5/31(水)第1回 改正障害者差別解消法の施行に向けた意見交換会報告 国土交通省で差別解消法対応要領・対応指針の改定が進んでいます!
2023年06月05日 バリアフリー
5月31日(水)に国土交通省で「第1回 改正障害者差別解消法の施行に向けた意見交換会」が開催されました。中央省庁では来年4月の施行に向けて対応要領・対応指針の改定が進められており、5月9・10日には内閣府主催の合同ヒアリングが実施されました。
ほとんどの省庁はこの合同ヒアリングのみですが、国交省は独自に、丁寧な取り組みが進められています。
3月末から4月にかけて、障害者団体や事業者団体に個別にヒアリングを行い、それを踏まえて素案を作成し、5月31日(水)に第1回の意見交換会が開かれました。
13の障害者団体、21の事業者団体が参加し、素案に対して意見を述べました。国交省は管轄する範囲が広く、不動産業、設計等業、鉄道事業、一般乗合旅客自動車運送業(バス)、一般乗用旅客自動車運送業(タクシー)、対外旅客定期航路事業(国際航路)、国内旅客船業(国内航路)、航空運送業、航空旅客ターミナル施設事業(空港)、旅行業、予報業務の11もの分野があります。
今回新たに航空旅客ターミナル施設事業と予報業務が独立した項目(別紙)に入りました。気象庁は国交省の外局で、5月23日(火)には個別にDPIにヒアリングがありました。
主に聴覚障害や視覚障害者への情報保障がポイントとなりますが、気象庁では24時間365日手話通訳者と契約し、緊急時の記者会見でも手話通訳を配置できる体制を整えているそうです。
主な改正点
民間事業者の合理的配慮の提供が義務化されますので、今回の改定は対応指針が大幅に増やされております。
- 合理的配慮の提供に係る考え方を整理し、不当な差別的取扱いを含めた具体例を拡充した。
- 合理的配慮の提供における建設的対話の促進に向け、周知啓発や相談窓口の充実を追記。
- 法施行後の状況を踏まえ、対象範囲(女性・こどもの取扱い)や差別的取扱いの範囲等(車いす、補助犬等を理由とする関連差別が入りました)も追記・修正した。
- 不動産業では、これまでは不動産業者、宅建業者だけが対象だったが、新たにマンション管理業、住宅宿泊管理業、賃貸住宅管理業、特定転貸事業も対象に加わり、範囲が広げられた。
- 構成を他の省庁と合わせて、不当な差別的取扱い、不当な差別的取扱いに該当しないもの、合理的配慮の提供の具体例、合理的配慮の提供義務違反に該当する事例、合理的配慮提供義務違反に該当しないものとし、事例を多数加えた。
主な意見
- 窓口に障害者と介助者が来たとき、障害者には話しかけず、介助者に話しかけることを不当な差別的取扱いの事例に入れてほしい。
- 不動産業。ろう者は、火事があった場合など電話連絡ができないことを理由に、大家さんに貸してもらえないという事例がある。差別的取扱いに追記してほしいい。
- 対応要領・対応指針の情報提供をするというところに手話、字幕、会議や講習会、試験などに手話通訳の配置をしてほしい。予算がなく、過重な負担として準備しないことがないようにして。
- 合理的配慮の提供の手続きにおいて、手を添える、というのがあるが、視覚障害者は書けないので、相手方が代筆するとしてほしい。
- 付き添い同伴の記述で、「安全上の問題がある場合」という記載があるが、これは削除してほしい。
- 本来業務ではないことは断っていいと書かれているが、人として、緊急時はやるべきではないか。滅多矢鱈に依頼するのではなく、やむにやまれぬ切ない状況で依頼している。
- 「障害者の求めに応じて」という記載が多数あるが、知的障害者、発達障害者等は自分から支援を求めるのが難しい。家族や支援者からの求めだと、本人からではないからと誤って拒否されてしまうことになるのではないか。
- 事前連絡の協力をもとめる記載があるが、これがあると、事前連絡がないと乗せないということになるのではないか。
- 差別的取扱いに当たらない事例に安全上の理由があるが、各事業者の研修が徹底されないと、これを理由に差別ではないということが起こりうる。新幹線に乗るときに、スロープ介助を頼むと、係員が来るまでここで待機してと言われる。危ないという理由。車椅子利用者だけ危ないというのはおかしいのではないか。安全の確保という理由は、差別的取扱いにならない事例に書くのは問題。削除してほしい。
DPIからの意見
時間がないので後日文書で意見提出することとし、バスのところで3点のみ発言しました。
- 「車椅子固定場所の座席を別の乗客が利用している状況において、当該車椅子利用客へ丁寧に理由(旅客の安全を確保できない等)を説明することなく利用を拒否する。」という記載があるが、丁寧に説明したら、車いす利用者の乗車拒否を容認する記述になっている。昨年、川崎市バスで、車両全体で満席ではなかったのに、車いす固定場所に他の乗客が乗車していたため利用を拒否した事例があった。この記述はそのような対応を容認するものであり、削除していただきたい。
- 正当な理由があるため不当な差別的取り扱いにあたらない事例として「車いすがバスに設置されている固定装置に対応していないため、転倒等により車いす利用者や他の乗客が怪我をする恐れがある場合は、乗車を遠慮してもらう場合がある。」という記載がある。ここはハンドル形電動車いすの乗車拒否の根拠となっている記述。数年前に国交省の取り組みで、新幹線や鉄道のハンドル形電動車いすの乗車拒否が改善されたが、その時の調査で欧米ではハンドル形電動車いすもジョイスティック型電動車いすと同じ取扱で、拒否されていなかった。バスも同じようにハンドル形電動車いすを拒否しないように、記述を改めてほしい。
- 「乗客の安全を確保できる装備がないため、チルト型、ストレッチャー型、リクライニング型車椅子での利用ができない等の、車椅子で利用する場合の諸注意をホームページ等に掲載し、理解を求める。」という記載が新たに加わっている。チルト型、ストレッチャー型、リクライニング式車椅子の一律な排除につなる。そのような車椅子でも乗車できている。削除してほしい。
今後のスケジュール
- 5月31日(水):第1回意見交換会 (対応指針・対応要領(国交省本省)案の提示)
- 6月上旬:追加意見の提出
- 中~下旬:意見を踏まえた文案調整を実施
- 7月上旬:第2回意見交換会(対応指針・対応要領(国交省本省・外局・所管独法等)案の提示)
- 上~中旬: 意見を踏まえた文案調整
- 下旬: パブリックコメント開始(1か月間実施)
- 8月上~中旬:(パブリックコメント期間)(必要に応じて)意見を踏まえた文案調整
- 下旬:パブリックコメント終了、集まった意見を踏まえ、文案調整を実施
- 9月上旬: 案確定
- 中旬: 内部手続き(決裁、事務連絡発出準備 等)
- 中~下旬: 公表、周知
まとめ
DPIでは2月に集めた差別事例をもとに意見書を作成し、5月上旬に国交省に提出しています。今回示された素案には、DPI意見のうち11項目程度盛り込んでくださいました。
しかし、新たに追記されたものにはいくつか問題がありますし、盛り込んで頂いてないが重要な課題もあります。本日発言できなかったことは文書で提出し、引き続き働きかけを続けたいと思います。ぜひとも、すばらしい対応要領・対応指針となるように願っております。
報告:佐藤 聡(事務局長)
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