第3回ユニバーサルデザイン2020評価会議が開かれました
2019年11月06日 バリアフリー
去る10月28日に第3回ユニバーサルデザイン2020評価会議(以下UD2020評価会議)が開かれました。
政府は東京2020オリンピック・パラリンピックを機に、日本全体をユニバーサル化するために、ユニバーサルデザイン2020行動計画を2017年に策定しました。
それに基づき、障害者団体等を構成員としたUD2020評価会議を開催しています。
今回の議題は、UD2020行動計画の施策の改善状況について報告がありました。
概要は下記の通りです。
新しい取り組みなどが出てきており、注目すべきものにはアンダーラインを引いています。
今回特に注目すべきものは、電話リレーサービスの制度化です。
聴覚障害者等が電話を利用できるようにする仕組みですが、すでに世界25カ国で実施されており、G7では日本だけが実施していませんでした。
制度化が長年求められており、これは朗報です。
1. 共生社会ホストタウンのレガシー化
- 「共生社会ホストタウン」により、パラリンピック交流を契機とした共生社会の取組の輪を広げる。特に、他のモデルとなる自治体を「先導的共生社会ホストタウン」とする認定制度を本年5月創設。
- 共生社会ホストタウンの取組が、東京大会のレガシーになるよう、バリアフリー法のマスタープラン・基本構想制度における心のバリアフリーの取組の強化を検討中。
2. ホテル飲食店のバリアフリー化
宿泊施設や施設内飲食店のバリアフリー改修を補助金で支援 ⬅ 注目!
⇒ 「宿泊施設バリアフリー化促進事業」2018年度から実施。客室と共用部分(食堂含む)のバリアフリー改修に助成。1/2助成で最大500万円まで(2018年度)。2018年度は650件、2019年度は138件助成。主に旅館のバリアフリー整備が多いよう。年度ごとに件数の差が大きいのは、2018年度は小額な助成が多く、2019年度は本格的な改修で費用が高額なものが多いため。
- 宿泊施設のバリアフリー対応状況を官公庁HP等で発信予定。
- 関係者による「実行推進会議」を立ち上げ、おもてなしを行うムーブメントを形成。
- 一定規模以上のホテル又は旅館の建築等を行う場合、当該建築等を行う客室総数の1%以上のバリアフリー客室の整備を義務化(既存客室は補助金で支援)。東京都は一般客室についても一定水準のバリアフリー化を義務化。
3. 障害者割引の利用者利便向上
- 本年7月、一部交通事業者が障害者手帳に代わるスマートフォンによる電子的な本人確認手続きを導入。
- 公共交通機関においてマイナンバーカードを活用した電子的な本人確認手続きが可能となるよう技術基準を来年に策定予定。
- 昨年10月から航空会社において障害者割引対象に精神障害者を加えるよう、順次拡大。未導入交通事業者に対して導入を要請。
4. バリアフリーマップ等の整備・充実
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- バリアフリー整備ガイドラインを改訂し、鉄道駅のホームと車両の段差・隙間の目安等を明確化。
- 首都圏の主要駅から単独乗降しやすくなるようプラットフォームを順次整備 ⬅新しい情報で注目!
⇒2019年10月にガイドラインを改訂し、ホームと車両の段差と隙間の目安値を設けた(段差3cm☓隙間7cm)。今後はこの数値目標を目指して改修が始まるか注目。すでに東京メトロでは、銀座線(ホーム全体)、丸ノ内線(2号車と5号車のドア付近。未整備の駅あり)がホームの嵩上げを行っている。
- 単独乗降情報をマップ化し、年内の情報提供開始をめざす。⬅これも注目!
- 手話、文字による意思疎通を可能とする、「公共インフラとしての電話リレーサービス」の実現に向けて、関係者による会議体を設置して検討中。⬅ ついに実現!大注目!
5. 心のバリアフリーの拡大・向上
- 国家公務員向け研修において「障害の社会モデル」の理解を徹底するため、有識者の講義を取り入れるとともに、より効果的な研修の在り方を検証。新たに地方公務員向け研修も実施。
- 来年度より小学校において使用される新学習指導要領を踏まえた教科書について、採択を実施。
- 大学において、障害のある学生の修学についての先進的取組を他大学に展開。さらに、障害のある学生の就労支援を含む差オート強化を検討。
6. ユニバーサルデザインタクシー改善
- ユニバーサルデザインタクシーの多くを占める車種を改良し、車椅子の乗降時間を約3~4分に短縮。既販車も概ね改修済。スロープの耐荷重を300kgにする技術的検討。
- 国が車体補助を行う場合に、実車を用いた研修を義務化。
- ニーズに応じた円滑な配車を目指し、UDタクシーや福祉車両の配車体制の実証実験を予定。
- UDタクシーの普及を加速し、東京23区内の25%とする。
私からは、①TOKYO2020アクセシビリティ・ガイドラインで実現した世界基準のバリアフリー整備基準を日本のガイドラインに反映させる、②新国立競技場UD/WSで実現した初期段階からの当事者参画の仕組みをレガシーとして残していくようにモデル事業の実施を提案、③ホテルのバリアフリールームは、諸外国では3~5%義務化が一般的で、1%は低いので、運用を見て柔軟に見直しをしてほしい、④小規模店舗のバリアフリー化を進めるために、新規出店時に最低限のバリアフリー整備を義務化する、ということを発言させていただきました。
東京オリパラによりバリアフリー施策は大きく進展してきております。これからも、特に小規模店舗、学校、共同住宅等の建物関係の整備義務化を目指して働きかけを続けていきたいと思います。
佐藤 聡(事務局長)