12月26日(水)優生保護法裁判、報告会の報告
2019年01月07日 障害女性
12月26日(水)に行われた優生保護法に関する神戸地裁での第1回期日&報告会について、ご報告します。
■当日のタイムスケジュール
9時15分 神戸地裁西側道路付近集合
9時20分 入庁行動
9時30分〜50分 傍聴席抽選整理券配布
10時30分頃 当選整理番号発表
11時〜12時 期日
12時15分から13時15分頃まで 報告集会(弁護士会4階講堂)
裁判について
11時からの期日ということで、9時15分に入庁行動があったため、9時集合という早い時間にも関わらず、藤木弁護士は東京から、また傍聴者も京都・大阪など(他にもいらしたと思うのですが)からも多数駆けつけていただき、傍聴は抽選となり ました。
早朝ということもあって、車椅子ユーザーの方は1人だけで、抽選なく傍聴できました。
これは仙台地裁でもあったことですが、今後公平になるよう、要請していくかどうか検討していくことかなと思っています。
その他傍聴者への合理的配慮については、また最後に書きます。
大法廷の一番後ろに記者席があり、傍聴者は前方の方へ座ることができました。
最初に藤原弁護団長より訴状が読み上げられました。
他の提訴と同様に、優生保護法が憲法違反であり、そのような’法律を立法し、それを推し進めたこと、また被害者救済の立法措置を怠ったことにより、国の責任問うと述べられました。
「日本が批准している障害者権利条約の第17条にも違反している」との指摘もありました。
そして原告を代表して小林寶ニさんから陳述がありました。
妻・貴美子さんが手術を受けさせられた経過や、これまで家庭や学校、職場等で受けてきた多くの差別体験を手話で語られ、この裁判を機により多くの被害者が声を上げること、そして障害者差別を無くしていきたい、という強い意思表明をされました。
裁判長もその声をしっかり受け止め、被告側弁護士の若い男性が小さな声で「今は憲法違反かどうか、述べる時ではない」と憲法判断を回避する場面では、「合憲か違憲かが大きな争点となっているので、合憲というならその論拠を示すように」と、国側の姿勢を改めて問いただしました。
また国側は「手術をしたかどうか知らない」と言っているので、原告側は次回、証拠を示すことになっています。
報告会について
その後の報告会では、裁判の解説と現在の立法策定の状況、藤木弁護士から全日本ろうあ連盟が出した立法に対する要望書の解説がありました。
ろうあ連盟からは特に以下の3点を伝えたとのことです。
- 被害者本人だけでなく、配偶者や家族も含めること。家族が手術を進めるなどにより家族関係が崩壊させられた。家族も 被害者というべき。
- 手話を言語とする人にもわかるような周知をすること。
- 被害者への補償が終わった後も、障害者差別のない社会をつくっていくこと。障害のある人だけでなく、その親や子どもへの支援などを行うこと。
その後、記者会見を終えた弁護団長と原告4名が駆けつけて、それぞれの現在の思いを語りました。
その中で印象的だったのは、小林さんも高尾さん(仮名)も、「手術を受けたことをずっと恥ずかしいことと思ってきた」と言われていたことです。
当時は通訳者もほとんどおらず、親の考え方が強く影響していた、とのことでした。
次に、兵庫聴覚障害者協会(兵聴協)から、現在支援する会の立ち上げ準備中であることの発表もありました。
現在4団体(兵聴協、きょうされん、DPI、兵庫障害者協議会)が検討しているが、今後原告に知的・精神の障害者なども加わる可能性も見据え、様々な団体・個人に加わってもらって、この裁判の原告を支えたいと表明されました。
なお、DPIとして兵庫の加盟団体を代表し、DPI常任委員の立場で藤原がこの準備会に関わっています。
3月22日の第2回期日後の報告会では、設立の報告をしたいと考えています。
◯第2回期日
2019年3月22日(金)14時から神戸地裁にて
その後報告会の予定です。
最新情報は、優生保護法被害弁護団ホームページに、随時アップされます
裁判所の合理的配慮について
最後に合理的配慮についてです。
原告には裁判所選定の手話通訳者が3名つきました。
費用については、もし裁判所が負担すると、負けた方が裁判費用を支払うことになり、和解ということになってくると、どちらが負担するかについてさらにややこしくなってくるとのことで、結局自治体の派遣制度を利用することとなったそうです。
傍聴席の手話通訳は、兵聴協のほうで手配してくれたようです。
裁判所選定の3名は、裁判の最初に宣誓がありました。
氏名を名乗り、宣誓文を読み上げました。
提出書類には生年月日と住所も記入しているそうです。
もし虚偽の通訳をした場合は処罰される、とのことでした。
その他、事前に弁護団から裁判所へ合理的配慮の申し入れをしていて、
- 傍聴者向け手話通訳者はバーの前に立って、傍聴者から見えやすいようにした。
- 裁判中はスクリーンを使って、話の要点を見える形にした。
- 裁判長から、「発言の前に名乗り、マイクを使って明瞭に簡潔に述べること、気分が悪くなったりした場合は、いつでも退出してもらって良い」との説明がありました。
- 抽選の時は、当選番号を張り出すだけでなく読み上げをし、また各所に裁判所職員がフリップを持って立っていて、声をかけるなどの配慮をしていましたので、裁判所内でオロオロすることなく、スムーズに移動することができました。
弁護士さんも、たくさんの人員配置をしていたことを評価していました 。
今回の期日を終えてでてきた課題については、支援する会から要望していくことにしており、裁判所と直接協議していくことになります。
なお、神戸地裁の手荷物チェックは目視確認で、鞄の中を開いて見せるなどしましたが、来年からはX線検査が導入されるとのことです。
藤原 久美子(神戸Beすけっと事務局長、DPI常任委員、DPI女性障害者ネットワーク代表)