バリアフリートイレ、車いす駐車施設、劇場・スタジアム等の車いす用席の基準改定へ! 第4回建築設計標準フォローアップ会議報告
2023年02月20日 バリアフリー
2月17日(金)に第4回建築設計標準フォローアップ会議(国交省)がオンラインで開かれました。この会議は、2021年の小規模店舗のガイドラインの作成をきっかけにできた会議で、半年に1回程度のペースで開かれています。障害者団体、事業者団体、建築関係団体、地方公共団体、研究者等38名の委員で構成されています。
今回、重要な報告がいくつか出ましたので、ピックアップして報告します。特に(3)では、バリアフリートイレ、車いす用駐車施設の義務基準の引き上げ、劇場やスタジアムの車いす用席の数値の策定といった重要な法令基準の見直しが発表されました。
議事
(1) 第3回会議等における意見(概要)について
(2) 「建築設計標準」に関する最近の動向について
- 地方公共団体
- 関係省庁
- 施設整備等
(3) 建築物のバリアフリー化に向けた取組の方向性について
(4) 意見交換
文科省「学校施設におけるバリアフリー課の一層の推進について」
昨年12月に発表された学校施設のバリアフリー化に関する実態調査が報告されました。2020年のバリアフリー法改正で公立小中学校はバリアフリー整備が義務化され、文科省では2021年から2025年度末までの5年間に緊急かつ集中的に整備を行うための整備目標を定めました。2020年に引き続き、今回2回目の調査が実施されました。調査結果は以下の通り。
- バリアフリートイレ:避難所に指定されているすべての学校に整備する。
校舎 70.4%(2025年度目標93%)屋内運動場 41.9%(2025年度目標98%) - スロープ等による段差解消:すべての学校に整備する。
校舎 門から建物前まで 82.2%(2025年度目標100%)、玄関から教室まで 61.1%(2025年度目標100%)屋内運動場 門から建物前まで 77.9%(2025年度目標100%)、玄関から教室まで 62.1%(2025年度目標100%) - エレベーター:要配慮児童生徒が在籍するすべての画稿に整備する。校舎 29%(2025年度目標 41%)屋内運動場 70.5%(2025年度目標76%)
いずれも前回調査よりは進展していますが、このペースでは2025年度までの目標に届きません。財政支援、技術支援、普及啓発に取り組みます。2022年12月26日(月)付で「学校施設のバリアフリー化の一層の推進について」という通知を出しました。内容は以下の通りです。
- バリアフリー法を踏まえ、既存施設 を含めて、所管する公立小中学校等施設のバリアフリー化を加速すること。公立小中学校等以外の学校 施設についても、バリアフリー化を着実かつ迅速に進めること。
- バリアフリー化に関する整備計画が未策定の学校設置者では、建築担当部局や防災担当部局など関係 部局と連携を図りながら策定を行うこと。また、計画的に整備を進めること。
- 令和3年度より、バリアフリー化のための改修事業について、国庫補助率を1/3から1/2に引き 上げた。令和4年度補正予算及び令和5年度当初予算案でも引き続き支援を行うので、緊急防災・減災 事業債(総務省所管)も活用し整備を行うこと。
- あらゆる機会を捉えて学校施設のバリアフリー化を図るとともに、施設全体のバリアフリー化を進め ること。その際には、建築物移動等円滑化基準を参考にすること。
- 既存不適格建築物における法令への対応が生じた場合は、過去の通知や事務連絡等も参考に、設計者 や特定行政庁に積極的に相談しつつ対応すること。
- 文部科学省ウェブサイト中に「学校施設のバリアフリー化の推進」の特設ページを開設したので、 バリアフリー化の検討や実施、また機運醸成等のために活用すること。
▽学校施設におけるバリアフリー化の一層の推進について(通知)(外部リンク:文部科学省)
地方公共団体の動向
- 条例でバリアフリー法に上乗せした基準を定めることができる「委任条例」が現在20の地方公共団体で策定されている(2022.10時点)。
○都道府県(14):岩手県、山形県、埼玉県、東京都、神奈川県、石川県、長野県、京都府、大阪府、兵庫県、鳥取県、徳島県、大分県、熊本県
○市区町村(6):東京都世田谷区、東京都練馬区、神奈川県横浜市、神奈川県川崎市、岐阜県高山市、京都府京都市 - 京都府では、劇場等の客席に関する基準を条例で義務化した(2席~10席まで)。2023年4月施行
- 東京都では、建築物バリアフリー条例を2019年に改正し、一般客室のバリアフリー整備を義務化した。これを本年度さらに見直す予定(浴室等の出入り口・浴室前の通路幅を引き上げる)。
施設整備等
- 客席・観覧席を有するスポーツ施設のバリアフリー化の現状に関する調査
・2015年に『建築設計標準(劇場、競技場等の客席・観覧席を有する施設に関する追補版)』を策定しており、この基準等への整備状況を確認するため、スポーツ施設を対象に実態調査を実施した。
・客席・観覧席(200席以上)を有するスポーツ施設(社会体育施設、民間体育施設)で、2012(平成24)年以降に供用を開始した施設(これから供用開始予定の施設を含む)
・車いす使用者用客席は、2017年以降に限ると、5%以上設置されている施設の割合が8割を超えるが、同伴者席を設けているのは40%。
・車いす使用者用席のサイトラインを確保している施設は2017年以降では56%。 - 小規模店舗のバリアフリー化の現状に関する調査
・2021年に小規模店舗のガイドラインを策定したので、どのくらい守られているが調査。2022年8月から3ヶ月間に確認済証を交付した500㎡未満の店舗を調べた。
・調査対象基準全てに対応している建築物の割合は45%。飲食店は25-45%。(ただし、店舗内の椅子が固定椅子か可動式かは把握できていないので、実際はもっと低いと思われる)
建築物バリアフリー化に向けた今後の方向性について(大注目!)
今回最大の注目は、国交省が法令基準(義務基準、誘導基準)の見直しを発表したことです。以下3点です。
- 車いす使用者便房(バリアフリートイレ)現在1以上 ➡ 引き上げへ
- 車いす使用者駐車施設 現在1以上 ➡ 引き上げへ
- 車いす使用者用客席(劇場・観覧場等) 現在基準なし ➡ 策定へ
この3点はこれまでDPIが長年にわたって要望してきたことで、ようやく見直しが始まることになりました。特に車いす使用者用客席は、東京2020オリンピック・パラリンピックの会場整備で、世界基準の0.5%以上が実現しましたが、バリアフリー法の義務基準には反映されておりませんでした。
そのため、東京オリパラ後に整備された各地の新築のスタジアムが、不十分な整備にとどまるものが続出し、東京オリパラのレガシーが引き継がれていないという問題が起きていました。ですので、この見直しは大いに期待しております。
具体的には、2023年度にフォローアップ会議にワーキンググループを設置し、見直しの方向性を取りまとめるということです。 上記の3点の他にも、小規模店舗バリアフリーの義務基準化も不可欠な課題であり、こちらも検討するように、引き続き働きかけを行いたいと思います。
▽高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準に関するフォローアップ会議(第4回の資料もダウンロードできます)(外部リンク:国土交通省)
報告:佐藤聡(事務局長)
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