新しい評価指標の取り組みが始まります!第7回移動等円滑化評価会議(国交省)報告
2022年03月28日 バリアフリー
2022年3月25日(金)に第7回移動等円滑化評価会議が開かれました。この会議は2018年のバリアフリー法改正で、高齢者、障害者等の当事者等が参画する会議を設置し、定期的にバリアフリー化の進展の状況を把握し、評価することを目的に設けられましたものです。半期に一度のペースで開かれ、障害者団体や学識研究者、事業者団体、地方公共団体等の34名の委員で構成されています。
議題
① 当事者目線にたったバリアフリー評価指標のあり方の検討について
② 移動等円滑化の進展状況について
③ 移動等円滑化評価会議における主なご意見と国土交通省等の対応状況
④ その他
主な内容と意見
① 当事者目線にたったバリアフリー評価指標のあり方の検討について
これは国交省が検討している新しい取り組みです。施設の環境について、バリアフリー基準に定める要件はクリアされていても、当事者の目線に立ったアクセス性や使いやすさが十分に確保されていないケース等があり、当事者目線で評価(点検)・検証することが重要であり、そのための新たな“ものさし”が必要、という問題意識で検討が始まりました。
具体的には、障害当事者が現地調査をし、施設設置管理者と意見交換し、事例をまとめ、必要に応じてバリアフリー法の基準がガイドラインへの反映する、バリアフリー改修の促進につなげていくというものです。
国交省が指標案を作成し、2022年度からワーキンググループを設置して、現地調査を行います。まずは駅をやって、地方ブロックの取り組みへと広げていくということです。
委員から出た主な意見は
- 当事者目線という考え方はとても良い。権利条約の中で大事にされた概念。私たち抜きに私たちのことを決めないで。当事者参画を深めていく。他のものとの平等を基礎にする。
- 設置管理者自身による評価検証につなげる、改修につなげることが極めて重要。
- 評価の指標の1つとして、プロセスも加えてほしい。駅の大規模改修、新築などをモデル的に実施できないか。
- 駅はラッシュ時など時間帯によって使い勝手が変わってくる。1~2回行って調査するのではそういうところがわからない。期間を定めて、評価の観点を決めて、自由に使ってもらった上で事例を集めるのが良いのではないか。
- 知的、発達障害の人たちは、困ったときは人がたより。人的支援が大事。
DPIからは以下の3点を発言しました。
- 当事者が視察し、評価し、基準やガイドラインへ反映するこの取組は大切なのでぜひ進めてほしい。鉄道だけでなく、建物とか、地方にも広げ、2年で終わりではなく、システム化を視野に進めてほしい。
- 「平等に使えるか」という視点が重要。「ハード」と「ソフト(接遇、合理的配慮)」があり、その両方がうまく組み合わさっているかというのが「当事者目線にたった評価」がポイント。
- 現地調査は大切。そこを日常的に利用している人への丁寧な聞き取りや、当事者委員が実際に何回か利用しないとわからないことがある。期間を決めて、その間にそれぞれの当事者に利用してもらう方法も考えてはどうか。
② 移動等円滑化の進展状況について
2021年度から始まっている第3次基本計画の目標達成状況(2020年度末)の報告です。概ね進展しているのですが、移動円滑化促進方針・基本構想を策定している自治体は312(2019年度は309)と低調でした。
主な意見は
- 信号機は、緊急車両が来る時は突然赤に変わる。これを変えてほしい。事故にあいそうになった経験がある。遠くから緊急車両が来る時や、バスの陰隠れて見えないときもある。信号機の表示を点滅にするなど、聞こえなくてもわかりやすい仕組みが必要。
- ノンステップバスの導入は、九州が40%いってない。低いところをどう上げるか検討が必要。
- なぜ地域格差が生まれているのか。都市部中心のバリアフリーにならないように工夫が重要。地域間格差是正のロードマップを。
- 駅で、バリアフリールートが乗客の必要なルート上にどの程度設けられているか。評価指標の検討にも加えてほしい。
- マスタープラン・基本構想は令和7年までに増やす方向だが、具体的にどうやって増やすのか。自治体にセミナーを行うとか働きかけを企画してほしい。
DPIからは今後検討してほしいこととして以下の2点発言しました。
- 最低基準の引き上げが必要。現行は、車いす駐車スペース(1台以上)、バリアフリートイレ(建物に1つ以上)、エレベーターサイズ(11人乗り)となっているが、ニーズが拡大し対応できていない。エレベーターは開口部にソデのない出入りしやすい構造の検討が必要。
- UDタクシーの基準見直しが必要。現在も乗車拒否が続いている。乗車拒否を誘発している原因は、車いすの載せるときの構造が複雑でドライバーの負担が大きく、手間がかかること、大きな車いすが乗れない狭い空間。スロープの耐荷重は300Kgに引き上げてもらったが、他の問題は改善されていないので、メーカーが開発する前に新基準を策定して、公表することが必要。
まとめ
会議では活発に意見が出され、時間をオーバーするほどでした。今回提案された新しい評価指標の取り組みは、障害当事者による評価を施設整備につなげ、バリアフリー法の基準やガイドラインの見直しにつなげていく、正にこの評価会議の目的にかなったものです。ぜひとも、強力に推進し、さらに全国10箇所の地方運輸局に設けられている地方分科会でも展開して、当事者評価の仕組みを全国に広げていってほしいと思います。