【国際協力】DPI日本会議 総括所見の分析と行動計画⑦
2023年04月13日 国際協力/海外活動障害者権利条約の完全実施
DPIでは、昨年9月に国連障害者権利委員会から日本政府に出された総括所見を分析し、今後改正が必要な法制度についてまとめた「DPI日本会議総括所見の分析と行動計画」を策定しました。
今回は国際協力に関する「第32条 国際協力」の①総括所見と②懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)、③DPIの行動計画になります。
次回の建設的対話は2028年を予定しています。それまでに、総括所見で指摘された課題を1つでも多く改善できるように、取り組んで行きたいと思います。
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是非ご覧ください。
【第32条 国際協力】
総括所見(外務省仮訳)
67.国際協力機構の課題別指針「障害と開発」(2015年)に留意しつつ、委員会は国際協力事業において障害が完全には主流化されておらず、関連する戦略及び計画が、障害者団体との緊密な協議の上で障害の人権モデルに基づき策定されていないことを懸念する。
68.委員会は、以下を締約国に勧告する。
- 障害者団体との緊密な協議及び積極的な関与の下、持続可能な開発のための2030アジェンダの実施及び監視のあらゆる段階において、障害者の権利を主流化すること。
- アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)及びアジア太平洋の障害者の権利を実現する仁川(インチョン)戦略の実施のための協力を強化すること。
1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)
(1)懸念
- JICAの課題別指針「障害と開発」では、事業における障害の主流化への適用が不十分。(67)
- 障害の人権モデルのもと、障害者団体との密接な協議によって関連戦略やプログラムが策定されていない(67)
(2)勧告
- あらゆるレベルにおけるSDGsの実施と監視において、障害者の権利を主流化すること(68a)
- アジア・太平洋障害者の10年の推進に対する日本政府の支援(68b)
(3)DPIとしての評価
- ①障害の主流化に向けた具体的な仕組みの欠如、②権利条約・人権モデルの趣旨に合致した協力プログラム策定の必要性、③上記①②に対する障害者団体の参画、④「アジア・太平洋障害者の十年」推進への積極的支援、が盛り込まれたことは評価できる。
- 「障害者の参画」に係る問題点については明記されていない。障害を理由とした行動制限等の差別的取り扱いの撤廃、全事業を通じ合理的配慮の提供が徹底される仕組み作りを、障害者団体と協議のもと実現していくべきである。
67について
- JICA職員や青年海外協力隊の採用に関しては、まだ障害程度の軽いものが対象となり、また海外での勤務先は主に日本人スタッフが常駐しているプロジェクトであり、未だに障害者を弱い保護を必要とする者との意識が垣間見えるのが気になる。
- JICAの環境社会配慮ガイドラインでは、障害者等の社会的弱者の人権について特記されているが、障害者の人権モデルに即したものとするための仕組みにはふれていない。
- 2021年8月の「草の根技術協力事業に係る経理ガイドライン」では「業務従事者等の合理的配慮に係る経費の取扱い」(24)の中に障害を持つ該当業務従事者の航空券クラスのアップグレード、介助者の航空賃と日当・宿泊料、車いす用バンなどの特殊車両の借上げが認められた(いわゆる合理的配慮提供のための予算)のは高く評価し、今後、障害者の派遣が一層進むことを期待したい。
- 個別案件審査時の障害者配慮について、外務省ならびにJICAの円借款、無償資金協力、技術協力の事業、人間の安全保障やN連の基金での障害者の権利が順守されているとの確認の手順が全く見えてこないし、そこに障害者団体が関与しているかも不明である。
68aについて
- 政府が毎年12月末に発表する翌年のSDGs活動計画においては、権利条約実施上の重大な課題である脱施設化とインクルーシブ教育の誤った解釈での施策があげられているので、是正につとめていかねばならない。SDGsの実施と監視における障害者の権利の主流化と障害者団体の関与が勧告されたことは、SDGs実施基本方針での障害に関する障害者の人権モデルに関する施策がなかったことある。
68bについて
- 第一次、第二次までの十年は日本政府が全面的に協力し、成功に導いた。しかし現在は十年への関心が低く、会議に参加する政府代表の報告もおざなりであり、今までの貢献が忘れ去られようとしていることは残念である。
2.法律・制度・施策の改善ポイント
(1)障害者基本法の改正(67)
- 総括所見の観点もいれて必要であると思われるが、30条での協議する対象者を単に「関係団体」としているところを「障害当事者団体」とする。
- 障害の主流化を目指すために、案件形成の際もっと重度の障害を持つ者を被益者とすべきであり、JICAボランティアの派遣先が特別支援学校・学級、障害者施設、作業所が多く挙げられていることも是正する。
(2)権利条約とSDGsのリンク・連携(68a)
- 政府のSDGsでの障害に関する言及が少ないのは、権利条約とSDGsのリンク・連携が不十分であることにある。障害者基本法が両者と関係していることへの理解が必要である。まず基本法とSDGsの関係を明確にし、その中でSDGsにおいて特に推進に力をいれねばならない施策を、SDGsジャパンなどと共闘し求めていく。
(3)アジア・太平洋障害者の10年の推進に対する日本政府の支援(68b)
- 次の十年の決定は当事者団体を広く巻き込んで十分に検討したものではないので、今のところアジア太平洋地域での関心は高くない。インチョン戦略がそのまま使われるとしているので、外務省にいきさつや日本政府の賛否いずれの決定をしたのかなど、質問を行う。
(4)外務省の取り組み
- JICAのみでなく、外務省自体が障害者の権利に関し知見をもっていなければないのに、外務省は総括所見では取り上げられていない。外務省の職員としての採用を含む障害者の参加の推進と、外務省の出先機関にまで及ぶ合理的配慮の提供を確保させる。
総括所見を受けての行動計画
(1)短期 2022‐24年
- 2023年度に障害者政策委員会において、総括所見を受けた障害者基本法改正に関する議論
- 2024年度 障害者基本法改正
- 総括所見の32条に関する懸念と勧告に関し、JDF国際委員会を通して外務省およびJICAと協議を行う。
- 2023年からのアジア太平洋障害者の十年についてDPI日本会議内で理解を深め、十年が効果あるものとなるようにDPIアジア太平洋評議会に協力してESCAPに働きかける 。
- 2023年の韓国での世界会議に多くのメンバーが出席し、DPIの世界レベルでの再編に協力する
- 2023年4月に広島で開催されるG7サミットで障害が取り上げられるように、市民社会団体からなるC7委員会で意見を出していく。
- DPI日本会議のメンバーの国際会議・研修への参加を奨励し、必要に応じてツアーを組む。
(2)中期 2025-27年
- アフリカでの自立生活運動の発展に関するDPI日本会議の貢献を総括する。
- 政府の国際協力事業における障害の主流化の進展をモニタリングする。
- SDGsでの障害のメインストリーム化のため、イニシャティブを取り続ける。
(3)長期 2028‐30年
- 障害分野でのSDGs実施の評価を行う。
- SDGs後の開発戦略の作成に関与し、障害をアジェンダの一つとする。
以上