第4回移動等円滑化評価会議 参加報告
2020年10月02日 バリアフリー
9月28日、第4回移動等円滑化評価会議が開催され、佐藤事務局長が出席しました。今回は新型コロナウイルスの感染予防の観点から、対面形式とオンライン形式の併用で行われました。
移動等円滑化評価会議の概要
平成30年の改正バリアフリー法において、高齢者、障害者等の当事者等が参画する会議を設置し、定期的にバリアフリー化の進展状況を把握し評価することが定められました。これまでに書面開催も含めて3回開催されており、今回が4回目となります。
構成員は関係行政機関及び高齢者、障害者等、地方公共団体、施設設置管理者その他の関係者で構成されています。また、本省での評価会議の下に全国10の地方運輸局に「地域分科会」「特性に応じたテーマ別意見交換会」が設置されています。
今回の評価会議では主に下記の内容について意見交換が行われました。
- 移動等円滑化評価会議等における主な意見
- 移動等円滑化評価会議等における主な意見と国土交通省等の対応状況
- 移動等円滑化に関する好事例・先進事例の共有
- 国土交通省における最近の主な取り組み
- その他
各委員からの主な発言は下記の通りです。
⚫評価会議の目標について
評価会議を開催するにあたって、何を目標としているのか明確になっていないため評価が難しいといった指摘が複数の委員から出ていました。これを受けて国土交通省は、今後評価会議の在り方について当事者も交えながら検討していきたいとのことでした。
⚫当事者参画をどのように進めていくのか
新国立競技場のユニバーサルデザインワークショップや新幹線の車いすスペース等、設計段階から当事者が関わってきた好事例を今後も継続していくために情報共有が必要との意見が出ていました。また、当事者参画は新しい取組を導入する前だけでなく、導入後も評価、再検討の機会を作って欲しいといった意見もありました。
⚫無人駅対策
主に地方部では鉄道駅の無人化が進んでおり、障害者等の円滑な移動が難しい状況になっていることから、ホームと車両間の段差・隙間の解消、ホームドアの設置等ハード面の整備と、誘導案内や緊急時の対応等のソフト面の対応の両方を進めていって欲しいとの意見が複数出ていました。
これについて鉄道事業者や国土交通省からの返答はありませんでしたが、今後検討されていくようです。
⚫情報の統合について
各駅のバリアフリー情報やバリアフリールートでの乗換案内等、鉄道各社で情報が統一されていないことから、全ての情報を統合して欲しいといった意見が出ていました。DPIの佐藤事務局長は、エコモ財団が管理している「らくらくおでかけネット」が情報統合の好事例として紹介し、各駅の段差・隙間の数値情報も追加して欲しいと発言していました。
他の委員からは、一般企業が開発している全ての乗換アプリ等にもデフォルトでバリアフリー情報を載せてもらえるようにして欲しいといった意見も出ていました。
⚫地域格差の解消について
地方でのバリアフリー整備が遅れていることから、地域分科会を複数回開催して欲しい、住民提案ができる基本構想の策定に積極的に取り組んで欲しい、地方の当事者と連携して当事者提案型のワークショップに支援して欲しい、全国の当事者が参加できるようオンライン会議を活用して欲しい等の意見が出ていました。
⚫その他DPIからの意見
- 学校のバリアフリー化について基本方針の項目に入れ、毎年整備状況を報告して欲しい。
- 先進的な取り組みを検証しガイドラインへ反映する取り組みをこの評価会議でやってほしい。
⚫他の意見
- バリアフリーマップの作成が全国で進められているが、あるべき姿は「バリアフリーマップのいらない街づくり」である。どこにでも行けることを前提とした意識付けをして欲しい。
- 視覚障害者への誘導案内、マスクをつけられない人への理解等、コロナ禍で生まれた新たな課題についても検討して欲しい。
- SDGsや障害者基本法、障害者差別解消法の内容も踏まえた評価会議を行って欲しい。
- 海外からの障害者が気軽に新幹線等の公共交通機関を使えるよう、英語版のオンライン予約システムの導入も進めていって欲しい。
- 海外ではタクシー予約アプリでUDタクシーを選択できる。日本でもUDタクシーをアプリで予約できるようにして欲しい。
- 精神障害者、認知症の人への公共交通運賃割引制度を導入して欲しい。
- 駅の多目的トイレ、エレベーターは利用者数や規模に応じた整備目標を検討して欲しい。
- 案内表示のコントラストや色は専門家も入れて検討して欲しい。
今回の評価会議を傍聴した感想
評価会議では当事者から非常に幅広い意見が出ており、評価できる点とこれから検討していかなければならない課題が多数出ていました。これら一つ一つを詳細に議論できる時間がなく、施設管理者や交通事業者側からの意見を聞けなかったことが残念に思いました。今後は地域分科会や特性に応じたテーマ別意見交換会を複数回開催して頂き、有効活用していきたいと思います。
なお、今回の評価会議での配布資料や議事録等は後日国土交通省のウェブサイトに掲載される予定です。
参考
<地域分科会>
平成31年2月に開催された第1回評価会議で、全国10ブロックにおいて「移動等円滑化評価会議 地域分科会」を開催し、地域特性に応じたバリアフリー化の進展状況の確認を行うことが決定しました。各地域において、第1回地域分科会を令和元年6~7月に開催し、第2回地域分科会は令和2年7~9月に開催しました。また、地域のニーズをより詳細に把握するための現地視察や意見交換会を開催しています。
<特性に応じたテーマ別意見交換会>
本省(事務局)において、様々な障害特性等に応じた課題を適切に把握するため、各当事者団体等との「特性に応じたテーマ別意見交換会」を開催しており、令和2年9月末現在で下記の通り開催しています。
・知的障害、発達障害、精神障害及び認知症 計2回
・肢体不自由 計4回
・視覚障害 計2回
・聴覚障害 計2回
・妊産婦及び乳幼児連れ 計2回
バリアフリー部会 工藤登志子