【DPIビジョン2030】
2030年までのビジョンと中期行動計画を策定しました
2021年04月07日 障害者権利条約の完全実施
「DPIビジョン2030」は各分野(地域生活、アクセシビリティ、権利擁護、教育、雇用労働、所得保障、障害女性、国際協力、優生思想、尊厳生)にの取り組みついて、2030年までのビジョン及び中長期行動計画の取り組みをまとめています。
2030年までの10年間に私達を取り巻く環境は、よりも早く、大きく変化していくことが予想されます。テクノロジーの進化、政治、経済状況の変化、生活の変化など、どんなに時代が変わろうとも、全ての人が尊厳を持ち、希望をもって暮らせる社会を創っていかなければいけません。そういう強い想いと決意が、このビジョンには込められています。
優生思想をむき出しにした2016年の相模原障害者殺傷事件では、重度障害のある仲間たちが殺戮されました。そして瞬く間に世界中で蔓延している新型コロナウィルス禍においては、命の選別が実際に行われようとしています。今、多くの障害者の命が危機にさらされています。
このような時代だからこそ、私たちはさらに連帯を強めて、活動を継続していかなければいけません。このビジョンを達成するためには、みなさんの力が必要です。
私たちの活動へのご理解と応援をどうぞよろしくお願いいたします。
「全ての人が希望と尊厳をもって、ともに育ち、学び、働き、暮らせるインクルーシブな社会を創る」ために。
議長 平野みどり
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DPI全体のビジョン(活動している目的、実現したい社会)
『障害者の権利の実現を目指す運動を通して、全ての人が希望と尊厳をもって、ともに育ち、学び、働き、暮らせるインクルーシブな社会を創る~障害者権利条約の完全実施へ~』
1.地域生活部会のビジョン
脱施設及び社会的入院解消を進め、どのような障害があっても、どんなに障害が重くても、必要な支援を得て、障害のない人と平等に地域で共に暮らせるインクルーシブな社会を創る
◎2030年までに実現したいビジョン
制度の谷間を解消し、障害の程度や種別にかかわらず、すべての障害者が地域で自立した生活を送る権利の保障と、その実現のための脱施設の制度化およびパーソナルアシスタンスを含む個別生活支援の制度を確立する。
〇2023年、2025年、2030年までに達成したい目標、行動計画
【2023年】
目標1.シームレスなPA制度の確立→障害者総合支援法の重度訪問介護に関する告示を改正 等
【2025年】
目標2.脱施設の制度化→障害者総合支援法を改正、または脱施設・地域基盤整備の立法化、地域移行・地域基盤整備10ヵ年戦略をたてさせる 等
目標3.障害者・児の介護職が求職人気NO.1に!→障害者の自立生活の魅力を発信 等
【2030年】
目標4.制度の谷間の解消→機能障害の程度や種類による福祉サービス利用の制限をなくす 等
2.アクセシビリティ部会(バリアフリー、情報保障)のビジョン
障害者の移動の権利と情報コミュニケーションの保障を実現し、分け隔てなく移動・利用でき、店舗や建物に入れ、文化芸術スポーツも楽しめる社会を創る
◎2030年までに実現したいビジョン
① 障害者の移動の権利と環境整備の推進を法制度に確立する。
② 建物のバリアフリー整備を義務化し、誰もが利用できるバリアフリー整備を推進する。
③ 全ての公共交通機関を、誰もが、快適に利用できるバリアフリー整備を実現する。
④ 誰一人取り残されないよう、情報コミュニケーション保障に関する環境整備を推進する
〇2023年、2025年、2030年までに達成したい目標、行動計画
(1)法制度改正
① 障害者基本法とバリアフリー法に、移動の権利と社会的障壁の除去のための環境整備の推進を明記
② 情報コミュニケーション法と手話言語法の制定の推進
(2)建物
① 店舗のバリアフリー化→バリアフリー法改正し、店舗のバリアフリー化を盛り込み、基準適合義務を課す 等
② 学校のバリアフリー化→学校のバリアフリー整備が進むように、数値目標と実施計画を策定する 等
③ 共同住宅のバリアフリー化→新築・大規模改修時にバリアフリー整備を義務付け 等
④ ホテルのバリアフリー化→バリアフリールームの設置比率を3~5%に引き上げる 等
⑤ 歴史的建造物のバリアフリー化→バリアフリー法の対象とし、バリアフリー整備を義務付ける 等
(3)公共交通機関
① 空港アクセスバス・長距離バス・定期観光バス→バリアフリー車両購入費用助成制度を拡充 等
② UDタクシー→車いすユーザーの乗車拒否を撲滅する 等
③ 鉄道(ホーム環境の整備、無人駅)→無人駅のバリアフリー整備の基準を策定する 等
④ 航空機→障害者の航空機利用の課題を整理する 等
⑤ 地方のバリアフリー整備→2021年からの基本方針に地方のバリアフリー整備に関する項目を立てる 等
(4)情報アクセシビリティ
情報提供やコミュニケーションに際して誰一人取り残されないよう、情報保障に関する環境整備を進め、政策提言を行っていく。また情報アクセシビリティ、公共調達等の聴覚障害、視覚障害を含めたアクセシビリティの理解を深めるために、学習会を行う。
3.権利擁護部会のビジョン
脱施設及び社会的入院解消を進め、障害を理由とする差別や虐待がない社会を創る
◎2030年までに実現したいビジョン
障害者権利委員会からの総括所見に基づき、障害者の権利保障確立のための障害者基本法をはじめ、必要な関係法令の改正および新法制定を行う。特に、長期入所、社会的入院は重大な人権侵害であることを踏まえて、脱施設及び社会入院解消に向けた制度化を確立させる。さらに、代理決定の仕組みである成年後見制度から自己決定支援制度への転換を進める。
〇2023年、2025年、2030年までに達成したい目標、行動計画
【2023年】
目標1.差別解消法改正し「差別の定義」「民間事業者における合理的配慮の義務化」等、盛り込む
目標2.障害者基本法改正し、「可能な限り」を削除、「差別、合理的配慮の定義」を明記する 等
目標3.障害者虐待防止法改正し、「虐待や障害者の権利に関しての第三者機関」設置 等
【2025年】
目標4.障害者地域生活基盤整備法(仮)の制定。入所施設や長期入院者の地域移行を促進する
【2030年】
目標5.障害者基本法、差別解消法、虐待防止法の3法を中心に、法改正の準備を進める
目標6.当事者を中心に運営される相談監視機関を全国に設置。社会的入院の解消等、進める
目標7.成年後見制度廃止を含めた抜本的な制度の見直しを行い、自己決定支援制度を確立する
4.教育部会のビジョン
障害のある人が充分な支援と環境整備等の配慮を得て、障害のない人と同じように、同じ教室で学ぶインクルーシブ教育を実現する
◎2030年までに実現したいビジョン
障害者権利委員会からの総括所見に基づき、障害者基本法第16条の改正行う。さらに地域の学校でのインクルーシブ教育を進めるため、就学の仕組みや教師の配置数等、具体的な教育関係法令の改正を行い、すべての障害のある児童生徒が充分な支援と配慮を受け、原則、地域の学校の通常学級で学べるようにする。
〇2023年、2025年、2030年までに達成したい目標、行動計画
【2023年】
目標1.障害者基本法改正、インクルーシブ教育(手話を言語とする教育の確立を含む)推進
【2025年】
目標2.特別支援学校と普通学校における就学奨励費の格差是正を実現する
目標3.改正バリアフリー法を活用し、通常学校のバリアフリー化を進める
目標4.学校教育法施行令5条改正し、地域の通常学級への就学を原則、学籍一元化を実現する
【2030年】
目標5.学校教育法を改正し、特別支援教育の目的規定を社会モデル的な規定へ改正する
目標6.教職員定数法を改正、特別支援学校及び特別支援学級と通常学級の教員配置格差を解消
5.雇用労働部会のビジョン
あらゆる差別とハラスメントを解消し、合理的配慮を得て、障害者も共にいきいきと働くことができる労働環境を実現する
◎2030年までに実現したいビジョン
2019年6月に改正された障害者雇用促進法の附帯決議である「障害者雇用率の対象となる障害者の範囲」、「働くために必要とする支援(合理的配慮)の見直しと拡充及び労働・福祉施策の連携」、「持続可能な新たな財源と予算の確保」等と「職場・雇用現場における差別の禁止」と「合理的配慮の確保」及び「実効性ある紛争解決の仕組み」を実現する。
〇2030年までに達成したい目標、行動計画
目標1:一般就労について
・差別の禁止と合理的配慮を確保するための法・制度と、持続可能な財源と必要な予算を確保する
・通勤及び就労時の介助等の支援確保について、効率的・容易に利用できる仕組みを確立する
・納付金制度については、すべての民間企業が雇用率を達成することを前提とした持続可能な財源を確保する
・障害者雇用率の算定対象となる障害者の定義を、障害者手帳所持者以外にも拡大する
・障害者雇用率調査については、合理的配慮の確保についての調査も対象として行う
・差別、合理的配慮の不提供、ハラスメントに関する相談、紛争解決機関の仕組みを確保する
・除外率制度(特定の業種における障害者雇用義務を軽減する制度)を撤廃する
・SDGsの目標8に対する取り組みを進め、「誰一人取り残さない職場」を実現する
目標2:福祉的就労について
・就労継続支援A型における利用者負担を廃止する。
・ハート購入法(障害者優先調達推進法)運用について、就労継続支援事業所、障害者団体等への委託推進
目標3:第三の働き方(社会的雇用・社会的事業所等)について
・個々の多様性の尊重と必要な配慮が確保された新たな雇用・労働形態を実現する
目標4:「一億総活躍社会」及び「働き方改革」について
・施策の方針と内容を障害当事者の現状から検証し、障害当事者の現状を反映する
6.所得保障部会のビジョン
「働くことが困難な状況であるとされている障害者」が、地域で暮らせるための所得保障制度を確立する
◎2030年までに実現したいビジョン
無年金障害者(1型糖尿病等を含む)の解消、特別障害者給付金を障害者基礎年金へ統合、特別障害者手当の見直しと新たな「(仮称)地域生活手当」の創設により所得保障を充実する。また、生活保護基準の引き下げ撤廃と「健康で文化的な生活」を実現できるための水準及び障害者の現状を踏まえた基準の見直しを実現する。
〇2030年までに達成したい目標、行動計画
目標1.1型糖尿病障害基礎年金訴訟で勝訴し、公的年金制度改正につなげる
目標2.公的年金制度改正~無年金障害者の解消・所得制限の廃止、特別障害者給付金の年金統合~
目標3.特別障害者手当の見直しと「(仮称)地域生活手当」の創設
目標4.生活保護基準引き下げ訴訟(いのちのとりで裁判)の勝訴と生活保護基準の改善
目標5.貧困の概念について障害者の生活実態から「生活の質」を確保するための問題点を踏まえたものとする
7.障害女性部会のビジョン
障害女性の視点から、男女をはじめとするジェンダー間の不平等をなくし、多様性が尊重され、複合差別のない社会を実現する
◎2030年までに実現したいビジョン
障害女性の視点で提言し、活動することにより、誰もが差別されることなく安心して暮らせる優生思想のない社会を実現する。
〇2023年、2025年、2030年までに達成したい目標、行動計画
【2023年】
目標1.障害者基本法を改正し、障害女性の複合差別解消について明記させる
目標2.研修を定期的に開催し、障害女性のエンパワメントとネットワーク化を図る
【2025年】
目標3.差別解消法を改正し、複合差別、実態調査、差別解消窓口の当事者参画、職員研修を明記
【2030年】
目標4.保健福祉、防災、ジェンダー等の審議会への障害女性の委員としての参画推進を働きかける
目標5.障害女性の複合差別に関する国際シンポジウムを開催、国際的なネットワーク強化
8.国際協力部会のビジョン
世界の障害のある仲間との連帯によって、互いにエンパワーしあいながら、インクルーシブな世界を構築する
◎2030年までに実現したいビジョン
障害分野からの貢献によってSDGs(持続可能な開発目標)の達成を促進し、障害者が取り残されない社会を創る。
〇2023年、2025年、2030年までに達成したい目標、行動計画
【2023年】
目標1.政府のアクションプラン2021の内容が、障害者の権利を尊重したものとする
目標2.DPIアジア太平洋ブロック事務所として、ブロック団体や活動の強化に寄与する
目標3.アフリカの障害者をエンパワーし、開発から取り残されないようにする。
【2025年】
目標4.世界DPIの取り組み課題の一つにSDGsの達成をとりあげる
【2030年】
目標5.SDGs での障害の重要性に対する認識を広げる。
目標6.SDGs後に取り組むべき、国際開発目標に関する提案を行う
9.優生思想に関するビジョン
優生思想の克服に向けた取り組み、妊娠・出産、医療や各種生活支援サービスの利用を含め、人生の始まりから終わりまで障害を理由とした異なる扱いをされない社会を実現する。
◎2030年までに実現したいビジョン
障害や疾病、性別や性的指向等によって優劣や「人としての価値」を決められることなく、不利益を受けずに生きられる社会を創る
10.尊厳生部会のビジョン
優生思想を克服し、命の選別を受けることなく、どのような障害があっても、どんなに障害が重くても
地域で暮らせる仕組みづくりを通じて、本人や家族が自ら死を選ぶことなく生きていきたいと思える社会を創る。
以上