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4.13衆議院国土交通委員会の傍聴報告

2018年04月16日 バリアフリー

4月13日(金)、9時~12時まで衆議院の国土交通委員会が開催され、バリアフリー法改正案の参考人質疑が行われました。

三星昭宏(近畿大学名誉教授)参考人からは基本構想づくりにかかわってきた経験から現行バリアフリー法の課題について、当事者が参画した継続協議会が作られている志のある自治体がある一方で、全国的には計画の策定率そのものが低いといった点を挙げました。また志が低い自治体も多く、当事者が参画した継続協議会の定着が必要だと述べ、今回のバリアフリー法改正案ではマスタープランの導入など、一定の評価とともに国際的観点からよりレベルの高いバリアフリー推進の必要性についても言及されました。

竹下義樹(社会福祉法人日本盲人会連合会長)参考人は、理念規定が設けられ、ハード面に加え心のバリアフリーが反映されたこと、当事者評価の仕組みが入ったこと、事業者によるバリアフリー化の計画策定を盛り込んだこと、市町村による移動円滑化促進方針や基本構想が努力義務とはいえ義務付けられたことについて評価する一方で、今回の法改正で実際に移動の連続性が担保されるのか、地域間格差の解消が進むのか、ホームドアの設置や小規模事業所におけるバリアフリー化などを課題として挙げました。

佐藤聡(DPI日本会議事務局長)参考人は評価点として、理念に社会モデルの考え方が盛り込まれたこと、当事者参画による評価会議の仕組みが設けられたことを挙げました。一方で課題として、移動の権利、移動の連続性の確保を法律に明記すること、障害者の定義を障害者基本法や差別解消法と同じにすること、差別解消法の環境整備をバリアフリー法に位置付けること、小規模店舗のバリアフリー化のための数値目標や捕捉率の調査が必要なこと、学校のバリアフリー化、地域間格差の是正、転落防止のためのホームドアの設置促進やホームと車両の隙間と段差の解消を挙げました。

森すぐる(株式会社社会構想研究所代表取締役 交通権学会理事)参考人も社会的障壁の除去が盛り込まれた理念規定を評価していました。その上で、外国人や女性も含めたすべての人、ひとりひとりにとっての利便性が確保される必要があると指摘しました。

その後の質疑では、移動の権利について自民党の森山議員や公明党の赤羽議員、立憲民主党の道下議員から参考人へ質問がされましたが、佐藤参考人が法律できちんと明文化すべきと答えたほか、その他の参考人も移動の権利はすでにもっているもの、という視点や国際的な整合性から今後、どう法律で位置づけていくかは課題であるとする意見が出されました。

この日の質疑では、特に地域間格差の解消やバリアフリーをより一層進めていくための方策として、今回の法改正で盛り込まれた評価会議や基本構想の努力義務化、マスタープランなど計画策定について質問が多く出されました。また、バリアフリー整備のための財源確保についても質問が出されました。

これらの点について各委員からは、当事者参画と多様な構成員による協議会の設置、分科会やWGでの検討を通じて実行力のあるものにしていく必要があるといった趣旨の意見が多く出されました。財源については助成制度の充実が必要とする意見の他、そもそも公共交通に対する国の税金投入が先進国の中で著しく低いという根本的な問題について考え直す必要があるといった意見もありました。

その他、多くの質問や意見が出ていましたが、詳細は国会のインターネット中継のアーカイブをご覧ください。

■感想■
今回招致された参考人や質問に立った議員の中に関西にゆかりのある方がおおかったためか、関西地域の先駆的な取り組みを踏まえた質問や意見提起が多かったことが印象的でした。地名や関西の取り組みなど、なじみの薄い自分にとっては初めて知ることも多くありましたが、地域で先駆的に取り組まれている良い事例をどう国の制度政策に反映させていくことができるのか、という点がバリアフリー法改正の議論や改正後の取り組みとして重要になってくるように感じました。
また、仮にスピード感の違いはあったとしても、国土交通委員会の議員の方々が本当に真剣にバリアフリーを進めていこうという思いをもって尽力されている様子が参考人への質問の端々から感じることもできました。当事者として自分たちの声を届けることの重要性と責任を肌で感じた傍聴となりました。

(事務局次長 白井誠一朗)

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