障害児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟総会 ~「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」成立報告会~
2022年06月15日 バリアフリー障害者権利条約の完全実施
6月14日(火)に障害児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟の総会が開催され、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の成立の報告が行われました。
この議連は2019年に読書バリアフリー法を策定する時に出来た超党派の議連で、昨年は障害者団体のヒアリングを実施するなど、情報アクセシビリティの法制度の策定に向けて、強力に牽引してくださいました。国会閉会前日のお忙しい中、早朝の8時に議員会館で開かれ、多くの国会議員、障害者団体、関係省庁が集まり、法成立を祝いました。
出席
- 衛藤晟一参議院議員(会長・自民)、山本博司参議院議員(幹事長・公明)、滝波宏文参議院議員(事務局長・自民)、福岡資麿参議院議員(自民)、宮路拓馬衆議院議員(自民)、川田龍平参議院議員(立憲)、城井崇衆議院議員(立憲)、早稲田夕季衆議院議員(立憲)、井上哲士参議院議員(共産)、宮本徹衆議院議員(共産)
- 全日本ろうあ連盟、日本視覚障害者団体連合、日本障害者リハビリテーション協会、DPI日本会議、全国盲ろう者協会、全国要約筆記問題研究会、全国手話通訳問題研究会、日本障害者協議会
- 内閣府、総務省、文科省、厚労省、経産省、国交省、デジタル庁、警察庁、参議院法制局
経過
障害者権利条約第9条「施設及びサービス等の利用の容易さ」では、バリアフリー等の環境整備とともに、情報アクセシビリティ整備も求めています。日本は2000年に交通バリアフリー法が策定され公共交通機関等のバリアフリー整備は進んできましたが、情報アクセシビリティについては法がなく、以前から策定が求められておりました。今国会で法案(議員立法)が上程され、参議院先議で審議され、5月19日に衆議院本会議で可決・成立し、5月25日から公布、施行されております。
法律は、1条(目的)で「障害者による情報の取得利用・意思疎通に係る施策を総合的に推進し、共生社会の実現に資する」とし、関係者の責務・連携協力・意見の尊重(4条から8条)、基本的施策(11条から16条)を定めています。
▽概要 障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法(PDF)
障害者団体から
障害者団体からは、長年求めてきた法律が成立したことへの感謝、誰ひとり取り残さない社会の実現のために、法の理念を着実に進めてほしいという意見が出されました。
DPIからは、議連のみなさんのご尽力への感謝とともに、今後は、アクセシビリティを要件とした公共調達の創設をお願いしました。アメリカではリハビリテーション法508条で、政府はアクセシビリティを確保した商品しか購入しないという仕組みを作っています。
政府は大口の顧客なので、事業者は必ず政府の要件を満たす商品を開発するようになり、その結果、市場の商品のほとんどがアクセシビリティを確保したものになるのです。カナダ、メキシコ、オーストラリア、EUでも同様の公共調達が定められています。
※この件については、第35回内閣府障害者政策委員会(平成29年6月23日)でのジェームス・サーストン氏の講演が詳しいです。以下に内閣府の議事録がありますので、御覧ください。
国会議員から
- 議連が超党派で出来て、この法律を策定することが出来嬉しい。素晴らしい法律になった。しっかり活かせるように、頑張っていきたい。
- 手話通訳士の育成をさらに推進することが必要。高等教育機関での研究、養成におけるさらなるメソッド(方法)の確立も必要。
- 附帯決議もまとめた。公共調達の件も、いろんな機器をしっかり使えるように、民間で開発してもらって社会にでること大切。全都道府県からあがっている手話言語法のご要望も高い。さらに、情報アクセシビリティを一つの柱として進展できるように力尽くしたい。
- 心から喜びたい。この法律を活かして施策が進むかが大事。議員立法はそこが問われる。地域格差が大きい。差を埋めるために、財政支援とかさらに取り組む必要ある。
- 今春、読書バリアフリー法が出来てどういう変化があるか国会図書館に聞いた。努力されていること実感した。役所や自治体には、どう具体化していくか求められる。
- 与野党超えて調整した。国政選挙の手前になると、様々な他の要因が出てくるが、成立できてよかった。足がかりの法律があることで、一つ一つの政策が進展しやすくなる。
- 10年来の取り組みが実現し、みなさんに感謝したい。夏に参議院選挙を控えており、参議院選挙後に勢力が変わるとこの法案の審議がリセットされるのではないかと心配だったので、なんとかその前に成立させたかった。一般的には閣法を先に審議し、終わってから議員立法の審議になるのだが、各党のご理解で、閣法の間にこの法案の審議を挟むことができ、スケジュール確保していただいた。あまり例がないこと。幅広い理解を得られた。
省庁からの今後の意気込み
- 内閣府:5月25日に法律の施行通知出した。周知に取り組む。各省庁と連携して取り組みたい。
▽「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る 施策の推進に関する法律の施行について(通知)」
- 総務省:ICT機器、アクセシブルな機器の普及進めている。関係業界団体とコミュニケーションをとって取り組みたい。
- 文科省:教育の関係者に伝わるように意識啓発に務める。
- 厚労省:現在、障害者総合支援法の見直しを行っている。部会取りまとめにも、この法律を出来たことを踏まえることを盛り込んでいる。
- 経産省:関係事業者と協力して進めたい。誰にとっても使いやすい機器の普及に取り組む。
- 国交省:R3年から新しいバリアフリー計画を策定して取り組んでいる。この法律の趣旨も踏まえて取り組みたい。
- デジタル庁:6月7日に重点計画を閣議決定した。誰ひとり取り残されないデジタル社会。デジタルで出来ることたくさんある。連携して取り組みたい。
- 警察庁:トラブルに巻き込まれたとき、最初に頼るのは警察官。警察官と障害者がコミュニケーションとれるように、指導していきたい。DVDをつくって障害者とのコミュニケーションの動画つくった。法律の趣旨も踏まえて取り組み進めたい。
まとめ
衛藤晟一会長から「骨太の方針でも情報コミュニケーションの支援を書き込ませていただいたので、各省取り組みを進めていただきたい。視覚障害者の団体から読書バリアフリー法の成立をという要請が出て、2019年に法律を策定したことが大きな契機となり、この法律策定のモチベーションとなった。2年で一気に動いて成立できたのは、各団体、国会議員のみなさんのご支援のたまもの。10数年来の課題をようやく実現でき、良かったなと思っている。みなさんに心から感謝申し上げたい」という挨拶がありました。
8月には国連の第1回建設的対話(対日審査)が予定されています。この法律の成立を新たな進展として報告でき、本当に良かったなと思っています。この法律を契機として、さらなる情報アクセシビリティの推進を進めていただきたいと思います。
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