優生保護法被害者への補償を定めた法律が成立し、国会で謝罪決議が採択されました
2024年10月10日 権利擁護
△写真:2024年10月8日(火)、補償法案可決・成立後、参議院会館にて原告団・弁護団・優生連による共同記者会見。挨拶する新里弁護団共同代表(写真提供:優生連)
優生保護法のもとで障害等を理由に不妊手術等や人工妊娠中絶を強制された人に対する補償を定めた「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律」(以下、補償法)が成立しました。
補償法成立を受け、全国優生保護法被害原告団・全国優生保護法被害弁護団・優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)は2024年10月8日(火)、連名で声明を発表しました。
また、補償法案可決に先立ち「旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議」が、両院の本会議で採択されました。
本国会決議では
「本院は、被害を受けた方々の名誉と尊厳が重んぜられるようにするとともに、このような事態を二度と繰り返すことのないよう、これらの方々の被害の回復を図るための立法措置を速やかに講じていく。そして、優生思想に基づく偏見と差別を含めておよそ疾病や障害を有する方々に対するあらゆる偏見と差別を根絶し、全ての個人が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく尊厳が尊重される社会を実現すべく、全力を尽くすことをここに決意する。政府においても、この問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚し、早期かつ全面的な解決を図るよう万全を期するべきである。」
と述べています。
決議の全文は以下で読めます。
▽旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議案(第二一四回国会、決議第一号)(外部リンク:衆議院)
▽旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議(外部リンク:参議院)
新たに成立した補償法は、優生手術を強制された被害者本人に1,500万円、その配偶者に500万円、中絶を強制された女性に200万円を支払うことを定めています。
補償法の施行は3か月後の2025年1月からになります。手続き等の詳しい内容についは、今後、管轄省庁の子ども家庭庁で案内される見込みです。
▽優生保護法被害に関するお問い合わせ先(別リンク:全国優生保護法被害弁護団)
この間の動き
かつての優生保護法(1948年-1996年)の下、約8万4千人(うち強制不妊手術2万5千件)が同法の影響を受けたと推定されています。多くが女性で、また未成年者も含まれていました。
■2018年
優生保護法に基づく優生手術に関する最初の訴訟が宮城県でされました。
▽20年以上にわたり優生保護法の被害を訴え続けてきた飯塚淳子さん(仮名)(外部リンク:CALL4)「16歳で知らずに受けた不妊手術。強制した国に謝罪を求め、声を上げ続ける」
各地で訴訟が起こり、原告を支援する会やグループも広がりました。2022年には支援団体のネットワークである優生連がつくられ、DPI日本会議も24の構成団体として参加しています。
▽優生保護法問題の全面解決を求める10.25全国集会 ダイジェスト動画(外部リンク:優生連)
■2019年
4月には議員立法により「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(一時金支給法)が成立、公布・施行されました。
しかし同法は国の損害賠償責任について明確にしておらず、また一時金の金額も受けた被害の甚大さからみて低すぎるなどの問題を残していました。
■2024年
7月3日(水)、最高裁判所において、優生保護法の優生手術に関する規定は憲法13条(自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由を保障)及び14条1項(法の下の平等)に違反しており、国の損害賠償責任を認めるとの判決が言い渡されました。
これを受け、7月17日(水)に首相官邸にて岸田首相(当時)が被害者に対して謝罪を行い、また8月2日(金)には小泉法務大臣(当時)が謝罪を行いました。
なお、7月26日(金)の閣議決定で「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策 推進本部」が設置され、7月29日(月)より開催されています。
9月13日(金)には、こども家庭庁にて政府と原告団・弁護団の係属訴訟の和解等のための合意が調印され、追って9月30日(月)には国(内閣府特命担当大臣)と原告団・弁護団・優生連との基本合意書の調印式が行われました。
10月7日(月)、衆議院地域活性化子ども政策デジタル社会形成に関する委員会を経て、同日の本会議で謝罪決議と補償法案がそれぞれ可決されました。そして10月8日(火)、参議院の同委員会及び本会議にて謝罪決議と補償法案が可決され、成立しました。