2021年12月13日「熊本旧優生保護法裁判」第16回期日意見陳述 傍聴報告
平野みどり・DPI日本会議議長(ヒューマンネットワーク熊本、旧優生保護法被害者とともに歩む熊本)より、熊本県の優生裁判傍聴の報告が届きました。以下、紹介します。
2021年12月13日(月)の熊本地裁での意見陳述について概要を報告いたします。今回、神戸地裁判決を受けての意見陳述であり,徳田靖之弁護士によって行われました。
現時点で、全国各地で原告25人が闘っている優生保護法裁判は、5地裁で6つの判決が出ています。そのうち東京と札幌の2つの訴訟のうち一つの判決以外は、4地裁(札幌の1・仙台・大阪・神戸)とも、明らかな憲法違反であり著しい人権侵害である事は認められました。
徳田弁護士は、「神戸地裁判決は、他の判決に比べて、憲法違反であると断罪し、国会議員の立法不作為責任を認めた点でも、最も原告の思いに近い判決ではあったが、それを判決の“付言”という形でしか述べず、請求棄却という結論に至ってしまった問題点」を指摘しています。
つまり、優生条項は、優生保護法が母体保護法に変わり1996年に廃止されましたが、国は,不妊手術は違憲であったと謝罪すること等もなく放置し,被害は継続していたにもかかわらず、“除斥期間のスタート時”を不妊手術時等に遡って認定しているのはおかしいという主張です。その間、被害者は法に翻弄され、多大な苦痛や偏見を継続的に受け、違法だと訴えられる状況ではありませんでした。
したがって、各地裁や高裁で「除斥期間」を根拠に、国の賠償責任を否定していますが、被害者が取得した損害賠償請求権がその何十年も前に消滅しているとの判断は間違っており、除斥期間の壁を過大視している、というのが徳田弁護士の主張です。
更に、国会議員の立法不作為責任を認めた神戸地裁判決の法論理的な帰結としては、原告らの被害は、1996年の母体保護法制定以降の現在も継続しており、除斥期間は全く進行していないということにならざるを得ないはずだと徳田弁護士は主張しました。
憲法に違反する非人道的な優生条項を半世紀も存続させたことによる被害は、優生手術を受けたことだけにあるのではなく、「不良」な存在と法的に位置づけられたことにより偏見差別に晒され続けたという被害であるというのが神戸地裁での原告の主張です。
したがって、優生思想を排斥するための方策を何もとってこなかった国会議員の不作為や厚生行政の怠慢こそ違法として裁かれるべきであり、改めて不作為期間を無視した「除斥期間」の認定は非合理と言えます。
熊本地裁次回期日では、DPI女性障害者ネットワーク代表の藤原久美子さん(視覚障害当事者、優生保護法による被害者とともに歩む兵庫の会)の意見陳述が熊本弁護団により申請されています。筆者も同ネットワークのメンバーとして、私も藤原さんの意見陳述作成に協力してまいります。
★熊本地裁次回期日:2022年3月14日(月)13:30
熊本地裁の門前集会が13時からあります。併せて傍聴をお願いします!!
報告:平野みどり(DPI日本会議議長)