「雇入れ時の色覚検査廃止について」パブリックコメント


2001年7月6日
雇入時健康診断における色覚検査の廃止等についての意見

     障害者欠格条項をなくす会
     (代表 牧口一二・大熊由紀子)
     事務局
     〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館内
     DPI障害者権利擁護センター気付
     TEL 03-5297-4675  FAX 03-5256-0414
 
(一)労働安全衛生法に基づく雇入時の健康診断の項目のうち、色覚検査を廃止することについて、賛成です。

雇い入れの時に、一律の色覚検査を行う必要は全くないはずです。
もし、具体的に従事する仕事の内容からどうしても色の識別が必要な場合は、机上の色覚検査でではなく、その仕事の現場で、求められる色の識別をその人ができるかどうかを確認し、その上でもし困難な場合には、補う方法や環境の改善工夫について、本人および職場の人々と相談し、必要に応じて各方面の専門家と相談すればよい問題です。

補助的手段・工程や環境の改善工夫によってほとんどの問題は解決できますし、色覚の分野でもノウハウが蓄積されています。交通信号を識別できない人は実際上存在しませんが、誰にとっても読み取りやすくするため、1972年ごろ、緑色→青緑色に変更された経過もあります。色覚以外で一例をあげると、ある大手のチョーク製造会社では、数の計算を苦手とする障害をもつ人が多く働いていますが、定型の箱にチョークを並べることで自然にスムースに計数できるなど工夫しています。

色覚検査では「色覚異常」とされ、医師や色彩学の専門家として活躍している人が、現に各分野に存在します。1987年前後までは、「色盲」「色弱」者は多くの医薬系、理工系、教員養成課程などの大学学部を受験できませんでした。提起を受けて、それらの受験資格制限は1993年頃までにほぼ撤廃されており、色の識別が全くできないかのような誤解・差別偏見による排除であったことが明らかです。しかしまだ各種の採用試験・採用時検査・採用にあたって提出する診断書等には、色覚を問題にするものが多数存在しています。

ちょうど今年六月末に閉会した通常国会では、医師法等27法令の欠格条項を見直す法案と、道交法の一部を改正する法案も成立しました。その審議において政府側からも、これまでのような一律の排除ではなく、社会参加を広げる観点から個別的な評価でできる限り可能性の道をさぐる方向が折々言及されました。
 また、「障害者に係る欠格事由の適正化を図るための医師法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」として、「3 各種資格試験等においては、これが障害者にとって欠格条項に代わる事実上の資格制限や障壁とならないよう、点字受験や拡大文字、口述による試験の実施等、受験する障害者の障害に応じた格別の配慮を講ずること。」「5 本法改正を実効あるものとする観点から、障害及び障害者の機能を補完する機器の開発、職場介助者等の職場における補助的手段の導入に対する事業主への助成など、関係行政機関が一体となって総合的な障害者の就業環境の整備に努めること。」などが、五年後をめどとする見直し規定の附則修正とともに、可決されたところです。
 バリアフリー、ユニバーサルデザインと広く言われ、発想を転換して個々人の持てる力を発揮できる環境づくりを進める時代です。検査や試験は、障害や病気等すなわち劣等・異常・欠格とする見方で排除する発想を前提としてきたものが多くあり、発想から根本的に見直し、合理的な理由のない検査は、雇入時はもちろん、採用後も廃止すべきです。今後は、補うノウハウの開発普及に一層力を注ぐ必要があります。


(二)労働安全衛生法・同規則をはじめ労働安全衛生関係法令に規定する検査の適否について、改めて全面的な見直し作業を行うことを要望します。

今回、色覚検査廃止を検討されたのと同様、
ア)検査で「異常」等とされても、実際上の業務に支障があるかどうかは別の問題
イ)補う手段方法の可能性
ウ)検査を行うことが本当に必要かどうか
の観点から、改めて見直し作業が必要です。

上記イ)については、例えば視力障害であれば、コンピュータなど様々な補助機器が開発活用されており、職場に補助者を導入する制度も存在します。その他の障害や疾患等も、実際上支障が出るかどうかは、その人がたずさわる具体的な職務内容、労働環境によるところがきわめて大きく、よいコンディションを保っていくための薬や医療手段も進んできているところです。


(三)当会に寄せられたメッセージから

「障害者欠格条項をなくす会」は1999年5月に障害の違いや立場をこえて発足した全国規模の市民団体です。欠格条項廃止にむけて、「できないからダメ」から「どうすればできるか」へと、体験・知恵を集め、海外事情も調査、それらをもとに各省庁や各政党に働きかけを行ってきました。
当会に寄せられた、色覚にふれたメッセージから紹介します。不安をかかえた人からの質問はこの他にもありました。軍医が徴兵検査のために開発した石原式検査で「色覚異常」と判定されただけで、人生を左右されてきたことが、どれほど多いかがうかがえます。

(メッセージより)
生物教師です。私自身、「色覚異常」で、大学理学部生物学科や教員採用試験(理科・生物)では悩み苦労しました。大学入試や教員採用試験から色覚条項を撤廃するようにしたいです。【群馬県】

私には色覚障害があり、また疾患にもかかっていますが、私のような立場の人間には本当に職業選択の自由はないのですね。今の状況が変わることを願っています。【東京都】

昭和29年、機械メーカー受験の際、赤緑色弱ということで、眼科医の再検査を受けましたが、「事務部門で働くには支障なかろう」ということで採用されました。以後、今年で退職するまで実務上支障なく、又、クレームを受けることもなく勤務してきました。ただし、採用試験の際の筆記試験の成績が目につくこともなかったら、入社試験で落とされただろうと思います。【兵庫県】

高校教員で、進路指導担当をしています。鉄道会社への就職希望者で、色覚が問題にされて、就職できない生徒が毎年何人かいます。「運輸省令」で、電車などの運転免許は「色覚正常」が条件ですが、これを基準に、公営地下鉄でも民営鉄道でも、事務職員・改札係から運転手まで一括で「色覚正常な者」を採用条件にしているようです。会社に聞くと「入社後、どんな仕事についてもらうかわからないから」と言われるのですが、色覚検査は、特殊な色の組みあわせでテストするもので、色覚検査表の色文字は読みとれなくても、一つ一つの色はわかります。交通信号の赤青黄を見まちがうことはないですし、印刷物などの、よみとりにくい色の組みあわせを改善するなど、工夫の問題です。【大阪府】


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