【障害女性】DPI日本会議 総括所見の分析と行動計画⑥
2023年04月11日 障害女性障害者権利条約の完全実施
DPIでは、昨年9月に国連障害者権利委員会から日本政府に出された総括所見を分析し、今後改正が必要な法制度についてまとめた「DPI日本会議総括所見の分析と行動計画」を策定しました。
今回は障害女性に関する「第6条 障害のある女性」「第17条 そのままの状態で保護される権利」「第23条 家庭及び家族の尊重」の①総括所見と②懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)、③DPIの行動計画になります。
次回の建設的対話は2028年を予定しています。それまでに、総括所見で指摘された課題を1つでも多く改善できるように、取り組んで行きたいと思います。
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是非ご覧ください。
【第6条 障害のある女性】
総括所見(外務省仮訳)
15.委員会は、以下を懸念する。
- 第4次障害者基本計画のような障害に関連する法政策においてジェンダー平等を促進し、第5次男女共同参画基本計画を含め、ジェンダー平等の法政策における障害のある女性及び女児の権利を促進するための十分な措置の欠如。
- 障害のある女性及び女児の自律的な力の育成のための、具体的措置の欠如。
16.一般的意見第3号(2016年)障害のある女性及び女児、及び持続可能な開発目標のターゲット5.1、5.2及び5.5を想起しつつ、委員会は、締約国に以下を勧告する。
- ジェンダー平等政策において、平等を確保し、障害のある女性及び女児に対する複合的かつ【又は】交差的な差別形態を防止するための効果的かつ具体的な措置を採用すること、及び障害に関する法政策にジェンダーの視点を主流化すること。
- 障害のある女性及び女児の全ての人権と基本的自由が等しく保護されることを確保すること、及びそれら措置の設計及び実施において効果的な参加を行うことを含め、障害のある女性及び女児の自律的な力【エンパワメント】を育成するための措置を講じること。
1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)
(1)懸念
- 障害のある女性の複合差別への具体的な施策の策定が不十分(15a)
- 男女共同参画施策策定への女性障害者の参画が不十分(15a)
- 障害のある女性(児)に関するデータの不足と分析が不十分(15a)
- 国と都道府県および市町村の医療・保健・福祉従事者への女性障害者による研修が不十分(15b)
- 国と都道府県および市町村に設置された保健福祉・防災・ジェンダー等に関する審議会への女性障害者の参画が不十分(15b)
(2)勧告
- 障害者基本法・障害者基本計画・障害者差別解消法の改正(16a)
- 男女共同参画社会基本法・男女共同参画基本計画の改正(16a)
- 実態調査・差別解消窓口へ女性障害当事者を参画させる(16b)
- 障害のある女性(児)な複合的・交差的交差の研修を実施する(16b)
- ジェンダーバランスと当事者性に基づいた障害のある女性委員の参画(16b)
(3)DPIとしての評価
- 障害者権利委員会からの勧告は、日本におけるジェンダー視点の不足と障害のある女性への複合的差別の現状を捉えて横断的な課題への取り組みを求めている。
- ジェンダーバランスとあらゆる障害への視点に基づいた具体的な政策と法の整備が必要である。
【第17条 そのままの状態で保護される権利】
総括所見(外務省仮訳)
37.委員会は、以下を懸念をもって注目する。
- 旧優生保護法(1948年~1996年)に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律で提示された補償制度は、本人の同意なしに優生手術の対象となった障害者に対して低額補償を設けているが、障害のある被害者への情報を利用する機会のための支援を省いており、申請期間を5年としている。
- 障害のある女性及び女児が、事情を知らされた上での自由な同意なく実施された避妊手術、子宮摘出及び中絶の報告。
38.委員会は、締約国に以下を勧告する。
- 全ての被害者が明示的に謝罪され適当に補償されるよう、申請期限を制限せず、情報を利用する機会を確保するための補助的及び代替的な意思疎通の手段とともに、全ての事例の特定と、支援の提供を含む各個人全てに適当な補償を確保するために、障害者団体との緊密な協力の上で、旧優生保護法下での優生手術の被害者のための補償制度を見直すこと。
- 障害のある女性への子宮摘出を含む強制不妊手術及び強制的な中絶を明示的に禁止すること、強制的な医療介入が有害な慣習であるという意識を向上させること、また、障害者の事情を知らされた上での同意があらゆる医療及び手術治療の前に行われるように確保すること。
1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)
(1)懸念
- 一時金支給法は、支給金額が低額であること、また障害者のアクセスを制限し、期限を5年と定めている点が不十分(37a)
- 母体保護法下での障害女性や少女に対する不妊手術や中絶の強要が、本人の同意なしに行われている(37b)
(2)勧告
- 障害者団体との協議のもとでの、一時金支給法の改正。被害者の納得のいく謝罪や補償、調査、検証による再発防止。(38a)
- ①へ被害者がアクセスできるための手段を講じること、申請期限の撤廃。(38a)
- 障害女性や少女への不妊手術や中絶の強要禁止。(38b)
- あらゆる医療行為に対する本人同意の確保。(38b)
(3)DPIとしての評価
- 一時金支給法の問題点を的確に指摘し、改正を求めている。
- 優生保護法による被害者の数に対し、一時金支給法により認定された人数があまりにも少ないことを認識し、合理的配慮が不十分であることを指摘している。
- 優生保護法が母体保護法に改正されてからも障害女性や少女に対する不妊手術や中絶手術の強要が行われていることを認識し、明示的に禁止することを求めている。
- あらゆる医療行為に対し、十分な説明の上での本人同意を求めている。
上記4点においては、日本の現状を十分に把握し、的確な勧告がでたことを評価する。ただ下記1点については、委員への説明が不十分であったため、残念に思う。
- 優生保護法裁判において、除斥期間を巡って全国各地で行われている裁判について触れられず、除斥期間を適用しない事を求める勧告が盛り込まれなかった。
【第23条 家庭及び家族の尊重】
総括所見(外務省仮訳)
49.委員会は、以下を懸念をもって留意する。
- 精神障害を離婚事由と規定する差別的な民法(第770条)の条項。
- 障害のある児童の家族からの分離、及び、障害に基づく特定の生活施設への入所措置。
50.委員会は、以下を締約国に勧告する。
- 精神障害を離婚事由とする規定の民法第770条第1項4号を含め、障害者に対して差別的な条項を廃止すること。
- 障害のある児童の家庭生活への権利を認めるとともに、障害を理由に家族が分離されることを予防するために、障害のある親を含め障害のある児童の親に対し、子育て責任を果たす上で、早期介入及び障害者を包容する支援を含む適当な支援を提供すること。また、近親の家族が障害のある児童を監護することができない場合には、地域社会の中で家庭的な環境により代替的な監護を提供するためのあらゆる努力を約束すること。
1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)
(1)懸念
- 精神障害を離婚条件とする差別規定(49a)
- 障害のある子どもを家族と分離し、病院や施設に収容していること(49b)
(2)勧告
- 民法第770条第1項第4号など、障害者に対する差別的な規定の撤廃。(50a)
- 障害のある子どもの家族生活の権利を認める。(50b)
- 親(障害のある親を含む)が養育責任遂行するための早期介入及びインクルーシブな支援を含む適切な援助を行う。(50b)
- 肉親が世話をすることができない場合には、地域社会の中で家庭的な環境において代替の世話を提供すること。(50b)
(3)DPIとしての評価
以下の3点から、日本の現状を正確に把握しており評価する。
- 障害を理由とする差別を認めている民法の条項を的確に指摘し、撤廃を求めている。
- 障害のある子どもが、家族と分離され、病院や施設に入所させられている日本の現状を認識し、その背景に擁護者、特に障害のある親への支援不足があることを指摘している。
- 肉親が養育できない環境であっても、障害のある子どもが家庭的な環境で養育されることを求めている。
しかし、障害のある子どもを療育する親への支援のみであり、障害のない子どもを療育する障害のある親への支援は書き込まれなかった。
2.法律・制度・施策の改善ポイント
(1)障害者基本法の改正
- 性別に配慮しという文言を削除し、障害のある女性の複合差別を認識し、改正に向けた施策を講じること。規定して条文に「障害のある女性の複合差別」を明記する。(15a)
- 障害者政策委員会への障害のある女性の参画(15a)
- 障害のある子どもの療育(17条)(50b)
・障害のある子どもが、可能な限りその身近な場所において療育その他これに関連する支援を受けられるように必要な支援を講じなければいけないとしているが、「可能な限り」を削除する。
・「関連する支援」を障害のある子どもの家族と障害のある家族への子育て支援等、関連する支援を明記する。
(2)障害者差別解消法の改正
- 「当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」を削除し、障害のある女性は障害に加えて女性であることにより障害者差別と性差別を複合的に被っていることから、その実態を把握し差別解消にむけた適切な措置をとらなければならないことを明記する。(15a)
- 相談支援の体制の強化と障害のある女性など当事者の相談員の積極的な活用を求める。(15a)
- 同性介助に基づいた視点を活かして体制を整備して対応を改善する。
- 障害のある女性の複合差別への認識の促進と条例への積極的な改正について明記を求める。(15a)
(3)地方条例
- 地方条例において、障害のある女性の複合的差別を明記した条例は少ないことから、地方条例の制定や地方条例の見直しへの重要な課題として捉えられるように働きかける。
(4)男女共同参画社会基本法の改正
- 障害女性を含めて、マイノリティーな立場にある女性など、目的や定義に明記することが必要。(15a)
- 男女という単一的に捉えてジェンダーという視点の欠如、マイノリティーな立場にある障害女性への具体的施策が見られない。(15a)
(5)男女共同参画基本計画の改正
- ジェンダーの視点と障害のある女性の登用が不可欠、単一的なデータ集積ではなくクロスデータの集積と分析が必要。
- 保健福祉・防災・性暴力など、障害のある女性の視点が不足しており、審議会への参画を求める。
- 法律・制度の整備と政治分野や経済分野を中心とした女性の政策・方針決定過程への参画を拡大する。(16a)
- 障害のある女性・ジェンダーの視点に基づいた当事者性を尊重した委員の選定と参画や審議会の各種専門分野にクオーター制を活用した人材の選定
- 男女共同参画の視点に立った貧困等生活上の困難に対する支援と多様性を尊重する環境の整備(16b)
- ジェンダーによる経済格差の分析と性の多様性への認識と促進。
- 国内外で高まる女性に対する暴力根絶への問題意識(16b)
(6) 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律(一時金支給法)(38a)
「全面解決」とは何かについては、原告団や、全国弁護団との調整も必要。
- 国の責任の明記と謝罪
- 補償金とし、賠償額引き上げ(現行:一時金320万円)
- 申請期限の撤廃(現行5年)
- 障害者団体参画の下での調査・検証
- そのための予算の確保
(7)障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(虐待防止法)(38b)
- 不妊や中絶の強要及び、優位性を利用して同意を求めることが虐待であることの明記
(8)母体保護法(38b)
- 配偶者同意の削除
(9)刑法「堕胎罪」(38b)
- 刑法第2編第29章の堕胎の罪(刑法212条 – 刑法216条)の削除
(10)民法の改正(50a)
- 「民法第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる」のうちの「四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。」を削除する。
総括所見を受けての短期、中期行動計画
(1)短期 2022‐24年
- 障害者基本法の改正
・「性別への配慮」の削除(16a)
・障害女性が被っている複合差別の実態把握と差別解消に向けた適切な措置の義務付けを明記する(16a、16b)
・障害のある子どもの療育(17条)の「可能な限り」を削除する(50a)
・障害のある子どもの親(障害者含む)、また障害のない子どもを療育している障害のある親への支援を明記する(50a) - 積極的に障害のある女性による定期的な研修の開催を推進する(16b)
- 一時金支給法改正あるいは新法成立(38a)
- 障害者虐待防止法の改正(38b)
(2)中期 2025-27年
- 障害者差別解消法の改正(16a、16b)
・「性別への配慮」の削除
・障害女性が被っている複合差別の実態把握と差別解消に向けた適切な措置の義務付けを明記する。
・障害のある女性の複合差別を条文に明記することを求める。
・積極的に障害のある女性による定期的な研修の開催を推進する。 - 差別解消窓口へ障害女性相談員を配置するとともに、障害女性も参画した職員研修の実施(16b)
- 障害者統計に、性別クロス集計を実施し、障害女性の実態が把握できるようにする。(16b)
- 男女共同参画社会基本法への、障害女性を始めとするマイノリティー女性の存在を認識し、対応する施策を盛り込む。(16a)
- 母体保護法の改正(38b)
(3)長期 2028‐30年
- 国・都道府県および市町村の医療・保健・福祉従業者への啓発・研修の講師として障害のある女性の活用を進める。(16b)
- 国・都道府県および市町村に設置された保健医療・防災およびジェンダー等に関する審議会における女性の参画のうち、複数の障害のある女性の参画を担保する。(16b)
- 内閣府障害者政策委員会の障害当事者委員の5割を女性にする。(16b)
- 刑法「堕胎罪」の撤廃(38b)
- 民法の差別規定の削除(50a)
以上