道路交通法の改正に伴う政令改正試案に関する要望書 |
2002年1月8日 |
○○党 (総裁,代表,議長,党首) ○○ 様 |
障害者欠格条項をなくす会 〒101-0062千代田区神田駿河台3-2-11 DPI障害者権利擁護センター気付 TEL 03-5297-4675 FAX 03-5256-0414 共同代表 牧口 一二 大熊 由紀子 |
道路交通法の改正に伴う政令改正試案に関する要望書 |
日頃より障害者の社会参加と人権尊重にご尽力いただき感謝申し上げます。 昨年6月「道路交通法の一部を改正する法律」が成立(2002年6月施行)し、88条の障害者等への絶対的欠格条項と受験欠格は削除されました。 しかし道路交通法の場合、法律条文において、「幻覚の症状を伴う精神病」「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気」「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気」等は、試験に合格しても免許を与えないことがあるとされ、臨時適性検査も、受検しない場合は免許の取消し・停止等ができるものへと強化されました。 国会でも、障害や病気等を理由とする排除や判定プロセスへの危惧から、修正案の議論、聴覚障害者団体の参考人を含む参考人意見陳述も実施されました。そして、「補助手段の開発」や「適性試験や検査が欠格条項に代わる事実上の障壁とならないように、運転免許を取得できるよう見直しを」(抄)等をあげた附帯決議が採択されました。 以後、具体的運用基準について、2001年9月に政令素案、12月に政令試案が発表され、現在は、来る2002年1月17までを期限に意見募集が行われているところです。 私たちは今回の政令試案等について、後述のように、大きな問題があると考えています。 【政令試案等の内容】 政令試案等の骨格は、結局は「病気等による危険のおそれがない、運転を控えるべきとはいえない」と医師が診断した場合に免許を認めるものです。施行規則を一部改めて、病状等の申告をも求めるとしており、相当の割合で、保留・停止・拒否・取消し対象とすることにつながります。また、試案では、対象になる病気等について、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など、9月の素案にはなかった病名を追加しており、今後も対象を広げる可能性があるとしています。 【障害や病気があっても安全運転できる】 「絶対的欠格」の現行法のもとでも、実際には多くの病者等が免許をもち、長年、安全運転してきています。精神障害者のピアサポート団体によるアンケートでも、過半数の人は運転免許を持っています。持病があっても障害があっても、適切な医療を受け自己責任でコンディションを調整しながら、障害や病気がない人と同程度に安全運転することが可能です。今、持病等がない人を含めて、「全く危険のおそれがない」と言い切れる人はいませんし、医師にも将来の絶対的予測はできません。その人がどのようにして安全運転できるかが重要なのであって、それと病気等とは別の問題です。 【政令試案等への危惧】 現在の政令案や施行規則案では、社会参加を促進するという欠格条項見直しの趣旨に逆行することになります。 151国会でも「10メートル離れて90デシベルのクラクション音が聞こえる」の試験の適性検査基準(施行規則に定めている)など、果たして合理性があるものかどうか重ねて議論され、私たちも、意見書や交渉で繰り返し、早急に見直す必要を提起してきましたが、庁側に見直す姿勢はみられません。欧米各国はもとより、タイや韓国でも、普通免許取得には聴力は問われなくなっています。 警察庁は紹介していませんが、障害者差別禁止法、人権立法のある国々では、免許および運転行為は、人権として、もし制限する場合も可能なかぎり最小限に留めるべきという考えが前提にあります。従って、その人が安全運転できうる範囲や諸条件を規定することが主です。たとえば、昼間のみの運転や、一定距離の範囲での運転といった条件がつけられることがあります。 しかし、日本の政令試案等では、これとは反対に、障害や病気がある人には最大限あらかじめ運転免許を認めるべきではないという考え方がされています。 障害や病気=交通安全に危険をもたらすおそれがあると見て予防的に制限する発想から見直し、政令案等を見直さなければ、道路交通法はその運用によって、ますます障害者の社会参加を阻み、現状をも大幅に後退させてしまいます。 【貴政党へのお願い】 (1)日本においても差別禁止法の制定が各方面で議論にのぼるようになった今、この道交法の新しい政令等は、日本の人権が問われている問題でもあります。 貴政党・議員のお立場からも、「質問状」(障害者欠格条項をなくす会から警察庁に2001年末提出したもの・別紙)で指摘している事項(八点)の主旨をご理解いただき、欠格条項見直しの本来の趣旨に立ち返って政令と施行規則の見直しが進められるように、議論や調査検討の継続、警察庁への働きかけをしていただきますよう、お願いいたします。 (2)緊急性をかんがみ、特に次の点について、警察庁への働きかけをお願いいたします。 1 欠格条項の見直しの趣旨と、国会決議からみても、少なくとも、具体的基準を、免許自体の拒否や取消しに直結しやすい現状の試案から、運転行為上の条件規定へと緩和すること 2 病状申告制度の導入案は廃して、臨時適性検査も最小限にとどめるものとし、従来からの試験の適性検査の基準についても見直しを進めること 3 障害や病気がある人のニーズを汲み可能性を広げるように、交通環境を改善し、補助手段の開発活用や支援策を充実させること また、この件についてご意見ご指摘などお待ちしております。 |
敬具 |
「道路交通法施行令等の改正に伴う欠格条項の見直し」に関する質問状 |
1.もし、この政令試案等のとおり進めた時に、障害や病気があって現在免許をもち運転している人々が、試験に合格しており、問題なく運転してきていても、免許を制限される事例が多々起こりかねないことへの強い危惧があります。そして、従来以上に、これから運転しようとする人々を阻んでしまう可能性が心配されています。これについての考えをお示しください。 2.この政令試案等のように進めた時に、障害者の社会参加を、現状の実態より拡大できると、本当に考えられていますか。 政令試案等に通底する、障害や病気がある→危険のおそれがある→予防的に制限しようという基本的な見方は、88条がつくられた時と変わっていないのではないでしょうか。 欠格条項を支えてきた基本的な見方から、見直す目をもたないと、障害者欠格条項の見直しの趣旨に逆行するのではないでしょうか。 3.もし、外国の制限規定を紹介して根拠とするのであれば、外国の基本的な考え方なども併せて紹介するとともに、全体をよく考慮しなければ、いちじるしく公正を欠き、結論をも誤るのではないでしょうか。 意見書でも述べましたが、外国では障害や病気の有無にかかわらず、運転は人権としてとらえられ、制限を行う場合は、個人の状況と運転免許の種別に即して限定的に行われています。免許自体を否定するのは「余程の場合」です。異議申し立て、権利回復への道も、欧米では日本とは比較にならないレベルで確立しています。一方で、日本では、たとえば聴覚障害者で10メートル離れて90デシベルが聞えない人は免許を拒否・取消しされていますが、欧米はもとより、アジアでも近年、普通免許に聴力は問わない国々が出ています。この大きな格差を埋めることがこれからの課題ではないでしょうか。 4.病状の申告等という、何らかの病気等がある人にとってそれだけで新たな障壁になるものを導入することは、国会決議(運転免許の適性試験・検査については、これが障害者にとって欠格事由に代わる事実上の免許の取得制限や障壁とならないよう、・・・見直しを行うこと)から見ても、明らかに反するのではないでしょうか。 また、病状の申告の時に病名の記載は求めないとしていますが、申告すれば、その内容をもとに臨時適性検査の通知か診断書の提出を求めることになるのではないでしょうか。 5.この政令試案等の見地、記述では、誰でもが起こす可能性がないとは言えない不注意による事故で、その事故が軽微な事故であっても、障害や病気があるだけで、格段に重い処分(たとえば、健常者ならば罰金で解決するところを、停止、取消し、疑わしいと見ての臨時適性検査の義務づけ)となる可能性が非常に高いのではないでしょうか。 6.医師の立場でも「おそれがない」とは断言できないと言われています。仮に病気に直接起因する事故が起こった場合でも、診断した医師に責任を負わせる事ではない旨を記載すべきではないでしょうか。 7.補助的手段や支援策について、ほとんどふれていないのはなぜでしょうか。 8.個別の病気、症状への制限規定については、それぞれの障害・病気がある人や団体に意見をうかがっているところで、今回は省略しますが、容易に免許の拒否や取消し等につながる内容であり、取消し処分を受けた人の再取得についてもほとんどふれられていないことに強い懸念があります。 |
以上 |
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