての文書でありますので、閲覧及び写しの交付については、容赦願います。 しかし、意見書の内容については次のとおりでありました。 「施設入所対象者又は施設収容対象者に相当すると判断される。理由として、本人の障害程度が身体障害者障害程度等級の1級に該当するため。」 以上のことから、遺憾ながら大久保健一さんの単身入居の希望には応じられないことと判断せざるを得ないこととなりました。 しかし、今後大久保健一さんの介護が可能な親族の方と同居のために必要な住宅の確保には、本市として最善の努力をすることを申し添えさせていただきますので、ご理解の程お願いいたします。 メッセージから いただいたメッセージからご紹介していきます。 編集の際、文章を要約させて頂いたものもあります。 掲載内容についてご意見や情報をお持ちの方、新たなメッセージのある方は、「なくす会」事務局までFAXでご連絡ください。 【看護の仕事につきたい、聴覚障害をもつ高校生。 受験拒否しない看護学部・学科と、体験・情報をお持ちの方を探しています】 看護婦をめざして何らかの働きかけをされている方がいるか等、詳しい情報を知りたくてお手紙を送ります。 実は、聴障(両耳90db以上の高度難聴)の高3(県立高校)の娘が、欠格条項の事を知って一度はあきらめていた看護婦への道を、やはり、やるだけはやってみたい!と決意しました。高3というこの時期、最終結論だと受け止め、学校にもそのように伝えています。 看護婦の技術だけでなく、看護学を広く深く学び、様々な可能性をさぐりたいので、四年制大学の看護学部、看護学科への進学を考えています。 一学期から夏休みにかけて私立大学に接触を続けてきましたが、今のところ全て断られています。予期される困難が多々あることは承知の上で、しかし、やれない事ではなく、「やれる事」もまたたくさんあるのではないか、また、せめて、看護学というものを学ぶチャンスだけでも与えてもらえないか、と大学側には言ってきましたが、結局は聴力が厳しいというところで、つまり、判断の材料は本人の能力(聴こえにくさをカバーするあらゆる手段を含めた)ではなく、紙上に表示することのできる数値 ○○db のみという返答がいつも返ってきます。客観的に判断できる唯一のデータということです。国公立大学に対しても、娘の障害のレベルでも受験可能かどうかを問い合わせる書類を準備中です。 希望はあくまで希望として持ち続けながら、しかし、第二志望の栄養士への道も考えております。栄養学部でもやはり高度難聴では危険(実習等で)ということで断られた大学もありましたが、何とか数校 受験可能校をみつけております。 特に看護婦への夢をおもちの方が具体的に何か働きかけをされていればその状況など、何でも構いませんので少しでも情報をお持ちでしたら、お知らせ頂きたくお願い致します。二学期も始まり、校内では「推薦」にむけての会議なども進んでいて、本人にも焦りもあるようです。看護にこだわるか、現実を見つめ受け入れていくべきか、心は揺れているようです。何かヒントでも娘に与えられればと思います。(千葉県) 【就業規則の問題性 実態調査を】 労働省関係でいうと、どこの企業や事業所でも決めている「就業規則」に、よく「精神障害」や「傷病等で業務の遂行に支障があるとき」といった条項があり、それを理由に解雇されたり退職を迫られることがありますが、実態を調べて、労働行政の責任として拡大運用させないようにする必要があるのではないでしょうか。(岡山県) 【復職への条件が、退職届けを書くことだった!】 私は教員でしたが、うつ状態のため休職となり、2年11か月ののち復職可となりました。しかし休職中に、退職するよう文章を書かされており、捺印していました。 教師の復職の場合、主治医の診断書と、2、3か月勤務して様子をみるテスト期間というものがあります。そのあと診断会議で判定がされます。私は休職中にテストを受けて順調だったのですが、テスト期間も終わりに近づいた秋に、「翌年三月末付の退職届を書かなければ診断会議を通さないという意向が教育委員会にある」と聞きました。つまり、どうしても退職させたいということです。私は腹が立ち、そんないやな世界にはもう居たくないと思いました。 翌日、教育委員会に出かけ、課長から「退職します」の文章を書かされ捺印していました。二日後、組合書記長にも話しましたが、ただ「ウン、ウン」と言って聞いているだけで、事前に相談しても同じだったと感じます。 裁判にかけたらどうなるのか、弁護士にも相談しましたが、教育委員会側の証言がない限り勝つ見通しがないと言われました。復職後そのまま三月末で退職することになりましたが非常に残念でした。私の悔しい体験が何かのためになれば幸いです。(大分県) 【色覚理由で不採用だった可能性。実際は支障なく勤務】 昭和29年に、機械メーカー受験の際「赤緑色弱」ということで眼科医の再検査を受けたが、「事務部門で働くには支障なかろう」と採用された。この時落とされていたかもしれない。以後、今年で退職するまで実務上支障なく、クレームを受けることもなく勤務した。(兵庫県) 厚生省との交渉報告 2号のニュースレターは、省庁交渉報告の特集でしたが、厚生省交渉の報告は既刊のパンフレット「会発足企画当日資料集」に掲載しているとして省略しました。 引き続き多くのご注文をいただき、パンフレットが底をついたので、本号に、パンフレットに収録していた厚生省との交渉報告を、再録することといたします。 ------------------------------------------------------------------------- 1999年4月21日(午後3時〜5時)「障害者欠格条項をなくす会(当時は準備会・仮称)」としては初の、厚生省との交渉があった。厚生省は、欠格条項をもつ法制にかかわる、各部局の担当者 係長級以下が出席(健康政策局、医薬安全局、生活衛生局、保健医療局、障害保健福祉部) 。 会からの参加者は、各種の障害者を主として、約16名。今回は、厚生省の基本見解と「欠格にしている理由」を中心とした交渉だった。 《結果の要約》 厚生省は、障害者基本法の理念、ノーマライゼーションプランや、中障協がまとめた見直し視点にそって、欠格条項の見直しを行うと説明している。 しかし、欠格条項の「理由」にみられる、「危険を生じるおそれ」「公衆衛生上の問題」「判断力、迅速な対応能力に欠ける」等の障害者観の基本からどう反省し、どう見直すのかの具体的な中身は、出されなかった。 また、厚生省の説明では、実際の適用上は、絶対欠格も相対欠格も、はっきりした違いがみられなかった。どちらにしても医師の判断、診断書が基準であるという説明だった。 (欠格条項の問題は、医師が絶対的な力、決定権をもっているという構造を、転換しなければならないという問題でもあるのではないだろうか。) 今回問題にした法律で、いちばん古い医師法は戦後すぐにできた(1948年)が、その時から欠格条項があり、その後の資格制度にコピーされてきた。50年前からの法律文書や規則の、合理性のない、抽象的理由が、今回の交渉でも、くりかえされていた。問い詰められると、担当者が黙ってしまう場面もあった。 この数年の間に、厚生省の管理下にあるいくつかの法律で、精神障害者の欠格条項「絶対欠格」から「相対欠格」になったことについては、わたしたちも注目していた。しかし、これも、障害者の社会参加のためというよりも、実際のところ、「厚生省としては、免許の認可や取消で精神障害が問題になった例をきいたことがない」、「もともとの、免許の規模が小さい」などで、”改めやすかった”ということが本当の理由とみることができる。 なお、相対欠格になってからの変化等は、厚生省としても調査すると回答している。 また、海外調査については厚生省は特に方針をもっていないとの回答であり、国際的な状況、実態をふまえるために調査を行うよう、要望書にあげた内容に付け加えて、要請してきた。 以下は、当日の録音テープと議事録記録をもとに、簡略にしたもの。これからの交渉等で、参考にしていただきたい。ご意見や、お持ちの情報があれば、ぜひ、会事務局までお知らせください。 《詳細報告》第一回厚生省交渉より 記号 ●は、厚生省の説明 〇は、会からの発言 【基本見解】 ●平成五年の障害者対策の計画、七年のプラン、資格制限の見直しを指摘されてきた。取り組む必要性は省内でも認識している。省としてはプランをふまえ、政府全体での統一的なことをしている。昨年十二月の中障協の検討方針の視点が出たので、現在これをふまえ各制度の見直しをしている。 会の考え方に対しては、医療モデルの指摘、「本質的に必要な能力」ということの説明がされたが、昨年の十二月の中障協でも同様の事がいわれている。また、補助的な手段の活用も考慮されるべきと示された。我々としても当然、そのことを念頭に置いて進めている。禁治産欠格、設備利用の制限などの指摘については、障害者基本法があり、あらゆる分野で障害者の行動が保証されているので、その理念をふまえなければならないと考えている。その法の理念、プランの理念をふまえ、障害者当事者の完全参加など、今後も取り組む。 続いて、資格制限の個別制度については、各制度の担当から、説明。 【個別法制について】 (医療従事者関係) ●医薬従事者についての様々な資格は、障害者が歴史的についていたので外した。理学療法士などはあんまマッサージ師の人がなったりもするので、欠格条項を設けていない。 精神病とかの公衆衛生上 適当な範囲で設けられたものと考えている。場合によっては危害を与えるおそれがあるので。つまり、これらの業務は身体に直接触れるので公衆衛生の観点から免許を与えるのは不適当。 資格制度への信頼性などから医師などの欠格条項は設けられている。資格制度の信頼性と業務の適正な遂行のため。業務の遂行を資格を持っている以上適正に遂行できなければ資格に対する信頼性が失われる。もちろん、これらを検討していく。 歯科技工士などについては、精神障害者だけなのは先ほどと同じ。視覚障害者は資格の特性から業務遂行困難。 〇誰でもやり方を間違えれば危害を加える恐れがあり、というのではなく、精神の人は何をするかわからないという危険性を言っているのですね。だから排除したという説明ですね。 ●ならば危害という言葉は取り消します。 〇精神がいると水準が維持できないと?公衆衛生の水準が?なぜ維持できないの? ●ですから、あの……先ほどの通り、場合によっては……。 〇精神障害者は危ないとなぜ決めるの? ●そう思ってないですよ。 〇公衆衛生というのは、対社会的な危険性とかそういう意味ではないか。もっと率直に。ごまかさないで言ってほしい。 〇精神は危害を及ぼす可能性があると今まで排除してきた。本当にそうなのかというのを見直さなければならない。精神障害=こうだ、という規定が今まであったから、たくさん欠格条項があった。それを見直すということを考えているわけでしょう? ●………(黙ってしまう) (薬剤師) ●薬剤師法四条。薬剤師の業務。患者の微妙な状態をみなければならない、命に関わる職業。意志疎通の必要性。処方箋に基づく業務で、処方箋を詳細にわかる必要がある、内容の確認と迅速で正しい、的確な対応が必要。視聴覚に障害がある者はそれが困難。昭和三十五年年八月一日の制定当時から欠格条項がある。 〇障害者だから医療ミスがあるとはいえない。普通の看護婦や医者が医療ミスを起こしている。 ●障害者だからできないということではない。医療ミスを起こす現状は鑑みる必要がある。特に視聴覚に障害がある場合は、難しい。 〇大きな病院に行くと、処方箋は紙を渡されているだけではないか。充分できる。 ●現在、そのあたりは指導中(?)です。 〇障害者だからできない。予め障害者は欠格というのがおかしいのではないのか。 ●ミスを犯す可能性が高い。 〇できない可能性が高いということを前提にしていることがおかしい。個々の能力の検証ではない。個々とは別に除外するのが妥当かどうか。相対、絶対に関わらず、問題は問題。「ミスをおかす」ということ前提にしていることがおかしいでしょう。そこを見直す必要はないのですか?全てに関わる問題だ。 〇聴覚障害で、去年の薬剤師国家試験に合格したが、一年間宙に浮いている人がいる。障害を理由に免許を与えられていない人がいる。試験に合格したということは必要な知識は持っているという事でしょう。 ●(知らなかった)勉強不足です。視聴覚に関しては、医師の判断、健康診断書によっている。医師に任せている。医師が十分に聞こえると判断した場合は、業務を遂行できる。特に、言葉だけで、拒絶しているということではない。 〇その説明だと相対欠格のようだが、視聴覚障害は絶対欠格でしょう。試験には受かっても、免許は与えられない、実際の病院には勤められないわけですね。 〇医療モデルは、全部医者の判断。医者が判断することで、人生が決まってしまうということが問題。誰が判断するかということが問題。 ●医師の診断書をもって確かめます。聞こえないというのをどう定義するかという問題がある。聞こえないという判断が出ると、「速やかな電話の応対ができない」ということが問題。それぐらいはできるということであれば、問題ではない。その辺は、できないという判断は、医師の判断による。通常の会話ができる場合は、診断書を必要としない。 〇薬剤師等に関して、精神が相対欠格の理由は。 ●相対欠格に関しては、業務遂行の判断から、医師の判断に裁量権を任せて、絶対ではないとなっている。業務を的確に遂行できるかどうかが判断材料です。精神障害の方の場合でも、麻薬や重度の方に関しては、相対的欠格にする必要性があるだろうということです。それは医師の判断によります。 〇確認ですが、薬剤師の免許を与えるかどうかに関しては、医師の裁量ということですね。 ●規則の、申請手続きのところに、健康診断書を出すことが義務づけられている。免許を与えるかどうかの判断は、診断書提出だけです。それに基づいて、国が判断します。 〇判断どうのではなく、健康診断書が実際上の欠格をすすめることになるのでしょう。視聴覚はだめということですから。 ●口がきけないものがだめ。目が見えない、耳が聞こえない、診断書によって、欠格者かどうかを判断するのが、国の側になります。口が利けない、耳が聞こえない、目が見えないということがわかった段階で欠格にする。 〇的確な、迅速な判断とはなにか? ●時間的なものと正確性が必要とされますね。めがねをかければ良い場合は、OKですし、それについては、判断があります。 〇医師の判断次第でということが問題になっているわけでしょう? 〇理由、合理性をはっきりしたい。根拠が何であるかをはっきりさせてほしい。診断書を持って来いといわれて持っていったら「あなたは向いていない」と言われる。理由を聞けば、「その必要はない」と。欠格条項があるゆえに制度的にもそのように強い対応になる。障害者にとっては本当に不利で、当事者の人権を無視している場合があまりにも多い。 〇薬剤師なりの欠格条項の根拠は、十分だと思っているのですか? ●法の精神については、立法趣旨を鑑みてやむをえない。一方ではそのような実態に対しては見直しは必要だろう。 〇今までいろいろな事例が厚生省に報告されてきたはず。そういう薬剤師関係の事例で、見直しの必要性を認識したことはありましたか。 ●着任して間もないので、実体験としてはない。 (毒物・劇物関係) ●毒物劇物取締法の毒物劇物取扱責任者と特定毒物研究者は、薬剤師等とは制度的に違うことの説明をまずしたい。毒物劇物取締法というのは、一般的には毒物劇物を取り扱う工場、販売業者に対して保健衛生上の取り締まりをする法律。その毒物劇物は、昨今事件が多いが(北海道のシアンの事件等)、これらを管理する取扱責任者設置を義務づけている。取扱責任者の資質としては、化学の専門課程を卒業した者、薬剤師、都道府県の行う試験に合格した者、などの要件がある。それでその中に欠格条項として、目が見えない、耳が聞こえない、口がきけない、色盲、精神という絶対欠格がある。医師の診断書が義務づけられている。 他の制度との違いは、免許制度・許可制度ではないこと。事業者がおかなければならない責任者の要件であって、国の与える免許ではない。障害者がこのような職種に就くことは、取締法では禁じていない。ただ取扱責任者として設置するには事故防止対策、緊急時の対応としてコミュニケーションが着実に行える人が必要であり、欠格条項を定めているということです。 〇緊急時の対応としてコミュニケーションに問題があるからというのが理由ですか。 ●取り扱い責任者に要求される義務があり、その義務を果たしていただく必要がある。 〇緊急時の場合のコミュニケーションは、精神障害はできないと考えるのですか? ●精神病は障害の程度にもよりますが、一般的なコミュニケーションが不十分であるという場合には難しいでしょう。 〇「障害の程度」と言ったが、精神障害は絶対欠格ですから障害の程度は関係ないでしょう。 ●たとえば躁鬱病の方とか、それと判定されている人について、昨今の毒物劇物の現状からして、ノイローゼになられる方が結構いる。そういった目的のために使用されるのを避けなければならない。 〇緊急時の対応がメインの理由? ●障害を持っていて、異常をきたしてしまう方にはお任せできない。精神的な障害、精神的の問題があるという場合があれば。仕事ができないということではない。責任者として、事故が起こったときに責任能力が問われるから責任能力を問えるものである必要がある。精神障害の方には、責任能力を問えない場合がある。 〇それはどういうことですか? ●何らかの事故が起きたときに、どういう経緯で事故が起きたかという原因の所在が明らかにならない場合がある。 〇原因の所在は、精神障害者と関係がありますか?原因は別の要因を探す必要があるだろう。障害者は責任能力がないと言われているように思われますが。治療歴のある人は、だめだという規定ですよね。 ●制度上はそうです。 〇症状の程度は問題ではありませんね。絶対欠格なのですから。的確に行えるかどうかを判断するのに、精神障害であるかどうかという規定は必要ないだろう。ノイローゼを含めて精神障害とする場合、あなたの概念の拡散はどうかと思う。除外する人の枠を広げているだけなのではないか。個別の問題とは関係なくということが問題。精神障害がある人は、危険性が高いということは、おかしいのではないか。 〇合理的判断ができないということは、非常に問題発言。 ●健常者と見られる方でも、そういうことが起こることがある。売った側ということではなく、服毒自殺を行った側… 〇それは根拠のないところで、差別している。 ●毒物劇物に関しては、取り扱いが難しく、社会的な害が大きいので、実際に障害者がなりたいという話は聞いたことがないです。 〇そんなことを言っていいのか?希望者が多いかどうかを問題にしてもしょうがない。 ●特定毒物研究者に関しては、相対的に少ないです。社会的な害も少ない。個人的な研究です。たとえば、シアンや農薬など、限られた環境で使う十品目程度のもの。研究室レベルで許可を与える場合は、許可をしないということはない。 (美容師・理容師) ●美容師・理容師が単独でかみそりや薬品を使い、身体に直接触れて行うので、公衆衛生の観点から規定されている。精神障害について相対欠格条項になっているのは、美容師・理容師の業務遂行に適するかで判断している。精神でも程度や、障害の状態に応じて資格の判断をしている。てんかんも、精神と同様に反復した発作、心神喪失状況を伴う人もいるので、それに絡めて判断している。健常者と同等の生活を行うことができるときには再度免許を与える。免許権者の厚生省が判断。判断の基準は医者。 〇精神障害といってもいろいろあるが、どういった障害名が当たるのか? ●障害名ではなく、障害の程度。健常者と同等のことができると判断されればできる。 〇重い・軽いの判断は? ●医者ではないのでいいにくい。医師の診断書に基づいて判断しているのでケースによる。 〇精神障害のためになれない場合には責任持つのは誰? ●医者は状態を示すだけなので、責任は厚生省。 〇医者の診断書をチェックはできないから、一体となっているわけでしょ? 〇免許を持っていても、それを生かしてやろうという診断書とそうでない診断書は明らかに違う。これは公務員とか全てに通じる。相手の自立生活を大事に考えている医者は少ない。 〇診断項目があるわけでしょう?項目の設定は厚生省がサンプルを作るわけですか? ●法文上は医師の診断書とだけの規定。 〇何もかも医者の判断に頼ることへの反省をすべきでは? 〇薬剤師はサンプルがある。それに署名捺印することとある。チェックしなければならない項目がある。その危うさを問題にしてこなかった。 〇多くの場合、診断は五分程度で終わってします。免許の場合でも診断書を持っていけば、簡単にすむようなシステムになっている。そういうことを問い直していきたい。医療モデルというのはそういうこと。五分で本当に正しい判断・援助ができるはずもない。 【絶対欠格から相対欠格への改定経緯、評価】 ●栄養士・調理師:精神も欠格条項とあるが、業務に支障がなければなれる。今まで精神というだけで与えていないというケースはないし、取り消したケースもない。欠格条項の事由として精神はあるが、ケースとしてはない。 〇検討経過は? ●その点は精神病者というだけで問題があったかということを検討し、そういうケースがなかったので、相対的欠格条項にした。なぜ相対欠格を残したかは、認識としてやイメージとして、誤ったイメージが我々の方にまだあるので、なにか「障害の程度によっては…」という考えを残したいということがあった。 ●衛生士:見直しは検討経過など調理師とかと同じ。一くくりで行った。ケースがなかった。都道府県にも相談・問い合わせも全くない。 〇栄養士など、絶対が相対になったので資格を取った人はどの程度いる? ●把握していない。都道府県の免許交付なので、報告があるわけではないので。問い合わせとしてどうかはあるときはある。基本的には医師の診断になる。医師の診断で資格が与えられなかったという報告は来ていない。 〇相対への変化の評価を知りたいので、その資格を取った数は今後の目安になるので、調べていただけないか。 ●それについて調べることは可能なので積極的にやりたい。 〇医師の診断書が必要なことは今までと同じ? ●はい。 〇以前の制度では中学校卒業の者でもとれたが精神は絶対欠格だった。高卒にする代わりに精神を相対にしたという駆け引きがあった。絶対から相対になったことは緩和されたが、精神は高卒者でない人はかなりいる。 ●理美容については、すべての人に一律に資格制限する理由がなかったので改正した。事例もない。高卒者というところの駆け引きのところは初めて聞いた。平成七年に改正したが、議員のほうからの改正だったので細かいことは知らなかった。高卒者うんぬんは聞いていない。美容については精神障害が診断書に書かれている例がない。だから、国として判断するに至ったことがない。つまり精神で美容の資格を取得した人がいない。 ●けし栽培の許可については相対になった。法改正から毎年三十名程度がとり、一年更新なのだが、免許を取るのは大学の研究者、農業従事者。農業従事者も数十年栽培している人ばかり。毎年三十名程度で推移しており、精神の人が許可申請した例はない。法改正後の評価も数が少ないので評価自体難しい。精神病者に実際に免許を与えたことがない。免許権者は厚生省。 ●放射線技師:平成五年の改正で相対になった。ほかの医療従事者で相対になっているのに、放射線で絶対だったので整合性をとった。数字としては把握していないが問題があったということは聞いていない。 〇全体を禁じている合理的理由がないという話だが、先ほどの欠格条項の説明も合理性がないと思っている。本当に合理性があるのか疑わしいと思って説明していると感じている。合理性を感じ取れなかったのが今日の感想。 〇医者の診断書がウエイトを占めているが、厚生省は、医者の実態をもっと知るべき。専門分化していて、それ以外のことは知らない。診断書を書けないと言われたこともある。障害者に対する偏見とかは、あなた達の見解が元になるので、もっと慎重に考えてほしい。 〇薬剤師の免許を取ったとき、診断書が必要ときいて、どんな診断をされるのかと心配した。でも大学の脇にある医者で問診してすぐ終わった。そういう簡単な問診とかで通った人はいいが、夢をつぶされた人の存在を医者自身が自覚しているのか。もっと実態を知るべき。 〇相対になっての具体的変化、推移など、実態が把握されてない。調査をやっておいてほしい。 ●製菓衛生士も各自治体名義なので、精神病者に実際に免許を与えたことがあるかどうかを、自治体に訊いておく。 【今後の方針について】 ●見直しする以上、問題意識は持っている。検討の視点の中ですでにあがっている以上、個々に見直していく。 ●4については、政府の視点を元に検討をしているが、検討の視点に沿っている。政府全体として対処方針をどうするかという問題がある。方針がでればそれを基に具体的に進めていく。 〇法律自体戦後の古いもの。欠格条項も法律ができたときのもの。障害者観も当時と違うのだから、時代にあった法律に。 〇海外での実例把握はプランに入っているか? ●入っていない。集めないということではないが、集めて体系的にどうこうするわけではない。 〇是非、一つの方針として海外との比較は入れてほしい。各担当者の努力に任せるのではなく、大きな柱として据えてほしい。 ●総理府でやっているのでそちらを見てほしい。 〇総理府調査は、韓国・ドイツ・カナダ等のごく一部の法律になっているので、見直しの根拠にはならない。各職種に対応したナショナルな情報を。 〇すべての資格が医者の診断書だが、特に精神科の医者と患者の関係は特別。そういう中で患者を診て診断書を書くという構造的な問題のある中で、医者の診断にどこまで信頼がおけるのか。担当者から出てくる「危険な」「危害」という言葉が気になる。これはものすごい差別発言だと思う。医者が医療法の改正に関わっていて、精神の数%の患者が起こす問題によって、保護者制度を残すとしている。そういうところで医者側と私たちは対立しているのに、医者に頼り切った構造は問題だと思っている。 〇現在の障害者観に見合った見直しを是非やってほしい。それとの関係で医師の診断書は是非見直してほしい。海外調査も各部署に任せるのでは限界があるので統一的に比較検討してほしい。対処方針を見ながらまた話し合いを申し入れたい。 (以上) よびかけ人・賛同人から エッセイ2 欠格条項/陳腐な制度上の差別 (福)全日本手をつなぐ育成会 常務理事 松友了(まつとも・りょう) 「ノーマライゼーション」という考えが、デンマークの国家公務員、バンク・ミケルセンによって提唱されて、40年近い歳月がすぎました。この日本語訳がむつかしくて、カタカナのままに使われていますが、あえて当てはめると「あたりまえ」ということでしょうか。 世の中には、「あたりまえ」でありながらそうなっていない、いやそのことに気付いてさえいないことが沢山あります。障害のある人の課題は、障害者本人が決めるのだ(自己決定)ということも、まだあたりまえのこととして徹底しているとはいえません。とくに知的障害の分野では、「そんなこと出来る訳がない」として、専門家や親(家族)が決めつけているのが現状です。それを打ち破る動きが、いわゆる「本人活動」といわれているものであり、全日本育成会では、国際育成会連盟の動きに学びながら力を入れています。その援助の意味もあり、本人向けの新聞「ステージ」を数年前から定期的に発行しています。 最新版の「ステージ」の特集は、『資格を取ろう!』というものでした。そして、その資格の中に、自動車運転免許を取った人の例が、本名と顔写真入りで登場しているのです。え!運転免許って、知的障害者は取れなかったのでは、と驚かれる人もいるかも知れません。法律では、絶対的欠格条項のハズだ、と思われる方も多いでしょう。じつは、法的には、そうなんです。では、全日本育成会は違法行為を紹介しているのでしょうか。 じつは、総理府で開かれた関係省庁と関係団体の意見交換会の席上で、警察庁の幹部の方が、「実質上は、相対的欠格として扱うよう都道府県の関係機関へ指導している」と明言されたのです。私は、何度も念を押して確かめました。そして、確認を取ったのです。だから、『特集』に載せたのです。 実際、運転免許を取っている知的障害のある人は増えています。この不況の中で解雇された人が、この機会にとプラス思考でチャレンジしてる例もあります。そして、試験をパスしているのです。実技はほとんどが1回でパスしています。難関は筆記試験です。すなわち、知的障害について大きな「バリアー」となっているのです。それでも何度もチャレンジし、クリアーしています。 「欠格条項」とは何でしょうか。免許や資格とは、ある種の技能を確認し、公に許可することではないでしょうか。そうしたら、技能がクリアーできた人が、なぜ「欠格」になるのでしょうか。それは、免許や資格に関係ないことを理由に、すなわち別の理由をスティグマ(刻印)として、参加から排除することではないでしょうか。まさに、国際障害者年の時に示された3つのバリアーのうちの、制度(法)によるバリアーの最たるものであり、正真正銘の差別であります。それがなぜ、今日まで生き延びてきたのか。不思議です。 しかし、現実はその「あたりまえ」であることを、本人自身の行動によって明らかにし、変えようとしている。この現実の前では、旧い制度(法)はシーラカンスのように陳腐であります。もう、オカシイたらありゃしない。と、半ば同情しながら、文化遅滞としての社会のズレを眺めるのです。 だけど、本質は違うのでしょうね。障害者をあたかも危険な存在のごとく位置づけ、スケープゴートとして、社会の平和(安全)幻想を作り、国民に示していたのではないでしょうか。その点は、反省を込めて明らかにすべきではないでしょうか。それも、「あたりまえ」の事実ではないでしょうか。ノーマライゼーションとは、そういうことだと私は考えるのです。 呼びかけ人、賛同人 現在59名の方に呼びかけ人(48名) 賛同人(11 名)になっていただいています。 新規の方をご紹介します。 ( 1999年8月30日〜10月23日 新規 五十音順・敬称略 ) 賛同人 立岩真也 信州大学医療技術短期大学部教員 福島智 金沢大学教員 ニュースクリップ 前号掲載(〜8月末)以降のものです。 9月6日 〈朝日新聞〉(天声人語)ヨットエイドジャパンの琵琶湖ヨット体験会 9月7日 〈朝日新聞〉(窓)「投票弱者」公職選挙法の障害者郵便投票制限など。 9月28日 〈日経新聞〉 海技免許 制限見直しへ パラ五輪など追い風 運輸省 海技免許の欠格条項見直しで意見公募中 12月28日期限 運輸省(海上技術安全局船員部船舶職員課 電話03−3580−3111)が、今年10月1日付で、「障害者の海技免許取得のあり方に関する意見募集」を出しています。 趣旨、説明、資料がつけられていますので、詳細については、 必ず運輸省のホームページ http://www.motnet.go.jp/KOHO99/menkyo_.htm を参照されるか、運輸省に問い合わせて、文書資料をとりよせて下さい。 ニュースレター2号で政府方針を特集しましたが、政府方針では「2002年度末までに各省庁において必要な措置を実施する」としています。しかし各省庁にまかせていては進みません。「検討はした、結論は同じ」ということもありえます。欠格条項をなくすことに向け前進するには、いっそう、障害者当事者の検討決定過程への参画と、世論の高まりが必要です。 当会でも、意見提起を準備中です。 この機会に、声を、世論を集中しましょう! 意見募集期間等 平成11年10月1日〜平成11年12月28日 まで(必着) 電子メール・FAX・郵送で受け付けているとのことです。 活動日誌(1999年8月30日〜) 10月4日 事務局+海外プロジェクト会議 省庁交渉で予定していたものは、前号でご報告したように8月までにひととおり実施しました。現在、海外調査の再検討、個人アンケートによる白書づくりの計画、各政党との協議準備などを課題としています。 欠格条項プロジェクト(共催)として、5月から11月にかけて連続11回のヒアリングを実施中です。障害当事者をはじめ各界の方々から、欠格条項をなくす戦略と対案、国際的な比較、人権と差別禁止のための法制の提案、実態レポートなど、ご意見をうかがってきています。これをもとに、本年12月に報告と提言をまとめる予定です。 「障害者欠格条項をなくす会」の趣旨 この会は、障害者への「欠格条項」をなくす目的で 障害種別や立場をこえてネットワークづくりをすすめます。 1.今こそ、障害者自身の体験と智恵を! 欠格条項で悔しい思いをしてきた障害者自身の体験と智恵を出すことが、今必要です。 当事者の意見を、「欠格条項見直し」の動きに反映させましょう。 体験やご意見、情報をお持ちの方はぜひご連絡下さい! 2.外国ではどうなっているかも調べ役立てます。 日本で欠格条項があることがらについて、外国ではどうか、サポートのあり方などを調べ、今後に役立てます。 八か国についてアンケートを送るなど調査中です。 3.省庁交渉、各政党との協議など進めます。 1999年4月から、各省庁との交渉を始めています。 ◎会員になってください! おもな活動財源は会費です。 年会費 団体は五千円、個人は三千円 会員のかたには、年六回発行のニュースレターをお届けします。 ◎カンパを募っています 多くの費用を必要とするために、カンパでのご支援を募っています。 できればご協力をお願いいたします。 ○会の情報は、ホームページ「障害者欠格条項をなくす会」 にもあります。 http://www.butaman.ne.jp/~sakaue/restrict/ 兵庫県宝塚の「障害者情報クラブ」 坂上正司さんのご協力で、掲示していただいています。 編集人 障害者欠格条項をなくす会(共同代表 牧口一二・大熊由紀子) 通信係 〒543-0072 大阪市天王寺区生玉前町5-33 大阪府障害者社会参加促進センター内 障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議(略称:障大連)気付 TEL・FAX 06-6779-8109 (通信係には、郵便またはファックスでご連絡ください) 事務局 〒169-0075 東京都新宿区高田馬場4-28-6 光楓マンション101 DPI障害者権利擁護センター気付 TEL 03-5386-6540 FAX 03-5337-4561 会費 団体会費 年間5000円 個人会費 年間3000円 振込 郵便振替 00150-8-130574 「障害者欠格条項をなくす会」 富士銀行・馬喰町支店 普通預金 1563449 「障害者欠格条項をなくす会 会計 杉山真和」 発行人 関西障害者定期刊行物協会 大阪市城東区東中浜2-10-13 緑橋グリーンハイツ1F 定価 200円 |
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