【報告】第二回路線バスに係る車いす事故対策検討委員会 事前意見交換会
2020年08月20日 バリアフリー
8月18日、西武バス株式会社の本社にて第二回路線バスに係る車いす事故対策検討委員会の事前意見交換会が開かれ、バリアフリー部会の山嵜副部長と部会メンバーの工藤が出席してきました。この意見交換会には、西武バスの乗務員やお客さまサービス課、運輸安全課、日本バス協会、国土交通省自動車局、交通エコロジー・モビリティ財団の方々も出席しました。
はじめに国土交通省自動車局安全政策課の石田課長より挨拶があり、車いす利用者がバス乗車時の事故件数は過去3年間で9件起きていると報告がありました。事故の主な原因は、バスが急ブレーキをかけた際やカーブで遠心力がかかった際に車いすが固定されていなかったために動いてしまったこと等があげられました。
また西武バスの発表では、実際に起こった事故事例や乗務員研修、実車を用いた訓練の様子が紹介されました。
現在、西武バスをはじめ各バス会社は車いす利用者が乗車した際に車いすを固定することで安全性を高めたいとしています。しかし、2020年7月にDPI日本会議が車いす利用者向けに行ったアンケートでは固定に反対する声も多く、検討課題となっています。
車いす利用者が固定に反対する主な理由は下記の通りです。
- 運転手によっては固定に時間がかかり、他の乗客に迷惑がられる。
- 運転手に嫌な顔をされる。
- ハンドル型電動車いす等、固定する場所がない車体だと固定できないことを理由に乗車拒否につながる。
- 拘束されるのが嫌。
- フックで固定すると車いすの車体に傷がつく。
- 事故や災害時に緊急脱出できない。
▽アンケート結果はこちらからダウンロードできます(Word形式)
意見交換の時間ではこれらの声を直接伝えた上でより良い方法を検討しました。アンケートの中には、ヨーロッパのバスのように後ろ向き乗車でバックレスト(背あて)がついたタイプを導入して欲しいとの声もありました。
後ろ向き乗車のメリットは、バックレストがあるため車いすを固定しなくても安全性を高められることや、乗車から発車までの時間を短縮できることです。十数年前に都営バスが車いすの後ろ向き乗車を試験的に導入した際は、当事者から「車酔いする」、「後ろの乗客と目が合うのが嫌」、「他の乗客と同じように前向き乗車で扱って欲しい」等の声が多く普及しなかったそうですが、今後は時代の変化等も考慮しながら検討していきたいとのことでした。
また乗務員からは「車いすの種類が多様で固定場所も異なるため研修していても戸惑うことがある」という率直な意見が出ていました。車いすは手動、簡易電動、電動で形状が異なる上、国内メーカーか海外メーカーかによっても特徴が異なります。
そのため、今後実車を用いた訓練ではより多様な車いすの当事者が関われると良いと話していました。さらに車いすメーカー側が公共交通機関の利用を想定しておらず、車体の設計が実態にそぐわない場合もあるため、このような検討会にメーカーや代理店も入ってもらいたい等の意見も出ていました。
意見交換後は実車を使って乗降のシミュレーションを行いました。参加した職員の方々はとても熱心に見学しており、積極的に質問してくださっていたのが印象的でした。
今後もこのような機会を増やし、車いす利用者がより安心して乗れるバスを目指していきたいと思います。
(バリアフリー部会 工藤登志子)