【報告】特性に応じたテーマ別意見交換会「肢体不自由」(移動円滑化評価会議)
2020年09月09日 バリアフリー
9月8日(火)「移動円滑化評価会議 特性に応じたテーマ別意見交換会(第9回)『肢体不自由』④」 が開催されました。今回は新型コロナウィルスの感染予防の観点からオンライン会議形式での開催となりました。
背景
2018年バリアフリー法改正で、障害当事者がバリアフリー整備を評価する仕組み「移動等円滑化評価会議」が設けられました。親会の下に、テーマ別に「知的障害、発達障害、精神障害及び認知症」「肢体不自由」「妊産婦及び乳幼児連れ」「視覚障害・聴覚障害等」の4つの部会が設けられています。
「肢体不自由」では、昨年度はUDタクシーの試乗などを行いました。評価会議、テーマ別肢体不自由共に今年度初開催となります。
▽評価会議と地域分科会についてはこちらに資料がございます(外部リンク:国土交通省)
今回の意見交換の主な内容は下記の通りです。
優先席、車椅子使用者用駐車施設等の適正な利用の推進について
今回の法改正では、国・地方公共団体・国民・施設設置管理者の責務等として、「車両の優先席、車椅子用駐車施設、障害者用トイレ等の適正な利用の推進」を追加しました。
また、公共交通事業者等に作成が義務付けられたハード・ソフト取組計画の記載事項に「 車両の優先席、車椅子用駐車施設、障害者用トイレ等の適正な利用」等を追加し、対象施設の例は、車両等の優先席、車いす使用者用駐車施設、障害者用トイレ等があります。
施設設置管理者が講ずべき具体的措置としては、真に必要な方が円滑に利用できるよう、一般利用者に対して、ポスターの掲示、車内放送等での呼びかけ等を行うとしています。
また、車いす使用者用駐車施設のポスターデザインについて意見交換を行いました。
A案・・・車いす使用者が車両の横から乗降しようとしている様子。
B案・・・一般車が車いすスペースに駐車し、不適切な利用をしている様子。
C案・・・国際シンボルマーク(車いすマーク)の周知を促すようなデザイン
当事者団体から出ていた意見は下記の通りです。
- A案のように車いすの乗降には広いスペースが必要だとわかるようなデザインにして欲しい。
実際に乗降していることがわかるデザインにして欲しい。 - 車いす使用者用スペースが空いているから一般車が停まってもいいという考えがあるが、そこしか使えない人のために常に空けておいて欲しい。
- 国際シンボルマークをつけていたら車いす使用者用スペースに停めても良いと安易に考える人がいる。国際シンボルマークの取得をもう少し厳しくできないか。もう少し検討して欲しい。
- 日本ではエレベーターやトイレ、優先席等で車いす使用者に譲ることがほとんどない。海外では必ず譲ってくれる。啓発して欲しい。
- パーキングパーミット制度を全国に導入して欲しい。
コロナ禍における移動等の困りごと等について
- 視覚障害者は同行援護の人の肩に手を置いて移動しなければならないが、敬遠されている。
- マスクをしていると聴覚障害者が口元を見れず、言葉を読み取れない。
- オンライン会議の画質が鮮明でない、タイムラグが生じるため聴覚障害者にとっては映像だけでは参加しづらい。
- 重度の知的障害や行動障害のある人がマスクの着用、手の消毒を嫌がる。また、車道に飛び出すような場面を制止するためには身体の密着が生じる。
その他 ・移動等円滑化評価会議・地域分科会での取り組み提案
DPI日本会議の佐藤事務局長より、東京 2020 オリンピック・パラリンピックに向けた施設整備において実施されたユニバーサルデザインワークショップ(UD/WS)の取り組みを例に、当事者参画と再点検の仕組みを定着させていって欲しいと要望を伝えました。
他の当事者団体からは、空港内や施設内だけでなく、空港までのアクセスも整備していって欲しい。等の意見が出ていました。
▽参考資料:移動等円滑化評価会議・地域分科会での取り組み提案 VOL.2(ワード)
基本構想・マスタープランの住民提案制度について
バリアフリー法において、住民等はマスタープラン又は基本構想の素案を作成して提示することにより、マスタープラン又は基本構想の作成を市町村に対して提案することができるとしています。
提案を受けた市町村は、当該提案に基づきマスタープラン又は基本構想の作成をするか否かについて、遅滞なく公表する必要があり、マスタープラン又は基本構想の作成等をしない場合には、その理由を明らかにする必要があります。すでに作成済みの地域でも、内容が不十分な場合は変更の提案をすることが可能です。
DPIの佐藤事務局長は、住民提案制度は非常に良い制度と評価しつつもなかなか取り組む地域が伸びない実態があるとし、先進事例をわかりやすい資料やポスター等で見せてもらえると良いのではないかと伝えました。
他の団体からは、地方部にも目を向けて欲しい。例えば鉄道駅の一日の平均乗降者数が3,000人未満の駅もエレベーター設置を進めて欲しい。等の意見が出ていました。
今回の意見交換会では、海外の事例も交えながら日本も国際基準のバリアフリーに追いついて欲しいといった意見が聞かれていました。また、当事者参画の仕組みについても、東京オリンピック・パラリンピックがゴールではなく、その後も再評価の仕組みを作っていって欲しい等の、レガシーとしての考え方が聞かれていました。
今後は9月28日(月)に移動円滑化評価会議が開催されます。日本のバリアフリー施策が一歩でも前進するよう、今後も取り組んでまいります。
バリアフリー部会 工藤登志子