建物のバリアフリーを推進する検討会が立ち上がりました!
(第1回高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準に関するフォローアップ会議)
2021年10月05日 バリアフリー
我が国の建物のバリアフリー整備は非常に遅れており、バリアフリー分野における最大の課題です。バリアフリー整備を義務付けられている建築物は、床面積2000㎡以上の特別特定建築物しかありません。
飲食店や物販店でみればデパートやショッピングセンターくらいしかなく、私たちが日常的に利用する小規模店舗はバリアフリー整備の義務がありません。
アメリカではADAという法律で規模に関係なく障害者も差別なく利用できることを求めているため、小規模なお店もほとんどバリアフリー化されており、自由に利用でき、広いトイレもどこにでもあるのです。
日本は2000年に交通バリアフリー法が出来た後、公共交通機関のバリアフリーは大きく進展しましたが、建物は1994年のハートビル法以来ほとんど進展がないのが実態です。
建物のバリアフリー整備基準は「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(以下、「建築設計標準」という。)」があります。残念ながら、義務基準ではなく、ガイドライン(望ましい整備)のため、この基準を守るかどうかは事業主次第です。
建物と言っても、オフィスビル、劇場、スタジアム、デパートなどの店舗、小規模な店舗等様々です。当初は建築設計標準に盛り込まれたものは少なかったのですが、2015年には劇場やスタジアムの客席のバリアフリー整備基準が追加され、2019年にはホテルのバリアフリー整備水準の見直し、今年の3月には小規模店舗のバリアフリー基準が追加されるなど、徐々に拡充されています。
今回設置されたフォローアップ会議は、定期的な場として建築物のバリアフリーの取組状況、調査、課題を共有して意見交換をし、建築設計標準も随時見直していくというものです。
高齢者・障害者団体(10)、事業者団体(14)、建築関係団体(6)、学識経験者(5)、地方公共団体(4)で構成され、オブザーバーとして関係省庁も参加します。 この日は金融庁、文科省、スポーツ庁、厚労省、農水省、中小企業庁、国交省、国土技術総合研究所が参加されていました。
議事と主な内容
(1) 本会議の設置について
(2) バリアフリー法の概要について
(3) 国土交通省住宅局におけるバリアフリーに関する取組
- 建築設計標準の改正経緯(1982年~現在)、改正概要説明
(4) 地方公共団体におけるバリアフリー化に関する条例等の取組
- バリアフリー法第14条第3項に基づく条例を制定している地方公共団体は計20団体 (9時点)
- 都道府県(14):岩手県、山形県、埼玉県、東京都、神奈川県、石川県、長野県、京都府、大阪府、兵庫県、鳥取県、徳島県、大分県、熊本県
- 市区町村(6):東京都世田谷区、東京都練馬区、神奈川県横浜市、神奈川県川崎市、岐阜県高山市、京都府京都市
(5) 関係省庁、地方公共団体及び業界団体におけるバリアフリーに関する取組
①文部科学省 学校施設のバリアフリー化推進指針の改定、2025年までの国の目標、
エレベーターの範囲の説明資料、学校施設のバリアフリー化にかかる学校設置者への要請。
②鳥取県福祉のまちづくり条例
③全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会「旅館・ホテルのバリアフリー化促進マニュアル」
(6) 建築物のバリアフリー化に関する好事例・先進事例の共有
- SAGAサンライズパーク(SAGAアリーナ)
(7) フォローアップ会議における今後の議論の方向性(案)
- 建築設計標準等の点検。優良事例や先進事例を収集し、追加すべき事項を充実。
- 高齢者・障害者のニーズを踏まえバリアフリー化に向けて新たに盛り込むべき事項等を共有。
- 建築設計標準の周知。理解促進。
(8) 意見交換
印象に残ったのはSAGAアリーナです。Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインを参考にバリアフリー整備が設計されており、特にサイトラインの確保は、車椅子の眼高90cm,前席の人の身長180cmを想定しており、Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインより上です。
車椅子スペース100席(1%以上)、付加アメニティ席の確保、車椅子アスリートの利用も想定した控室の整備などがされており、とても良い整備内容でした。
DPIからの意見
①新築の店舗がどのくらい小規模店舗のガイドラインを遵守しているか調査してほしい。
4月から小規模店舗のガイドラインが施行された。どのくらいの事業者が守っているか実態調査をしてほしい。令和元年8には「2,000㎡未満の店舗・飲食店等のバリアフリー化の実態把握に関する調査結果」をしていただいたので、これと比較調査もできて有効である。
②スタジアムのバリアフリー義務基準への引き上げ
東京オリパラで実現した当事者参画と、世界基準のバリアフリー整備ガイドライン「TOKYO2020アクセシビリティ・ガイドライン」の義務基準化が必要。
8月に公表された2025年大阪万博のユニバーサルデザインガイドラインは、策定段階に障害者団体が入っておらず意見反映できていない。内容もTOKYO2020アクセシビリティ・ガイドラインを踏まえておらず、大きく後退している。
東京大会で実現したことがレガシーとして引き継がれていない。このようなことを繰り返さないためには義務化が不可欠。
今後
次回は、年明けの1月か2月に第2回会議を開き、来年度以降は年間2回程度開催し、継続的に意見交換を行うということです。
日本のバリアフリー分野における最大の課題である建物のバリアフリー整備を進めるために、非常に重要な会議になります。積極的な働きかけを続けていきたいと思います。
報告:佐藤 聡(事務局長)
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