光菅和希君は世田谷で地域の学校へ、裁判の闘いは続きます
2020年05月07日 インクルーシブ教育
神奈川県川崎市の光菅和希(こうすげかずき)君の裁判は3月18日、一審で負けましたがこれからも裁判闘争は続きます。
そのような中で原告と弁護団から声明が出されました。
和希君の貴重な時間を無駄にできないとの判断で、川崎市から東京の世田谷区に引っ越しをされて、通常学級籍を得て、新たな生活を始めたとのことです。
川一つ隔ててなんという違いでしょう。
私たちDPI日本会議は、光菅さんご一家が引っ越しをせざるを得なかった状況に追い込んだ横浜地裁判決に改めて大きな怒りを表明するとともに、和希君とお父さん、お母さん、弁護団の決断を強く支持し、今後とも闘いを支援します。
▽下記、光菅かずきくんの原告(ご両親)からの声明
応援してくださる皆様へ
本日は、判決の日(3月18日)以降、私たちが考え、決断したことをお知らせしたいと思います。
裁判の判決内容については、怒り、悔しさ、落胆しかありませんでした。判決内容は「酷い」の一言で、インクルーシブ教育を曲解している川崎市教育委員会及び神奈川県教育委員会を正すどころか、むしろ、それをはるかに上回るほどの無理解、時代錯誤といえる驚愕すべき内容でした。
和希は3年生になる。これ以上待たせられない。無駄な時間は過ごさせられない。申し訳ない気持ちでいっぱいでした。私達は川崎市に隣接する東京都世田谷区に引っ越しすることを決めました。18年間住んだ家を、和希が「ただいま」と言って安心して帰ってくる自分の家を離れることになりました。
学童で仲良く遊んだ大好きな友達や和希をみんなと同じように地域の子供として受け入れてくれた優しいスタッフの方達とも離れることになり、失うものは大きいです。
それでも得たものはありました。インクルーシブを求めて、私達に寄り添ってくれた弁護団の先生方。和希を、私達を理解し、どうしたらいいか一緒に考え、裁判所にもいつも駆けつけ応援し支えてくださった沢山の皆様方と出会えたこと、私達にとってどれだけ心強かったか。
本当に感謝しております。ありがとうございます。
裁判については、既に、お知らせしているとおり控訴しています。すでに世田谷区立小学校に転校していますので、川崎市立小学校への就学の必要はなくなりました。しかし、私たちは、川崎市や神奈川県の違法行為を許すことは、決してできません。
世田谷区では、私たちの希望通り、和希は小学校に在籍できました。ですから、川崎市及び神奈川県の違法性は、より明らかになりました。和希に対する特別支援学校への指定措置が違法であること、つまり、障害を理由にした差別であること、これに加えて、このように長い時間和希を待たせたことに対する賠償を求める闘いを続けることにしました。
これまで応援をしてくださったみなさまに、いち早く、この状況をお知らせいたします。
そして、大変あつかましいお願いになりますが、どうか私たちの決断をご理解くださり、引き続き応援をしてくださるようよろしくお願い致します
2020年5月6日
光菅 伸治
光菅 悦子
▽下記、弁護団からの声明
医療的ケア児が地域の小学校で学ぶために
―特別支援学校への強制就学決定の取消し等を求める訴訟
令和2年5月6日
光菅和希くん(平成23年11月14日生)は、人工呼吸委による医療的ケアを必要としているが、幼稚園に通園し、同世代の障害のない子どもたちと共に成長していた。
和希くんの両親は、和希くんが幼稚園で同世代の子どもたちと共に成長していく姿を目の当たりにし、地域の小学校に通わせたいという希望を強く抱くようになり、平成29年7月以降、川崎市教育委員会に対し、地域の小学校への就学の希望を伝えてきた。
しかし、川崎市教育委員会は、当初から、和希くんは特別支援学校適と決めつけ、両親に対し、地域の小学校に就学するために必要な情報を提供せず、また、和希くんが地域の小学校へ就学するために必要な合理的配慮の検討を一切行わないまま、平成30年3月25日、和希くんについて特別支援学校適と判断し、神奈川県教育委員会へ学齢簿を送付し、同教育委員会は、同月28日、和希くんについて、特別支援学校への就学通知を行った(本件処分)。
和希くんが、地域の学校で障害のない子どもたちと共に学ぶことは、和希くんにとって奪うことのできない基本的人権である。また保護者の子どもに対する教育についての判断は最大限尊重されなければならない。
これらの権利を、和希くんの障害を理由に、合理的配慮の検討もせずに奪うことは、障害者差別解消法が禁止する差別である。障害のある子もない子も共に学ぶことはインクルーシブ教育として保障されなければならず、障害を理由に同世代の子どもたちから分離し、小学校から排除することは障害者差別なのである。
平成30年7月11日、和希くんと両親は、川崎市及び神奈川県に対し、本件処分の取消し及び小学校への就学決定の義務付けを求め、横浜地方裁判所に提訴した。
しかし、横浜地方裁判所は、令和2年3月18日、本件処分の違法性を認めず、川崎市教育委員会の不当判断や怠慢を容認する判決を下した(本件判決)。本件処分さえなければ、和希くんは今春から小学3年生になっているはずであった。
にもかかわらず、横浜地裁の不当判決によって、和希くんは地域の同世代の子どもたちから分離され続け、共に学ぶ機会を奪われ続けることとなった。令和2年3月23日、和希くんと両親は、本件判決を不服として、東京高等裁判所に控訴した。
和希くんが地域で同世代の子どもたちと共に学ぶことは、まさに、そのかけがえのない成長期に保障されなければならない。和希くんと両親は、待つことのできない権利を実現するべく、川崎市の隣接地域である東京都世田谷区へ居を移し、ここで改めて地域の小学校への就学を求めた。
世田谷区では、保護者の意向に反する就学強制は行われていないからである。現在、和希くんは世田谷区立小学校3年1組に在籍となり、コロナウイルスによる全校休校のため、未だ通学はできていないが、近いうちに必ず通学できる見通しである。
全国には人工呼吸器を使う子どもたちが地域の学校に就学している例は多々ある。なぜ世田谷区でできることが川崎市ではできないのか。地域の小学校への就学を実現するためには川崎市から転居せざるをえないこと自体が、本件処分及び本件判決の不当性を如実に示している。
和希くんは、本件処分により失われた2年間の小学校生活を取り戻すことはできない。同世代の子どもたちとの触れ合いや成長の機会を奪われた被害の大きさは計り知れない。
和希くんと両親は、控訴審において、本件判決の不当性をただすのみならず、本件処分の取消し及び小学校への就学先通知の義務付けに替えて、本件処分によって被った甚大な被害について、川崎市及び神奈川県に賠償を求め、その責任を問うこととした。
今後も、和希くん、両親、弁護団は、和希君を応援してくれている全国のインクルーシブ教育を求める人々と共に、一丸となって、インクルーシブ教育の実現を目指して闘い続ける所存である。
和希君ら原告団弁護人一同
弁護士 大 谷 恭 子
同 藤 岡 毅
同 樋 口 裕 子
同 柳 原 由 以
同 向 川 順 平
同 前 川 健
同 河 邊 優 子
同 松 田 峻
【弁護団連絡先】
弁護士 向 川 純 平
〒231-8873 横浜市中区相生町1-15第2東商ビル7階
(TEL)045-662-2226(FAX)045-662-6578