成年被後見人等に対する欠格条項が機械的に追加されていることに対する声明


2017年6月14日

成年被後見人等に対する欠格条項が機械的に追加されていることに対する声明

障害者欠格条項をなくす会

 成年被後見人等に対する欠格条項が年々増加しています。今国会に提出された「旅館業法の一部を改正する法律案」にも、「都道府県知事は、申請者が成年被後見人又は被保佐人に該当するときは旅館業の許可を与えないことができる」という、現行法にはない欠格条項が追加されています。これはほんの一例であり、当会で2016年に「法令データ提供システム(総務省)」等をもとに調査した結果、成年被後見人・被保佐人を対象とする欠格条項を設けている法令実数は、2002年145、2009年193、2016年211と増加の一途です。法令を新設又は改定するときに、似た法令からコピー&ペーストされるような形で増加しているとみられます。

 ある障害者は長年、地元の自治体で公務員として働いてきました。本人の状況は何も変わっていないにもかかわらず、成年後見制度を利用したとたんに失職してしまいました。成年被後見人等は就業できないとする地方公務員法の欠格条項があるためです。なお、国家公務員法にも同様の条文が設けられています。

 昨年は「成年後見制度の利用の促進に関する法律(成年後見利用促進法)」が成立し、第11条(基本方針)で「成年被後見人等の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度について検討を加え、必要な見直しを行うこと」と定められています。この法律のもとに今年つくられた基本計画(3月24日閣議決定)は、「成年被後見人等の権利制限に係る措置を(2019年5月までに)見直す」 目標を立て、 「速やかに必要な見直しを行う」としています。旅館業法のように今年の提出法案にも新たな欠格条項が含まれていることは、成年後見利用促進法とその基本計画からも逆行していると言えます。

 障害者権利条約の採択(2006年)、日本の権利条約批准(2014年)、障害者差別解消法施行(2016年)と、国内外の法制度は差別のない共生社会にむけて歩みを進めてきました。障害者基本法(2011年改正)にも「社会的障壁」の除去とあるとおり、欠格条項をはじめとする法制度の障壁はまず除去することが求められています。障害のある人も権利の主体として社会参画し就業等できる法制度環境にしていくには、成年被後見人等への欠格条項を含めて総数506にのぼる既存の障害者欠格条項の点検と削除をおこなうこと、法令の新設又は改定時に新たな欠格条項を設けないことが基本です。

 障害者権利条約を批准し、また、政府をあげて「誰ひとり取り残さない」持続的な開発目標(SDGs)の達成をめざしていることからも、平等な法制度環境への転換をいかに進めるかが問われています。

 新しい法律がつくられたり改定されるたびに、機械的に、成年被後見人等に対する欠格条項が追加されていることに、強く異議を表明します。併せて、新たに欠格条項が追加されることがないように、国会で党派をこえて審議がなされることを求めます。

以上


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