【報告】道路空間のユニバーサルデザインを考える懇談会
2020年09月23日 バリアフリー
9月15日、第一回道路空間のユニバーサルデザインを考える懇談会が開催され佐藤事務局長が出席しました。
この懇談会は、今年のバリアフリー法改正で新たに設けられた旅客特定車両停留施設(バスタ新宿等)のバリアフリー基準を策定すること、今年改正された道路法において、賑わいのある道路空間を構築するための道路(歩行者利便増進道路)の指定制度が創設され、基準等について検討することを主な目的としています。今年度中に4回開催するとしています。
検討事項
- 旅客特定車両停留施設の道路移動等円滑化基準の策定
- 歩行者利便増進道路の構造基準の策定
- 旅客特定車両停留施設の役務の提供の方法に関する基準(ソフト基準)の策定
- 道路移動等円滑化基準のガイドラインの策定
また構成員は、有識者、関係団体、福祉関連に係る専門家、行政担当者等の実務者により構成され、事務局は国土交通省道路局企画課が行っています。
道路におけるユニバーサルデザインに向けた取組状況
懇談会では、まず国交省より道路におけるユニバーサルデザインに向けた取組状況の報告があり、各自治体の基本構想、マスタープランの作成状況や好事例集等が紹介されました。
特定道路の整備状況については、平成20年12月に指定した特定道路約1,700kmのうち令和2年3月時点で約9割の整備が完了していますが、令和元年7月に新たに約2,740km(302市区町村→478市区町村)の特定道路を拡大し、福祉施設等を相互に結ぶ道路を特定道路の要件に追加することで、連続的かつ画的なバリアフリー化を推進するとしています。
出席委員からの意見(一部抜粋)
- 視覚障害者にとっては、道路と歩道の境目がわかるように2cm程度の段差が欲しいが、車いすユーザーにとっては2cmの段差がない方が良い。このようなニーズのバッティングが生じていないか調査する必要がある。
- 「心のバリアフリー」は優しさの問題ではないことを資料に反映して欲しい。
- 基本構想が進んでいない地域に促進して欲しい。
- 聴覚障害者は自転車のベルの音が聞こえず怖い思いをすることがある。自転車の通行についても検討して欲しい。
- 事例集の中に地元の当事者の評価も載せて欲しい。
道路法等の改正について、旅客特定車両停留施設の道路移動等円滑化基準(バリアフリー基準)の策定について
道路法等については、以下の背景から安全かつ円滑な道路交通の確保と道路の効果的な利用を推進する必要があるとしています。
- 大型車による物流需要の増大に伴い、特殊車両の通行許可手続の長期化など事業者負担が増大し、生産性が低下
- 主要駅周辺にバス停留所等が分散し、安全かつ円滑な交通の確保に支障
- バイパスの整備等により自動車交通量が減少する道路が生じる一方、コンパクトシティの進展等により歩行者交通量が増加する道路も生じており、歩行者を中心とした道路空間の構築が必要
- 2020年を目途としたレベル3以上の自動運転の実用化に向け、車両だけでなくインフラとしての道路からも積極的に支援する必要
- 災害発生時における道路の迅速な災害復旧等が必要
特定車両停留施設については、交通混雑の緩和や物流の円滑化のため、バス・タクシー・トラック等の事業者専用の停留施設を道路附属物として新たに位置付け、施設運営については、コンセッション(公共施設等運営権)制度の活用を可能とします。
出席委員からの意見(一部抜粋)
- UDタクシーやリフト付きバスの乗降場所を作って欲しい。
- 待合所には車いすのままでいられる場所がない。可動式の椅子も一定数必要。
- 車いすユーザーが使えるトイレが足りていない。簡易多機能トイレも増やして欲しい。
- エレベーターは規模に応じて大きくして欲しい。
- エスカレーター等、触れる部分にはコロナルールを作って欲しい。
- 誘導案内表記も検討して欲しい。
- 検討を進める際には当事者も入れて検討するべき。
歩行者利便増進道路の構造基準の策定について
道路法等の一部を改正する法律では、賑わいのある道路空間を構築するための道路の指定制度(歩行者利便増進道路)を創設するとしています。
<歩行者の安全かつ円滑な通行の基準の対象>
歩道:歩行者の通行の用に供する空間、歩行者の滞留の用に供する空間
(道路移動等円滑化基準に適合する構造)
<利便の増進の基準の対象>
歩行者の滞留の用に供する空間
歩行者利便増進施設(歩行者の利便の増進に資する工作物、物件又は施設:道路附属物として街灯、ベンチ等、占用物件として広告塔食事施設等)
出席委員からの意見(一部抜粋)
- 歩道上の屋台などは車いすで入れないものが多い、固定式の椅子も利用できないため、車いす利用できるようにして欲しい。
- 点字ブロック周辺の看板等は、歩行訓練している人の意見を取り入れて欲しい。
- 点字ブロックのコントラストについてもう少し議論が必要。
- 新しい点字ブロックと古い点字ブロックの連続性を確保して欲しい。
- 障害物だけでなく、人々がどのような動き方、留まり方をするのか検討するべき。
- バスやタクシー乗り場の調査をしてマップを作って欲しい。ヨーロッパではデータ化しているので参考にしてはどうか。
今回の懇談会では、車いすユーザー、視覚障害者、聴覚障害者、高齢者等様々な立場の当事者が出席していました。歩道と車道の境目の段差のように、「一部の障害者だけが使いやすく他の当事者にとっては使いづらい」といった問題が生じないよう、より慎重な意見交換が出来ていたように感じました。
今年度中は残り3回の懇談会とパブリックコメント(技術基準、ソフト基準)を行う予定です。今後も引き続き取り組んで参ります。
▽当日の資料はこちらからダウンロードできます(外部リンク:国土交通省)
バリアフリー部会 工藤登志子