【審議報告】4月3日(金)高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案(201国会閣14)
2020年04月08日 バリアフリー
先日の衆議院国土交通委員会に引き続き、4月3日も国会質疑が行われました。
今回の質疑にあがっていた主な内容は、以下の通りです。
・ 政策のソフト面での強化(心のバリアフリー)
・ 小規模店舗のバリアフリー化
・ 地方の鉄道駅のバリアフリー化
・ 鉄道駅のホームドア設置、ホームと車両間の段差・隙間解消
・ 地方自治体による基本構想、マスタープラン作成の促進
・ ホテル・旅館のバリアフリー化
・ 歴史的建築物の復元に関するバリアフリー化
・ 新幹線のフリースペース
・ 鉄道等におけるICカードを使った割引制度
・ 共同住宅のバリアフリー化
・ 学校教育からの共生社会のあり方
・ 災害時の避難所としての学校施設のバリアフリー化
・ UDタクシーの適切な乗車対応について
・ 空港アクセスバス・長距離バスについて
・ 精神障害者の運賃割引について
・ 当事者参加の仕組みづくり
▽具体的な質疑内容については下記のURLからアーカイブ中継をご確認頂けます。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=49992&media_type=
今回の審議で複数の議員が取り上げ、重点的に議論されていたのは学校のバリアフリー化、小規模店舗のバリアフリー化、駅のホームドア設置、UDタクシー、ホテルのバリアフリー化です。
学校のバリアフリー化
【ポイント】
公立小中学校のバリアフリー整備の基準適合義務が盛り込まれた点は大きな一歩であり評価できる点ですが、整備するのは新築時と大規模改修時だけです。学校施設は災害時の避難所となる事や、インクルーシブ教育を広めるためにも、全ての学校でバリアフリー整備が進むように数値目標や実施計画の策定、予算措置がポイントです。
【眞鍋純住宅局長】
既存の公立の小中学校についてはバリアフリー整備の義務付けの対象にはならないが、文部科学省において財政的支援が講じられているため協力し合いながら進めていきたい。また、数値目標については国土交通省ではバリアフリー法に基づく基本方針においてバリアフリー基準適合義務付け対象である床面積2000㎡以上の特別特定建築物の全体で見た時に、目標6割に対して平成30年度末時点で59.9%に達した。今後、公立小中学校も加えるということも踏まえ、全体で考えたい。
【文部科学省笠原大臣官房技術参事官】
学校単独での数値目標については各地方公共団体の責任において設置管理されており、限られた財源の元で耐震化、老朽化等児童生徒の安全に直結する問題も山積しているため、優先順位をつけながら行っている。まずはバリアフリー化の実態を知るとともに、設置者の考えを十分に聞いた後で国交省とも連携しながらやっていきたい。
【古川元久議員(立憲)】
こんな後ろ向きな答弁は意外。避難所としても整備は喫緊の課題。省庁ごとではなく、内閣として、政府として大臣から言っていただいて、避難所にもなる公立小中学校のバリアフリー化の推進については、具体的な数値目標や実施計画たてるように大臣リーダーシップを取ってください。
【赤羽国土交通大臣】
いまの文科省の答弁だとまずいと思うので、国の方向性として決めることだし、なにより教育的効果、小学校のときからユニバーサルデザインは当たり前なんだということを教える意味で、施設を変えるのはわかりやすい教育だと思っている。すすめるべく考えていきたい。学校が少なくなるというが、合併して新しくできる学校もでてくると思う。そういう時は必ずバリアフリー化や耐震化は進んでいく。耐震化も同じような状況があって最初は遅々として進まなかったが相当ドライブかけて補正予算も使って、国の政策として耐震化を進めていこうということで、この10年間で公立の小中学校はほぼ100%になっている。同じような形でバリアフリー化をしっかりと、政府の責任とし進めたい。
印象的だったのは、赤羽大臣が学校のバリアフリー化に関して、お二人のお子様の経験談を話されていたことです。
上の息子さんは障害を持たれている同級生がおり、その学年の生徒はユニバーサルデザインの感覚が教える以前に身についていて、下の子はそういう経験がないので明らかに大きな差がでるということを親として感じた、ということです。
子どもの頃から日常的に障害のある人と接しながら過ごすことでユニバーサルデザインへの理解が進み、共に学ぶ環境整備の重要性を語っていました。
小規模店舗のバリアフリー化
小規模店舗のバリアフリー化については、前回のバリアフリー法改正の附帯決議に小規模店舗のバリアフリー化の実態把握が入ったことで、小規模店舗のバリアフリー基準への適合状況の調査が行われました。
これにより、本年1月から建築設計標準の見直し及び小規模店舗のバリアフリー化の検討会が立ち上がり、ガイドライン作成に向けて議論が始まっています。
赤羽国土交通大臣は、バリアフリー化に取り組んできた20年余りで最後に残った課題が小規模店舗のバリアフリー化であると話し、法的に検討していくと同時にホストタウンへのバリアフリー補助制度、情報発信等に努めてきたいと話していました。
駅のホームドア設置
駅のホームドア設置については、交通政策基本計画において2020年度までに全国800の駅に設置することを目標に、2018年度末時点で783駅を整備が完了。
予算についてはホームドア設置時にホーム補強の必要があることから1ホームあたり数億円〜十数億円がかかることが課題となっているが、国土交通省より助成金等を行うことにより整備を促進していきたいと話していました。
岡本三成議員(公明党)は、そのために予算の拡充が必要として確実に予算を確保するよう求めました。
また、井上英孝氏(日本維新の会・無所属の会)より、地方のバリアフリー整備が進んでいない点について意見を求められた赤羽交通大臣は、乗降者数の規模に関わらず、10万人以上でなくても障害者のニーズや混雑具合を見て対応していく考えを示し、地方でも前に進められるように知恵を出して考えていきたいと明言していました。
UDタクシー
UDタクシーの乗車拒否問題については、昨年DPI日本会議が行った乗車アンケートが取り上げられ、多くの車いす使用者が乗車拒否に遭っている実情が伝えられました。その上で、心のバリアフリーを正しく理解し繰り返し研修を行うこと、乗務員の待遇面の見直し、インセンティブの必要性等について討議されました。
ホテル・旅館のバリアフリー化
車いす使用者用客室の設置基準は、2019年9月より2000㎡以上のホテル・旅館を建築等を行う場合に総客室数の1%以上を車いす使用者用客室と義務付ける基準が設けられました。
さらに現在は8都道府県、6市町村が条例による対象規模の引き下げを行っており、大阪や東京は一般客室のユニバーサルデザイン化も進めているとして、国としてはこれらの先進事例の情報提供や他の地方公共団体への要望を行い、今後は基準を的確に運用すると共に、バリアフリー改修への支援策の活用も推進していくとのことでした。
また、車いす使用者用客室の稼働率は一般客室に比べて2割ほど低いとの事で、誰もが使いやすく魅力的に感じる工夫を検討していくことが必要だと感じました。
全ての質疑を終えた後、本法案は全会一致で可決されました。今回、質疑内容や附帯決議案にはDPI日本会議が要望してきた全ての項目が盛り込まれました。
国会審議に先立って、政党ヒアリングへの要望書提出や、議員さんへのロビーイングを行ってきた成果を感じて、改めて当事者運動の大切さを実感しました。
附帯決議
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。
一 本法の基本理念に則り、社会的障壁の除去のために合理的配慮について理解が深まり的確に提供されるため、必要な環境整備を推進すること。
二 障害者が公共交通機関の利用において、様々な制約が存在する状況に鑑み、障害者権利条約の理念を踏まえて移動の権利について検討を進めること。
三 インクルーシブ教育の推進及び災害時の避難所として利用する必要性から、設置主体の別、規模を問わず、高校、大学も含めた全ての学校施設のバリアフリー整備を推進すること。
四 公立の小中学校が災害時の避難所になっているケースが多いことに鑑み、既設であっても、数値目標を示し、そのような施設のバリアフリー化を積極的に進めること。また、既設の公立小中学校のバリアフリー化に対する財政支援を充実すること。
五 移動円滑化基準適用除外認定車両を見直し、鉄道のない地方空港の空港アクセスバス路線に重点的にバリアフリー車両の導入が促進されるように必要な措置を検討すること。
六 生活利便施設である物販、飲食店の数は二千平米未満の小規模店舗が大半を占めることに鑑み、二千平米未満の小規模店舗及び特別特定建築物内における店舗内部の障壁となっている入口の段差解消、扉幅の確保、可動席の設置等のバリアフリー整備を進めるため、ガイドラインを作成すること。合わせて、条例によるバリアフリー基本適合義務の対象規模の引き下げ及び建築物特定施設の見直しを要請すること。
七 地方の旅客施設のバリアフリー化を進めるため、基本方針に一日の平均的な利用者数が三千人未満の駅も含めた整備目標を定めるよう検討すること。また、無人駅の増加に伴い社会的障壁が拡大しないよう、無人化に際し事業者が取り組むべき事項をガイドラインに定めた上で、当該事業者が遵守するように必要な措置を講ずること。
八 駅ホームからの視覚障害者の転落事故が全国で毎週一件以上発生していることに鑑み、ホームドアの設置、バリアフリー設備の表示や駅の構造等除法提供の充実を進めるよう、必要な措置を講ずること。
九 障害者が居住可能な共同住宅についての実態把握の調査等に必要な措置を講ずること。
十 ホテルの一般客室におけるユニバーサルデザイン化の推進及びバリアフリールームの設置率を国際的な水準に引き上げるために、必要な措置を講ずること。
十一 ユニバーサルデザインタクシーが活用されるためには、運転者の負担軽減とともに、研修支援に必要な措置を講ずること。
十二 建築物やユニバーサルデザイン等の設計に際しては、当事者からの意見を反映させるため、建築士の資格取得における教育内容や設計業務に当たる者に対する研修等においてインクルーシブデザインによる設計が行われるよう制度の構築を検討すること。
十三 移動等円滑化評価会議及び同地域分科会において、地域の特性に応じた施設、先進的な施設の整備等を通じ、多様な障害当事者が参画を継続的に実施する等必要な措置を講ずること。
十四 障害者権利条約に則り、歴史的建築物のバリアフリー化を進めるため、歴史的建築物を再建する場合等におけるバリアフリー整備の在り方について、高齢者、障害者等の参画の下検討が行われるよう、必要な措置を講ずること。
今後は参議院での審議に向けて、DPI日本会議バリアフリー部会としてロビーイング等の活動をしていく予定です。
日本のバリアフリーが一歩でも前進するよう、引き続き努めて参ります。
バリアフリー部会 工藤登志子
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