特急やくもの新型車両に乗ってきました!~移動時間も大切な旅の一部!~
2024年08月13日 バリアフリー
先日、JR西日本が運行する「特急やくも」の新型車両に乗って島根県松江市まで行ってきました!
特急やくもとは
やくもは岡山―出雲市駅間を、伯備線を経由し片道約3時間20分で走る特急列車です。
現在381系が1日15往復しています。4月6日(土)からは、1日6往復を新型273系が運行。6月15日(土)以降は全車両が273系に変わる予定です。
編成は基本4両で、最長8両に増結します。グリーン車席や普通車席、「セミコンパートメント」と呼ばれるグループ席など、全て指定席扱いとなっています。(JR西日本公式HPより抜粋)
特急列車のバリアフリー整備
新幹線のバリアフリー整備は東京2020オリパラを契機に大きく前進しましたが、特急列車は整備が遅れていました。
例えば、車いすのままで乗車できるスペースが1編成2席と少ない、チケットの予約や購入がWEBではできない、ハンドル型の電動車いすで乗車できる車両がほとんどない、車両の使用年数が40~50年と長くなかなか入れ替わらないため整備も進まない等の問題がありました。
特に車いす席は海外の特急列車に比べても少なく、世界のバリアフリー基準から遅れている状況でした。
このような状況を改善しようと、2021年2月にDPI日本会議バリアフリー部会のメンバーが赤羽国土交通大臣(当時)と面会し、特急車両のバリアフリー整備基準も新幹線並に引き上げてほしいと要望しました。
そして2021年3月から検討会が立ち上がり、DPIをはじめとする当事者団体、鉄道事業者、国交省等で複数回意見交換を行いました。その結果、2023年春から新基準での車両が導入され、特急やくもは2024年4月から新基準での新型車両が徐々に乗り入れ始めています。
▽関連記事:【第11回DPIオンラインミニ講座】『特急車両のバリアフリー対策-2023年春から新基準スタート!』
乗車してみた感想
車両に乗り込んで、まず「車いすスペースが広くて開放感がある!」と感じました。
通路を挟んで右側に車いす2台分のフリースペースがあり、大型の電動車いすでも前後に並んで乗れそうでした。
また、椅子席に移乗したい人や同伴者と隣同士で乗車したい人は、通路を挟んで左側の椅子席とその横のフリースペースを使うことができます。複数の車いす使用者と一緒に乗れたり、それぞれのニーズに合わせて座席を選べるのが良いなと思いました。(写真①)
この日は簡易電動車いすで乗車しました。背中にリュックと買い物袋をぶら下げ、足を伸ばした状態で全長約120㎝程ですが、ゆったりと乗車できました。後ろにもう一人車いすの方が来ても乗れそうでした。(写真②)
椅子席側の車いすスペースも試してみました。私の簡易電動車いすの横幅は約65㎝ですが、通路をふさぐことなく乗車できました。(写真③)
窓がとても大きかったのが嬉しいポイントでした。車いすの座面は椅子席よりも10cm程高いのですが、車いすからも景色がよく見えて旅をしている気分を味わえました!(写真④)
多目的トイレも広く、個室内で回転できました。手すりや背もたれもあり、座っている時にバランスを取りやすいと思いました。(写真⑤)
その他の良かった点として、各車いすスペースに充電用のコンセントがあり、電動車いすや呼吸器の充電にも使えそうで安心できました。
また、旧型車両のやくもはとても揺れると聞いていたのですが、新型車両は多少は揺れたもののそこまで気になりませんでした。乗車前に購入していたカップ入りのドリンクもこぼれていませんでした。
もう少し改善されたら良いなと思う点
車両とホームの間に段差と隙間があり、乗降の際にスロープが必要でした。駅員にスロープを頼まなくても自由に乗り降りできるようになったら、乗車前の買い物やトイレ等も余裕を持って済ませられると思いました。(写真⑥、⑦)
ちなみに余談ですが、駅員さんと列車を待っている間、「新型車両が導入されてから車いすの乗客は増えましたか?」と聞いたところ「最近は車いすの方を案内することが増えました」とおっしゃっていて私も嬉しく思いました。
車いすスペースのテーブルは、簡易電動車いすの座高だと少し低く感じました。さらに座高の高い電動車いすだと膝が当たってしまいそうです。高さ調節ができればより多くの人が使いやすくなると思いました。(写真⑧、⑨)
全体的な感想
今回、新基準のバリアフリー整備がされた特急やくもに乗車してみて、私たちが要望してきたことがたくさん反映されていてとても嬉しく思いました。
これまではただ単に移動しているだけという感覚がありましたが、今回は車窓の景色を見ながら同行者と一緒に楽しく快適に過ごせて、移動時間も旅の一部なのだということを実感できました。
車いす席のWEB予約(障害者割引も含む)や細かな部分での使い勝手はまだ改善余地がありますが、今後も継続して当事者の声を伝えながら事業者の皆様と一緒にバリアフリー整備を向上させていきたいと思います。
(バリアフリー部会長補佐 工藤登志子)