全ての人が希望と尊厳をもって
暮らせる社会へ

English FacebookTwitter

「障害者雇用率代行ビジネス」に対するDPI日本会議の見解~分離雇用でなく、インクルーシブな雇用が可能な社会を創るために~

2024年09月20日 要望・声明雇用労働、所得保障

職場の改善のイメージ

2024年9月20日

 

「障害者雇用率代行ビジネス」に対するDPI日本会議の見解~分離雇用でなく、
インクルーシブな雇用が可能な社会を創るために~

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議

議長 平野みどり

DPI(障害者インターナショナル)日本会議は、全国90の障害当事者団体から構成され、障害の種別を越えて障害のある人もない人も共に生きるインクルーシブな社会(共生社会)の実現に向けて運動を行っている。

現行の障害者雇用促進法は、一定比率の障害労働者の雇用を事業主に課す法定雇用率を定めている。障害者の雇用促進と安定雇用の確保のための施策は極めて重要であり、インクルーシブな社会を創るためにも必要不可欠なものである。

しかし、近年、事業主が障害者雇用率を満たすために別の事業者が障害者雇用を代行するという、「障害者雇用率代行ビジネス(以下、代行ビジネス)」が拡大しつつある。法定雇用率を満たすことのみに着目し、安易に「代行ビジネス」を利用する雇用主が増えている事態に危惧を感じ、以下、障害者施策の基本原則を確認し、「代行ビジネス」を利用する企業の見識に訴えると共に、政府に対しては施策上の対策を講じる必要性を訴える。

1. 障害者雇用の基本原則は、分離ではなく、インクルーシブな働き方を志向するもの

障害者を取巻く様々な課題への取組みは、以下の基本原則の下に展開されなければならない。

また、以下の国際的な諸規範がインクルーシブな雇用についての原則を提供しており、日本政府にはこれらを遵守する責務がある。

上記の原則に基づき、障害者雇用施策は、一般労働市場におけるインクルーシブな雇用環境を実現するための取り組み ―これには企業行動の変化も含まれる― として実施されるべきであり、適切な障害者雇用を推進するためには現行の雇用・福祉施策を見直す必要がある。

2.「代行ビジネス」の利用は雇用主責任の放棄と障害者を分離することを助長するものとみなされ得る

事業者による「代行ビジネス」の安易な利用は、障害者の継続的な分離と自社での勤務からの排除を容認し、自社におけるインクルーシブな職場環境づくりの努力を放棄する雇用形態である。

また、「代行ビジネス」の利用に際して生じる事業主負担が法定雇用率未達成で課せられる納付金を上回っていることは、当該事業主に対して、「そこまでしてでも職場に障害者を受け入れたくないのか」との疑念を生じさせ、障害者とともに働く職場環境をつくることを怠り、見た目の「法定雇用率の達成」のみを重視している差別的対応と我々には映っていることを、利用している事業主は自覚すべきである。

また障害者雇用のアウトソーシングである「代行ビジネス」では、本来は事業主の責務である職務評価やキャリア計画作成、その他の雇用管理等を行っていないこと、労働環境等の問題や安定した雇用が確保されていないなどの問題が存在していることなどが、DPIに寄せられた、以下のような、当事者(「代行ビジネス」に雇用されている障害者ら)の声から伺える:

「労働の意欲や喜びも感じることはできないだけではなく、現場で指導的な立場にある人々の多くが障害や合理的配慮に関する意識も極めて希薄である。」

「契約は1年更新で雇用期間に関する説明がないため、いつまでいられるか不安である。」

「雇用期間は5年間と限定されている。」

「定年まで働くことはできない。」

3. インクルーシブな障害者雇用をめざして

以上、「代行ビジネス」に対するDPI日本会議としての問題意識を明確にし、その廃止を求めるとともに、当面は、「代行ビジネス」の利用がこれ以上拡大されることがないよう、事業者においては利用の再考を求め、政府に対しては「代行ビジネス」を廃止し、インクルーシブな雇用をめざした全般的な施策の見直しを障害当事者・障害者団体・関係者の議論のもと進めることを求める。

以上

▽ワード版はこちら


私たちの活動へご支援をお願いします

賛助会員募集中です!

LINEで送る
Pocket

現在位置:ホーム > 新着情報 > 「障害者雇用率代行ビジネス」に対するDPI日本会議の見解~分離雇用でなく、インクルーシブな雇用が可能な社会を創るために~

ページトップへ