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「国内先進事例から考える地域移行・脱施設化のあり方」:DPI政策論「地域生活分科会」報告と参加者感想

2024年12月25日 イベント地域生活

地域生活分科会ウェビナー画面

12月8日(日)開催した第13回DPI障害者政策討論集会「地域生活分科会」について、報告を下林慶史さん(日本自立生活センター、DPI日本会議常任委員)が、感想を山下幸子さん(淑徳大学)が書いてくれましたので、ご紹介します!

こんなことが話されました(ポイントまとめ)

■冒頭の情勢報告(今村登/DPI日本会議事務局次長・STEPえどがわ代表)

■訪問の家の取り組み(名里晴美/訪問の家理事長)

■パンジーメディアの取り組み(林淑美/パンジーメディア・創思苑)

■自立支援センターぱあとなぁの取り組み(地村貴士/自立支援センターぱあとなぁ)

■質疑応答

■結論

分科会で報告・議論したこと(報告詳細)

12月8日、政策討論集会2日目に行われた地域生活分科会は「国内の先進事例から考える地域移行・脱施設化のあり方」というテーマでした。

冒頭、部会長の今村氏より情勢報告がありました。2022年に出された総括所見を背景に福祉サービスの報酬改定で拠点コーディネーターの配置や施設入所者への意向確認の義務付けなどの整備が行われてきたことや来年度には、障害者支援施設のあり方検討会が発足されること。現在はそれに向けて厚労省が調査を行っていることが述べられました。

部会長の今村氏

今回の分科会では、それらを踏まえ、日本の先進事例として、横浜市の社会福祉法人訪問の家の名里氏、東大阪市の事例としてパンジーメディアの林氏、自立支援センターぱあとなぁの地村氏より報告がありました。

1人目の登壇者の名里氏によれば、訪問の家は1986年に知的障害者の通所施設として開設され重症心身障害児者の方が多く通われているとのことでした。開設時には地域の反対があったとのことで、「一人ひとりを大切に、誰にとっても暮らしやすい社会を一緒に作っていこう」ということを法人の理念にし、活動を続ける中でグループホームの運営やヘルパー派遣も行っているそうです。

名里氏

事例としては、グループホーム入所者のお一人が紹介されました。この方は元々通所を利用されていた方でご家族が亡くなられたのをきっかけに重心施設へ長期入所されていたそうです。その後、訪問の家がグループホームを作るタイミングで残されたご家族からの希望もありグループホームへ移行されたとのことでした。グループホームでは重訪を利用し、個人単位での介助を受けられており、介助者やスタッフとコミュニケーションを取ってご本人が生活を組み立てている様子が写真で紹介されました。

名里氏は、こじんまりした中で関係が深まる環境がとても良いと感じておられ、そんな中でご本人の気持ちや希望を確認しながら暮らしを実現していきたいと述べられ、制度利用を縦割りにして制限するのではなく、医療的ケアを含む重度障害者も自分の暮らしを選べるようになることの重要性について語られました。

続いてパンジーメディアの林氏からは、パンジーメディアの取り組みと強度行動障害のある方が地域で生活するために何が必要なのかについて、ある方の事例を元に報告していただきました。パンジーメディアの母体である創思苑では、「知的障害のある人が自分で決めた当事者活動を支援すること」と「どんなに障害が重くても地域で暮らすための支援」を目指しているそうで、地域移行を決めた人にはそれを支援するプロジェクトが立ち上がるそうです。

パンジーメディアの林

林氏の報告では実際にサポートを受けて地域移行された方の事例が映像で紹介されました。その方は最初、入所施設の職員と一緒にパンジーを来訪されることから始め、グループホームでの生活を想定したショートステイを行った際にクレームが入り、重度訪問介護での地域移行に切り替えたそうです。その後、入居予定の部屋に防音設備をし、部屋での宿泊を繰り返すことで少しずつ慣れていき、11回目の体験を経て地域移行を果たしたとのことでした。林氏は今までの経験から本人の不安に寄り添う支援と安心できる場所の提供、地域のネットワーク構築が必要だと述べられました。

3人目の登壇者である自立支援センターぱあとなぁの地村氏からは2020年から取り組まれている知的障害のある仲間の自立支援を通して見えてきたことについて報告をしていただき、①住む場所が見つけにくいこと、②住宅改修の必要性、③重訪の柔軟な支給決定、④支援者の人材確保の課題、⑤近隣住民の障害理解が重要であるとの指摘がありました。

自立支援センターぱあとなぁの地村氏

分科会の後半は30分ほど質疑応答の時間を設け、参加者から多岐にわたる質問が寄せられました。その中のいくつかには、65歳問題への取り組み内容についての質問や地域に障害理解障害理解を促すためにどういった取り組みをしているか。人材確保・育成に関する内容でした。

65歳問題に関しては、65歳を迎える前から重訪の利用を呼びかけたり、行政との話し合いを行ったりしているそうです。地域の障害理解を促す取り組みについては、とにかく外に出ることで地域の人との繋がりをつくることが大切だと、登壇者の方々は言っておられました。加えて、訪問の家に関しては通所施設を開設されたときに反対運動が起きたが、それを機に近隣住民が「地域のあり方」について一緒に考えるきっかけにもなったとのことでした。

人材確保・育成については、どの団体も急務で常に募集を行っているとのことで大学や介助者仲間への呼びかけをし、口コミで募るなど、さまざまな工夫をしているそうです。なお、ぱあとなぁでは、介助系の専門学校と連携して留学生のバイト先・就職先として受け入れをしており、東大阪市では留学生の在学中と卒業後5年は福祉現場で就労することを勧める独自の制度があるとのことでした。

私は今回の分科会を通して、「どんなに重度な障害があっても地域で生活する。本人の望む生活を実現する」というあり方を社会全体で共有し、連携しながら実践することが重要だと感じました。

報告:下林 慶史(日本自立生活センター、DPI日本会議常任委員)

参加者感想

地域生活分科会のテーマは「国内先進事例から考える地域移行・脱施設化のあり方」でした。このテーマは、障害当事者運動において長年の主要な課題となってきました。実際に、各地でどのような実践が進められているのかを共有し、それを基盤に地域移行や脱施設化の方策を検討することを目的に分科会が開かれました。登壇した3名のパネリストは、重症心身障害者や、重度知的障害、強度行動障害を有する方々の支援に長年携わってきた専門家たちです。

こうした障害を持つ方々の支援は、入所施設でないと困難だと多くの人に考えられてきました。しかし、それぞれのパネリストは「街に出る」という取り組みを通じて、この固定観念を変えることに成功してきた様子を報告しました。

パネリストが活動する地域や背景は様々でしたが、地域移行や脱施設化を進める上での指針や課題には共通点が見られました。「どんなに障害が重くても、当事者を中心に地域で生活する」という指針は、各パネリストに共通しており、彼らの報告を通じて強く共有されました。また、地域移行に伴う課題についても、質疑応答を含め多岐にわたる内容が挙げられました。

特に、介助者の確保は切実な課題として挙げられました。障害者の地域移行を実現するためには、障害福祉制度のさらなる充実だけでなく、その地域を多様な人々が暮らせるインクルーシブな場とする取り組みが不可欠です。

山下 幸子(淑徳大学)


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