ODA大綱見直しに対する要望文を提出
先進国経済の疲弊、新興ドナー国の台頭、民間セクターの開発資金の増加、地球規模の課題の多様化・複雑化など、ODA(政府開発援助)をとりまく環境・潮流が変化する中、近年「国益」を全面に出したODAの戦略的・外交的な活用がドナー諸国内で主流となっています。
昨年からカナダ、オーストラリアの国際開発庁(CIDA、AusAID)がそれぞれ外務国際貿易省、外務貿易省へ統合されて外交、貿易、開発援助を一元化するなど、民間セクターの海外進出にODAを活用する動きも目立ってきています。
2003年に発表された日本ODA大綱には民間資金や国益という文言は入っていませんでした。外務省は3月31日、岸田文雄外相の下に「ODA大綱を見直す有識者懇談会」を設置し、6月に報告書をまとめ、年内に新たなODA大綱を閣議決定することを発表しました。DPI日本会議はODA政策協議会等を通じて、これまで開発戦略において障害(者)の課題を主流化することを訴え続けてきました。経済成長が持続的な開発において重要であることはもちろんですが、私たちは短期的な自国の利益のみを優先する姿勢だけでは、被援助国から真に尊敬を得られず、有効なパートナーシップを築けないと考えます。私たちは10年以上継続しているアフリカ障害者研修により、息の長い支援を通し着実にパートナーシップを築き人材・団体育成を行ってきました。特に、民間資金では解決が困難な障害分野など、開発過程において周縁化されやすい人々に対し配慮した、経済成長偏重ではないODAの実施を強く訴えます。
2015年で終了するミレニアム開発目標後の、新たな国際的開発枠組みへの障害者問題のインクルージョンを求める動きと並行して、新ODA大綱に対し障害者問題への取組みの明記を求めるため、DPI日本会議は以下の要望書を提出します。(※1)
また今回の見直しでは、安倍政権が「積極的平和主義」の下、集団的自衛権の行使容認や武器輸出三原則の見直しなどで安全保障政策の抜本的な転換を掲げる中、ODAの軍事目的での使用を禁じた規定を見直し、外国軍への支援を可能にする方向で検討に入り、民生分野の支援を貫いてきたODA政策でも軍事利用を認めれば、国内外で反発を招く可能性もあるという報道もなされています(朝日新聞4月1日)。
ODA大綱はこれまで「軍事的用途および国際紛争助長への使用を回避する」ことを原則として掲げてきました。日本のODAは軍事的なカラーのない支援であるからこそ、イスラム教国に対する支援等において対等かつ中立的な立場で行ってくることができたという面があります。こうしたこれまでの実績や利点を放棄し、ODAの原則を緩和することに対し、私たちはODAが掲げてきた「人間の安全保障」の理念からの退行になりかねないと懸念することから有志の市民社会団体で提出する共同声明に賛同します。(※2,3)