DPI障害者差別解消ピアサポートから、2021年度の報告です
2022年06月28日 権利擁護
日頃より、DPI障害者差別解消ピアサポートの活動に、ご理解、ご支援いただきありがとうございます。
本年夏頃、障害者権利条約の日本審査が行われ、総括所見が出される予定です。このことを機に、障害者の人権がより一層確立されるよう、新たな法整備を求める必要があります。そのため、ピアサポートの相談員を始め、寄せられた相談について、事例分析を行うなど、解決の一助を担い、これまで以上に障害者差別の解消に向けた取り組みを加速させていきます。
所長 辻 直哉
ご相談の件数
2021年度は、相談実人数40人、相談件数493件、増減率23%と前年度より微増しました。
とはいえ、前年度はメール以外の受付を停止するなどで大幅に減少していたため、件数の減少傾向は続いているといえます。実人数についてはあまり変わっておらず、相談者1人当たりのやり取りの回数が減り、その背景には、差別解消ピアサポートとなってから、心理的な不安や苦情を聞き続けるようなご相談を受けなくなったことが考えられます。
ただ、相談者とのやり取りの合間に調べ物をするなど、以前より時間をかけられ、対応に厚みも出ているという相談員からの意見が印象に残りました。
また、当窓口にご相談をいただくのはご本人からが多く、男女の比率はほぼ半々でした。
当窓口にいただいた相談者の分類
障害類型では、精神障害が55%、肢体障害が20%、難治性疾患が10%、不明・その他が8%でした。
その他の内訳は、発達障害、化学物質過敏症となります。重複障害については13%でありました。
ご相談内容
相談内容としては、「福祉サービス法関連」が18%、「就労」も18%を占めました。
その他の内訳は、発達障害、化学物質過敏症となります。重複障害については13%でありました。
差別解消法関連の相談として、代表的な事例を2例挙げます。
一つは、自動車学校の入学を拒否されたケースです。ご本人は合宿入学を希望しましたが、「障害者は時間がかかって延泊になることが多い」という理由で通学を勧められたそうです。
明らかに差別的な対応で、止めるように求めました。しかし、「それは配慮してのことです」の一点張りで、結局入学を断られました。
もう一つは、障害者雇用枠が非正規雇用に限定されているケースです。就職後、同じ業務の正社員はテレワークが認められ、非正規職員には認められないなどの格差があるとわかりました。
合理的配慮としてテレワークを求めましたが、上司からは「それなら正社員登用試験を受ければいいじゃないか」といわれたそうです。体力的な制限がある上に、通勤の負担も負いながら試験勉強をする余裕はなく、労働組合や法律相談でも解決の見通しは立っていません。
2021年度を終えて
2021年5月、改正障害者差別解消法が可決、成立し、民間事業者の合理的配慮の提供が義務(法的義務)とされました。
当窓口には障害者本人から、配慮としてどこまで求めてよいものかという相談や、また障害者本人の望まない「配慮」という名目で不当な条件を課したり、障害を理由として一方的な条件、負担を課したりされたという相談が寄せられます。いっぽう、障害者から配慮を求められた側からも、「過重な負担のない範囲」で合理的配慮を行うにはどうしたらいいのか、という問い合わせがあります。
合理的配慮への考え方で、「できる・できない」の二元論に陥らない「建設的対話」が重要であることは言うまでもなく、誤解を解く作業と、内容にも大きな個人差があることを理解し、話し合いを行っていくことを続けて解決を目指す取り組みが求められています。
差別を被って泣き寝入りせざるを得ない障害者がいなくなるように、また、相談窓口が分かりづらく、相談者がたらい回しにされる現状を変えていけるように、相談当事者の自己決定をサポートし、日常的な相談活動として取り組んでいければと思います。
相談員:五位渕真美