中央省庁で障害者差別解消法対応要領・対応指針の改定が進められています
2023年05月18日 権利擁護
障害者差別解消法は2021年に改正され、本年3月には基本方針の改定が閣議決定されました。施行期日も2024年4月1日となり、今年度は中央省庁で対応要領・対応指針の改定作業が進められています。
去る5月9-10日、内閣府主催の合同ヒアリングが開かれました。国交省を除く中央省庁が対応要領と対応指針の改定案を示し、12の障害者団体と3つの事業者団体が意見を述べました。対応要領・対応指針の改定案は、内閣府のものがほとんどの省庁で踏襲され、一部、独自の記述が盛り込まれています。
今回の改正の最大のポイントは民間事業者も合理的配慮が義務化されることです、対抗指針の改定もここが中心となります。 また、改正法では相談体制の充実と事例の収集・提供の確保も盛り込まれましたので、この記述も新たに加えられています。主な改正のポイントをご紹介します。
主な改定ポイント(内閣府対応指針案)
- 不当な差別的取扱いの基本的な考え方 関連差別の記述が加えられました!
- なお、車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当する
- 正当な理由の判断の視点
- 正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を丁寧に説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際、事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる。
- 合理的配慮の基本的な考え方
- 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものである。また、その内容は、後述する「環境の整備」に係る状況や技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。また、合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意する。
- 建設的対話に当たっては、障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障害者と事業者が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要である。例えば、障害者本人が社会的障壁の除去のために普段講じている対策や、事業者が対応可能な取組等を対話の中で共有する等、建設的対話を通じて相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられる。
- 不当な差別的取扱いの例(以下を含めて6事例)
- 障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否すること。
- 差別的取扱いに該当しない例(以下を含めて2例)
- 車椅子の利用者が畳敷きの個室の利用を希望した際に、敷物を敷く等、畳を保護するための対応を行うこと。(事業者の損害発生の防止の観点)
- 合理的配慮の例(以下を含めて2例)
- 視覚障害者からトイレの個室を案内するよう求めがあった場合に、求めに応じてトイレの個室を案内すること。その際、同性の職員がいる場合は、障害者本人の希望に応じて同性の職員が案内すること。
- 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例(以下を含めて4例)
- 試験を受ける際に筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること。
- 合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例(以下を含めて4例)
- 抽選販売を行っている限定商品について、抽選申込みの手続を行うことが困難であることを理由に、当該商品をあらかじめ別途確保しておくよう求められた場合に、当該対応を断ること。(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることの観点)
- 合理的配慮の提供と環境の整備に関係に係る例(以下を含めて2例)
- 障害者から申込書類への代筆を求められた場合に円滑に対応できるよう、あらかじめ申込手続における適切な代筆の仕方について店員研修を行う(環境の整備)とともに、障害者から代筆を求められた場合には、研修内容を踏まえ、本人の意向を確認しながら店員が代筆する(合理的配慮の提供)。
- 事業者における相談体制の整備
- 相談窓口の整備や、相談対応を行う担当者をあらかじめ定めておく等といった、組織的な対応ができるような措置を講ずることが重要である
国土交通省の対応指針
国交省は独自に改定作業を進めています。3月末には個別に障害者団体にヒアリングを行い、5月31日(水)には障害者団体、事業者団体が集まり第1回の意見交換会が開かれる予定です。
DPIの取り組み
DPIでは本年2-3月に差別事例を収集し、約300事例が集まりました。これを省庁ごとに分類し、DPIの意見書に盛り込み、主な省庁には個別に働きかけも行っています。
また、全省庁に対し、国交省に対応指針に記載されている以下の記述を盛り込むように提案しました。過重な負担の場合は合理的配慮の提供が免除されるのですが、むやみに拡大解釈しないように国交省では求めており、とても重要な記述になります。
「過重な負担」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような「客観性」が必要とされるものである。また、「過重な負担」を根拠に、合理的配慮の提供を求める法の趣旨が形骸化されるべきではなく、拡大解釈や具体的な検討もなく合理的配慮の提供を行わないといったことは適切ではない」
今後のスケジュール
おそらく、7月までには改定案が確定し、7-8月にパブリックコメントが実施されるものと思われます。パブコメが始まったらご案内しますので、ぜひみなさま、多くのご意見をお送りください。
報告:佐藤 聡(事務局長)