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「こんな経験はありませんか?あきらめていませんか?」
障害を理由とした欠格条項にかかわる相談キャンペーンの結果報告書を公開します(9月27日—10月3日実施)

2021年11月30日 欠格条項をなくす

欠格条項により悩んでいる人達
報道や、実行委の内外からの広報案内のご協力があって、期間中(2021年9月27日—10月3日実施)に30名からご連絡をいただきました。その過半数は雇用と運転免許に関することで、生活に直結する深刻さがうかがえるものでした。生の声から、欠格条項が残され増大していることの弊害と理不尽さ、こうむっている不利益が明らかになりました。

ご相談の内容からは、公的機関においてさえ、2001年に障害を理由とする欠格条項が見直されたことも、その後に残されている相対的欠格条項の意味内容も、2019年の成年被後見人等に対する欠格条項の削除も、よく認識されていない状況が見られます。

そのような中で、今回は、問題の発生からまもない人や、間近に心配なことがある人に、有効な助言や情報提供ができました。また、2年後に国家試験受験予定の学生などと、将来にむけたつながりができました。

本年は、障害者差別解消法の改正法案が成立し、国連障害者権利条約の対日審査も進行中です。現行制度の周知と運用に関する課題及び、残されている欠格条項の根本からの見直しと法改正について、いただいた相談もふまえながら、検討と取り組みを続けます。これからもよろしくお願いいたします。

▽報告書全文は、こちらからダウンロードいただけます(PDF)

▽ワード版はこちら

寄せられたご相談(一部)

【相談内容①】発達障害 女性

本人は大学生で発達障害による書字障害がある。大学では試験等にPC使用や時間延長の配慮を得ている。建築士試験では一次試験での時間延長、PC回答及び、二次試験でCAD使用が認められるかどうか。

【相手方】国、民間

【対応内容】

実際の業務は PC や CADで行われており、試験要綱の「受験特別措置希望有無」の選択肢にも、想定が身体障害となってはいるが PC 等がある。試験実施団体に合理的配慮の提供を要望していくことで CAD 使用等も可能ではないかと伝えた。

【問題整理】

建築士法の欠格条項が背景にあり、試験における合理的配慮の想定及び対話を通じての実施の課題がある。


【相談内容②】聴覚障害 男性

1 種普通免許で毎日運転している。新たな仕事のために 2種免許をとろうとしていて公安委員会に相談したら、「補聴器なしで 90db のクラクション音を 10m の距離から聞こえない場合は新たに 2 種免許を付与できないし、すでにある普通免許も取消になる」と言われたので弁護士に相談し、その弁護士も公安委員会の説明はおかしいとの見解だったが、不安があるので連絡した。

【相手方】公安委員会

【対応内容】

正確な情報及び、聴覚障害があるバス運転手などの先例のあることを伝えた。

【問題整理】

公安委員会が、聴覚障害があると免許を一切交付できないかのような、誤った認識をもっている。


【相談内容③】精神障害 女性

ゴールド免許だったが、精神科通院中の 2016 年に、免許更新時期を迎えた際、(以前にはなかった)病気の報告を求められた。

精神科通院を伝えるべきか福祉課にも相談した。「大丈夫だから、伝えて下さい」と言われた。通院歴を伝えたところ、そのまま免許を失うことになった。公安委員会からは「あなたから話を聞いても結論は同じです」と言われ聴聞も行われなかった。

異議申立てをしても結論は変わらないと言われた。運転免許を失ったままで今後の生活も不安である。せめてものこととして、運転経歴証明書を発行してほしいが、今からでも可能だろうか。

【相手方】公安委員会

【対応内容】

チームで共有して何らかの答えを返させていただくと伝えた。その後、ご本人との連絡を継続している。

【問題整理】

道路交通法改定(2013 年成立、2014年施行)に伴い、公安委員会は「質問票」で一定の病気の症状に関する質問ができることになり、「質問に虚偽の回答をした」場合の罰則が設けられた。

その後の時期に、相談者は通院歴を伝えて免許を失い、重要な情報提供も受けられずに運転経歴証明書さえ交付されなかった。運転経歴証明書は、現行制度では、運転免許を自主返納した場合に限られている。


【相談内容④】精神障害 男性

服薬で寛解しており仕事に支障はない。勤務先の毒物劇物取扱責任者が退職するに伴い、毒物劇物取扱者の資格をもつ自分に就任の打診がきた。相対的欠格条項があることから、主治医が消極的な反応を示している。また、勤務先に知られてしまうことも心配。

【対応内容】

毒物劇物取扱責任者には相対的欠格条項があるが,業務遂行に問題なければ就任できる。登録の際に診断書が必要なので,医師にうまく診断書を書いてもらう。勤務先に知られてしまうことについては避けられないが話してみてはどうか。今まで勤務先に話していなかったこと自体は,問題ない。

【問題整理】

毒物劇物取扱法に相対的欠格条項がある問題のうえに、医師が相対的欠格条項を理解していないことの問題が大きい。


【相談内容⑤】肢体不自由 男性

障害者雇用促進法の職場介助者制度は、両上肢機能障害 2 級以上かつ両下肢機能障害 2 級以上でなければ(自分は該当しないので)受けることができない。今後働く人たちのために制度の改正を。

【相手方】国

【対応内容】

情報提供に感謝し今後の活動に役立てることを伝えた。


【相談内容⑥】精神障害 男性

成年後見欠格条項削除法の改正後、施行前に、警備業の面接を受けて、採用が決まる寸前で、成年被後見人、被保佐人ではないことを証明する書類を求められた。被保佐人ゆえに採用を拒否された。

公務員試験も受ける予定だが、今後も、被保佐人ゆえに、同じようなことにならないか、強く懸念している。また、今年(2021 年)に警備業に就職して受けた研修では、教官が、成年被後見人・被保佐人は警備員になれない旨のことを発言していて、精神障害者に対する差別的な言葉も用いられた。

【対応内容】

被保佐人であることを理由に不採用とすることは、各種の警備業も公務員も、2019 年に施行された改正法に反する。書類手続きには、警備業は破産経験がないことの確認が、公務員は旧民法の準禁治産者(浪費者)に該当しないことの確認が含まれる。

警備業の研修で今年もまだ旧法そのままの認識が述べられている問題をふまえ、教官になるような人々に対する研修をはじめ、既存のマニュアル類、募集や受験の案内、提出書類の定め等の点検が必要。

【問題整理】

成年後見制度の利用者であることを理由に門前払いしてきた欠格条項自体が、弊害でしかなかったことが、示されている経験でもあ
る。法律条文からは欠格条項が削除されても、関係する官庁職員や研修教官のような指導的な立場の人々の差別偏見を除去する努力の継続が必要である。


【相談内容⑦】障害種別不明 男性

電波法 42 条 3 号「著しく心身に欠陥があつて無線従事者たるに適しない者」に対して無線従事者の免許を与えないことができるという条文があるが、これは問題ではないか。

【対応内容】

情報提供に感謝を伝えた。


各種の制度のありかた

相談内容にあるように、各種の制度の利用について、障害者手帳の有無や障害程度で線引きがされている状況には、医学モデルが色濃いことが示されている。

必要とされているのは、医師の診断で線引きし障害者手帳の有無や障害程度で門前払いすることではなく、障害や疾患のある人々の自立生活、社会生活活動を、個々人のニーズに応じて個別にも、また全体としても、支援する法制度である。

障害を理由とした欠格条項が多数存続し増大さえしている問題とあわせて、障害者権利条約批准国として全くふさわしくない現状を、変えていく必要がある。

欠格条項のある法令数の推移

▽報告書全文は、こちらからダウンロードいただけます(PDF)

▽ワード版はこちら


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