筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト実態調査報告書が発表されました(「Withコロナ時代のオンライン地域移行支援制度モデル構築事業」JCILからの報告)
2021年10月26日 地域生活
みなさんこんにちは。「Withコロナ時代のオンライン地域移行支援制度モデル構築事業」京都実働部隊の日本自立生活センター(JCIL)です。
前回の報告に引き続き、今回は8月から10月までの動きについて報告します。
京都市「脱施設化」のための働きかけ
8月26日(木)に開催された、京都市障害者施策推進審議会に出席しました。前回の報告でお伝えした地域移行の実態調査について、実施するということで京都市障害保健福祉推進室から大まかな方向性が示されました。
■調査対象者は、
- 施設入所待機者本人:254人(令和2年度時点)
- 障害者支援施設:18施設
と出されました。
待機者(地域生活をしている施設入所希望者)については、「本人」に調査するとなっているのですが、現在の施設入所者に対しては調査対象が「障害者支援施設」となっていたので、入所者についても「本人」を対象にするよう要望しました。
■調査結果の活用方法の計画としては、
(例1)現行制度,支援策の見直しへの活用:必要な支援等について検証を行い,国への要望等へつなげていく。
(例2)支援プログラムの開発:ワーキンググループ(当事者,事業者,学識での構成を想定)により地域移行・定着に向けた支援プログラムを構築し、モデル事業を実施。
といった案が出されました。
ワーキンググループの構成メンバーについては、ただ当事者であればよいというわけではない、地域移行についての実績があり、モデルケースを示しエンパワメント支援を行うことができ、また現行の施策の不備を指摘できる当事者や事業者をメンバーに加えていただきたいと伝えました。
また、学識経験者についても、単に「障害福祉」専門ではなく、「地域移行」の研究者を選んでいただくよう要望しました。
京都市では、地域移行者数の目標値は国の数値よりかなり低く、入所希望者数削減の目標値に至っては、入所希望待機者が多いため削減の目標値を掲げないという状態が近年続いてきていました。この状況の打開のために具体的な施策が示されたことは、脱施設化に向けて大きな前進だと思います。
今後も、審議会、行政、有志の皆さんとこの動きを積極的に進めていきたいと思います。
なお、現在、脱施設・地域移行を京都において具体的に進めるためのシンポジウムを企画中です。
この間、京都市の数多くの居宅介護事業所が集まる「居宅介護事業所連絡会」も「脱施設・地域移行」を進めていく必要を感じており、今回、JCILの動きと連動して年明けあたりに合同でシンポジウムをやることになりました。
行政や事業所に参加してもらいつつ、当事者や家族、現場職員たちにも、「こうしたら施設ではない暮らしも可能なのだ」、「地域にはこんなサービスがある」、「障害が重くてもこんなサポートを受けながら一人暮らしができる」、そうしたことをわかりやすく伝える機会にしたいと思っています。
筋ジス病棟以外の障害者入所施設へのアプローチ
先日来、この報告にも書かせていただいていた日本自立生活センターの会員の方々へのアンケートを9月3日(金)付けで、施設入所者の方や在宅の方など計56通送付することができました。10月8日(金)現在、8名の方から回答が寄せられています。
アンケートの内容としては5つの設問かありました。
「Q1.コロナ禍が長く続いています。最近の体調や生活の様子をお聞かせください。」
「Q2.現在お住まいのご自宅・施設はインターネットの使用は可能でしょうか?」
「Q3.JCILではコロナ禍でも、オンライン面会などができないか模索しています。可能な場合はオンライン面会やオンライン企画に参加してみたいですか」
「Q4.コロナが落ち着いたら、何をしてみたいですか」
「その他、ご希望やご要望など、教えてください。」
というものでした。
1つ目の設問については、施設入所者の方々は「外出などができないため、元気が出ない・生活にメリハリがない・体調は変わりないが体力少し落ちた」など率直な回答が寄せられました。一方、在宅の方々については「特に変化なし」や「コロナ禍でも自分なりに楽しくやっている」や「毎日着用しているマスクが息苦しくて本当に辛い」との回答がありました。「特に変化なし」といった回答も元々の外出頻度が少ない可能性もあるので、日ごろからご本人の希望に沿う生活ができているか否かという点について注視しなければならないと感じました。
2つ目の設問では、入所施設においてインターネット環境の有無によって回答が分かれました。「はい」と回答された方が3名、「いいえ」と回答された方が2名でした。またインターネット環境がある施設や在宅の場合においても「可能だけど自分では難しい」と回答された方が3名でした。インターネット環境があったとしても何らかのサポートを必要とされている方が一定数いることがわかりました。ご本人がどのようなサポートを求めておられるかを明確にし、コロナ禍においても具体的な支援に繋げていきたいと改めて感じました。
3つ目の設問については「はい」と回答された方が4名、「いいえ」と回答された方が4名でした。インターネット環境やサポートの有無に加えて、まずは、オンライン面会やオンライン企画に対するイメージの共有が必要なのではないだろうかと感じました。
4つ目の設問では、外出や買い物・旅行や対面での企画参加、カラオケ、好きなアイドルのコンサートなど、コロナ後にやりたいことがびっしりと書かれており、ご本人の「日常を取り戻したい」という切なる思いを読み取ることができました。
5つ目の設問については「今の目標、希望、願いは前述したので特になし」という回答や「コロナ後の外出支援をよろしくお願いします」といった声が多かったです。
また、今回は「回答自体が難しい利用者の方が多い」という施設側の判断で6通分のアンケートが無回答の状態で返却されるということがあり、アンケート回答ついて一定、施設に委ねる形になってしまう実態とアンケート回収の難しさを実感しました。
筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト実態調査報告書が発表されました
本事業と直接的に関係があるわけではありませんが、JCILも中心的に関わり活動を展開している「筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト」が、10月15日(金)に筋ジス病棟実態調査報告書の記者発表会を行いました。その模様はテレビや新聞・ネットニュースで大きく報道されました。
それに関連して、本モデル事業報告でも登場してくださっている、野瀬さん(2019年7月宇多野病院退院)と藤田さん(2020年10月宇多野病院退院)にスポットが当てられた京都新聞の記事も掲載されました。是非ご一読ください。
2021/10/15
ネットも断たれた孤絶 筋ジス病棟で生涯過ごす人たち(京都新聞 Yahoo)
2021/10/16
筋ジス病棟で「虐待」3割超 ナースコール無視 入浴で異性介助 障害当事者ら全国調査(京都新聞 Yahoo)
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医療と福祉のはざまで悲痛な叫び 慢性的な人手不足が生む筋ジス病棟の構造的課題(ヨミドクター)
今回の報告は以上です。引き続きプロジェクトメンバーみんなで頑張っていきます!
(報告:JCIL 日本財団PTチーム)
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