ついに始まった!障害者権利条約に関する台湾政府の報告書審査!
2017年10月31日 障害者権利条約の完全実施
10月31日、障害者権利条約(CRPD)にもとづく台湾(中華民国)政府の最初の国家報告書に対する審査委員会(Review Committee of the RPC’s Initial Report under the CRPD)が台湾の台北で始まりました。11月3日午後に総括所見が出される予定になっています。障害者権利委員会と日本政府との建設的対話にむけて台湾の経験を学ぶため、DPI日本会議から平野議長と崔が台湾へ向かいました。
▽10/21事前学習会の様子はこちら(台湾の障害者権利条約実施法、国内審査の仕組み等について学習会を行いました)
政治的事情から国連に加盟できない台湾は、障害者権利条約などの国連の人権条約を批准することができません。しかし、台湾政府は2007年からいくつかの人権条約に対して国内実施法を作り、自主的に審査委員会を設置し審査を受ける、という取り組みをしてきました。2014年には障害者権利条約実施法を策定し、障害者権利条約に基づいて政府が最初の報告書を作成し、台湾政府から委任された5名の委員によって報告書に対する検討が行われるものです。
審査委員会の委員長は日本の長瀬修さん。立命館大学生存学研究センター(衣笠総合研究機構)の教授です。ほかに、元障害者権利委員でイギリスのダイアン・キングストン、カナダのダイアン・リッチラー、アメリカのマイケル・スタイン、そして自立生活運動の大家でスウェーデンのアドルフ・ラツカの各氏が委員をつとめています。
この審査委員会に先立って、台湾の障害者団体などの市民社会組織はいくつかのパラレルレポート(NGOレポート)を作成し、この会議に臨んでいます。自立生活センターを運営しているリンさんのほか、たくさんの障害者団体の方々が参加しています。
台湾での検討は、通常の(障害者権利委員会での)建設的対話に比べ、NGOとしては非常にうらやましい。なぜなら3日も建設的対話が行われるからです(通常は1日)。またNGOと権利委員とのブリーフィング(対話)も1時間か1時間半の時間しか取れません。それ以外にロビーングしようとすれば夜討ち朝駆けではないですが、委員に個別にアプローチしなければならないのが普通です。しかし委員のみなさんにとっては非常にハード、重労働です。
さて、31日の午前は開会式と障害者団体からのアピールがありました。ここでは、様々な障害を持つ当事者がアピールしました。知的障害当事者、精神障害当事者、LGBTの方・・・。自立生活センターの代表としてリンさんもアピール。
写真:アピールする台湾の自立生活センターのリンさん(左)
午後からはついに審査委員会による審査の課程の本番がスタートです。この日は第1条~9条まで。まず委員に対するNGOからのプレゼンテーションから始まりました。たとえば第1条について、合理的配慮の概念や障害の定義が医学モデルで人権モデルではない、などの意見が出されました。性的虐待や生殖の権利等といった6条に関することやアクセシビリティやユニバーサルデザインに関する意見などがたくさん出されました。一時間ほどNGOの発言が続き、次に委員からの質問がされました。合理的配慮の否定が差別であることなど合理的配慮についての法的な規定についての具体的な取り組みや計画など。ここで印象的だったのは、委員からNGOに対して、どのような勧告を政府にしてほしいか、何を言ってほしいか、といったやり取りがされたことです。1条から9条まで1時間かけてNGOとの対話ができるとは!ジュネーブではありえません。
続いて15時から台湾政府と委員との建設的対話が始まりました。たとえば元権利委員会委員であったダイアン・キングストンさんから、障害の定義にICF国際分類の使用し社会モデルや人権モデルとなっていないこと、関連して5%のみの障害者が障害者カードを所持していること、また、環境との相互作用による障害の観点がないのでは、合理的配慮の否定が法的に障害差別になることについて、いつ立法計画があるのか、などなど。ほかにもたくさんの質問がされました。長瀬さんからは手話について、中国語対応手話と中国手話についての質問も出されました。事前質問事項(リスト・オブ・イッシュー)とも重なる部分もあったようでした。
こうして初日の会議は無事に終わりました。長瀬さんをはじめとする委員の皆さん、台湾の皆さん、大変お疲れさまでした!
そして、夜はいうまでもなく台湾障害者権利協会のグレース・チャンさんやリンちゃんと街へ(笑)。おいしい台湾料理を食べながら、台湾の障害者の暮らしなどについてお話を聞きました。
写真:グレース・チャンさん。台湾の障害者運動の中心メンバーのお一人
崔 栄繁(DPI日本会議 議長補佐)