新幹線のバリアフリー対策 最終とりまとめ公表!
2020年08月28日 バリアフリー
8月28日(金)に第2回新幹線のバリアフリー対策検討会が開かれ、赤羽大臣、JR各社の社長、DPIを含め障害者4団体が参加し、最終とりまとめ「新幹線の新たなバリアフリー対策について~真の共生社会の象徴として~」がまとめられました。
昨年12月に検討会が立ち上がり、ソフトとハードのワーキングを4回、実証実験を2回、事前協議も多数開いていただき、率直な意見交換を何度も何度もさせていただきました。この最終取りまとめの内容は素晴らしいので、ぜひみなさんに見てほしいです。主なポイントをご説明します。
速やかに実施する対策
(1)車椅子用スペースの導入
鉄道車両に車椅子用席を何席設けるかという基準は、世界ではIPCアクセシビリティ・ガイドは1列車に2席、ヨーロッパの基準は全長300m以上の列車は4席、というものがあります。諸外国の高速鉄道は概ね2-4席が多いのですが、今回の最終取りまとめでは世界最高水準を目指し、下記の考え方を示しました。
総席数1000席以上 ➡ 総席数の0.5%以上(多目的室含む) N700S |
500-1000席 ➡ 5席以上(多目的室含む) E5・H5系、E7・W7系 |
500席未満 ➡ 4席以上(多目的室含む) 九州新幹線、ミニ新幹線E8系 |
東海道・山陽新幹線のN700Sは総席数1323席なので7席、東北・北海道新幹線のE5・H5系は723席なので5席、北陸新幹線のE7・W7系は924席なので5席、九州新幹線は384席なので4席となります。なお、山形・秋田のミニ新幹線E8系は、一般客室3席、グリーン車(1席)、多目的室(1席)で合計5席となります。
例えば東海道新幹線でいえば、11号車11-13列の右側は座席を取り外して窓際に車椅子スペースが3つ、左側にはA席B席を残し、B席に移乗してもいいしそのまま車椅子に座っていても良いスペースが3つできます。A席B席を残した理由は、現在の利用者の半数が座席に移乗しているということがわかったためです。同伴者と並んで座れるように従来どおりA席B席を残しました。
いずれの車両も縦に車椅子席を配置することによってストレッチャー型などの長い車椅子も乗車できるように配慮されています。また、窓側にも車椅子スペースを設けたので、車いすに乗ったまま車窓からの景色を楽しむことができます。
この席数は、現在の利用状況を大幅に上回るもので、10年、20年後の利用増加を見越して、JR各社が英断してくださいました。なお、上記のレイアウトには車両の設計・工事が必要になるため、導入までは数年かかる見通しです。
(2)現在の車椅子対応座席等の予約・販売方法の改善
従来、車椅子用席の予約・購入は数時間かかっていましたが、これも改善されます。窓口における発券手続きを見直して、待ち時間を短縮する、Webで予約・購入が完結する仕組みも検討していただいております。本格的な運用は、車両の車椅子用席の整備が完了してからになりますが、今春から各社でweb申込みを始めていただいているように、出来ることから速やかに取り組む予定です。
中長期的に取り組む事項
今回は実現できませんでしたが、次世代車両からは自由席、グリーン車にも車椅子用席を設ける、それぞれに車いすで利用できるトイレを設ける、ドア幅も広げる、介助者とともに使用できる車いす対応トイレの開発等に取り組むとしています。
今後の取組
(1)早期実現に向けた制度改正
今回の取りまとめをバリアフリー法の移動等円滑化基準やガイドラインに反映させます。さっそく、9月1日には「公共交通機関のバリアフリー基準等に関する検討会」が開かれ、パブコメを経て、迅速に基準が改正される見通しです。
(2)障害者団体、鉄道事業者間のコミュニケーション
今回の取りまとめでこの検討会が終わるのではなく、引き続きWG等を活用して定期的な意見交換の場が設けられることになりました。WGでの意見交換で得られたものを、新型車両の設計時に出来る限り反映させます。
以上が最終取りまとめの主な内容です。
私たち障害者団体の意見をほぼ取り入れていただき、素晴らしい内容になりました。これはJR各社のご尽力の賜物です。担当者のみなさまは、私たちの声に真摯に耳を傾け、何度も何度も話し合い、改善案を考えてくださいました。座席数の増加など思い切った決断もしていただきました。JR東海、JR東日本、JR西日本、JR九州、JR北海道のみなさまのご尽力に、深く感謝申し上げます。
最後に、私たちが納得するまで何度も何度も話し合いの場を設けてくださり、コロナ禍で難しい状況の中、感染防止対策を行った上で多様な車椅子ユーザーを実証実験に参加させてくださり、みんなが納得できるレイアウトを考えることができました。誠実に、とことん私たちに付き合ってくださった赤羽大臣をはじめ、国交省のみなさまのご尽力に心から感謝申し上げます。
報告:佐藤 聡(事務局長)
【新幹線のバリアフリー対策検討会 令 和 2 年 8 月 28 日】
▽とりまとめ「新幹線の新たなバリアフリー対策について~真の共生社会の象徴として~」(PDF)
▽NHK報道「新幹線の車いす用スペース 新車両で大幅増へ 国交省が新基準案」(外部リンク:NHK)
最後に、本日の検討会で佐藤がお伝えしたことを掲載します。
第2回新幹線のバリアフリー対策検討会
みなさまのご尽力に感謝申し上げます!
佐藤 聡(事務局長)
この間、ソフトとハードのワーキングを4回、実証実験を2回、事前協議も多数開いていただき、率直な意見交換を何度も何度もさせていただきました。JR各社のご担当者のみなさまは、私たちの声に真摯に耳を傾け、改善案を考えてくださいました。まずは、その誠実な姿勢に感謝申し上げます。
車いす用席は、総席数に応じて4席から7席となり、従来乗れなかったストレッチャー型の長い車いすも乗車できるようにレイアウトを考えていただきました。現在の利用状況だけでなく、将来の利用増加も見越してこの席数を実現していただきました。
web予約や迅速な切符購入も各社ご検討いただいております。これまで数時間も待たなければ予約・購入できなかったものが、大幅に迅速化される見通しで、夢のようです。
この検討会を通じて、JR各社様には、ソフトもハードも思い切った決断をしていただいたと思っております。その英断によって、これまでとは別次元の、正に世界最高水準のバリアフリー環境を有する新幹線が実現できると思います。多様な車椅子ユーザーが新幹線を利用し、自由に手軽に国内旅行を楽しめる心ときめく未来がやってくると確信しています。JR各社のみなさまのご尽力とご英断に、改めて深く、深く感謝申し上げます。
この取りまとめで終わりにするのではなく、ぜひとも今後も定期的に意見交換をさせていただきたいと思います。今回実現できなかった自由席やグリーン車への車椅子用席とトイレの配置、介助者も一緒に入れるようにトイレの拡大等の課題は、ぜひとも次の新型車両開発時に取り組んでいただきたいと思います。
最後に、この検討会は本当に素晴らしかったです。私たちが納得するまでとことん話し合いの場を設けてくださりました。コロナ禍で難しい状況の中、感染防止対策を施した上で、多様な車椅子ユーザーを実証実験に参加させてくだいました。
おかげで、みんなが納得できるレイアウトを考えることができました。本日完成した取りまとめも、真の共生社会の実現の道標となる大変素晴らしいものです。とりわけ、障害者の尊厳を大切にしてくださっていることが伝わってきて、感動いたしました。誠実に、私たち障害者にとことん付き合ってくださった赤羽大臣をはじめ、国交省のみなさまのご尽力に心から感謝申し上げます。
以上