シンポジウム「知的障害のある人の自立生活について考える」報告
2021年6月、オンラインシンポジウム「知的障害のある人の自立生活について考える」が開催され、DPIからは事務局次長の今村登もコメンテーターとして参加しました。
(主催:知的障害のある人の自立生活について考える実行委員会(現在は知的障害のある人の自立生活について考える会として活動中))
このシンポジウムは、もともと重度の知的障害者支援において、相談⽀援、⾏政のケースワーカー、施設、居宅介護などの⽀援機関も、あたり前に⾝近な地域で暮らし続ける「⾃⽴⽣活」という選択肢を本⼈、家族に提案しない(できない)状況が続いて」きている現状に対し、「重度の知的障害があっても、それを⽀える⽀援体制があれば、公的介護(ヘルパー制度等)を活⽤して地域の中での「⾃⽴⽣活(=他の⼈と同等のあたり前の⽣活)」をすることが可能」であるとして、支援者サイドの意識改革を求める知的障害者の自立生活についての声明文プロジェクトのメンバーを中心に企画されたものです。
シンポジウムでは話題提供者として田中恵美子さんからは研究者の立場から、知的障害者の自立生活に関するインタビュー調査から見えてきた住まいや所得、介助制度や日中の過ごし方などの現状について、また、自立生活に至るまでのプロセスなどについて、調査結果をもとに分かりやすくお話いただきました。
また、二人目の話題提供者の又村あおいさんからは、「本人を中心とした生活を支えるための取組み」として障害者福祉施策の変遷を振り返りながら知的障害者を取り巻く暮らしぶりの変化について、わかりやすい解説がありました。また、相談支援や意思決定支援を重要性などにも言及がありました。
第二部のパネルディスカッションでは、母親、父親の立場、支援者の立場から知的障害のある人の自立生活の実践例の紹介がありました。親の立場からの報告からは子どもの自立生活を考える中で親自身の揺らぎや葛藤も含めてどのように進んでいくのか具体的に語られていたのがとても印象的で親支援という視点の必要性をあらためて感じる事例紹介でした。
また、支援者の立場からの報告は、狭い意味での福祉サービスや支援者だけの関係性にとどまらない、地域の中で多様な人たちとのかかわり合いとともに形成されている自立生活やそれを支えている支援者の実践についての様々なエピソードが事例として紹介されていました。インクルーシブ社会における障害のある人の地域生活を考える上でとても興味深い報告でした。
コメンテーターの今村からは他人に制限される生活があるということ、尊厳を奪われることがあるというコロナ禍で得られた教訓からあらためて、障害のある人の脱施設・地域移行が当たり前に実現できる社会にしていくことが大切だと話されました。また、脱施設・地域移行や自立のチャンスを増やすために依存先が増えること、つまり頼れる人、付き合い続ける人を増やす支援が必要だとしました。
パネラーの報告やコメントを踏まえて、相談支援の重要性、特に現状の計画相談ありきの相談支援にとどまらない意思形成支援を含めた相談支援の重要性が確認されました。また、相談支援だけでなく、障害のある人にかかわる人はどんな人でも身近な人たちこそソーシャルアクションの視点をもっている必要があるのではないか、といった意見もありました。
実際の事例、経験をもとにしたディスカッションはとても興味深く、「知的障害のある人の自立生活を考える会」としての今後のネットワークの広がりが期待されるオンラインシンポジウムでした。
このシンポジウムの様子については、期間限定での無料配信が行われています。興味のある方はぜひ以下のURLのフォームからお申込みください。なお、配信についての詳細は「知的障害のある人の自立生活を考える会」までお問い合わせください。
▽【期間限定】アーカイブ動画・再配信|シンポジウム「知的障害のある人の自立生活について考える」|お申込みフォーム(外部リンク)
※調整のため、いったん申し込みの受け付けを停止しているようです。
▽知的障害のある人の自立生活を考える会 ホームぺージ、Facebook(外部リンク)
報告:白井(事務局次長)