5月31日(金)DPI全国集会in松山 特別分科会報告
「改正バリアフリー法を活用し、地域のバリアフリー整備を推し進めよう!」
5月31日(金)第35回DPI全国集会in松山で開催した特別分科会について、武田行雄さん(愛媛障害フォーラム事務局員)に特別分科会報告を書いて頂きました。是非ご覧ください。
特別分科会プログラム「改正バリアフリー法を活用し、地域のバリアフリー整備を推し進めよう!」
■登壇者
報告「改正バリアフリー法その後の動き」
・佐藤 聡(DPI日本会議事務局長)
・工藤 登志子(DPIバリアフリー部会・stepえどがわ)
「おもてなし松山 観光地のバリアフリーの取り組み」
報告: 金村 厚司(視覚障害まちづくりサークルスクランブル)
報告「改正バリアフリー法その後の動き」
特別分科会では30名程度の参加があり、改正バリアフリー法の仕組みを用いて、いかに地域における公共交通機関の円滑化や街づくりを進め、同時に、当事者評価の仕組みを活用していくかということについて、佐藤聡氏(DPI日本会議事務局長)より報告がありました。
最初に、新しく位置付けられた当事者評価の仕組みである『移動等円滑化評価会議』の説明があり、年に2回程度、中央にて同名の会議が開催されるとともに、地域分科会(北海道、東北、関東、北信越、中部、近畿、中国、九州、沖縄)も開催されるとの報告がありました。各地方においてはこの分科会に、当事者が参画することの重要性と、実際に当事者が、現地におもむくなどして、ユーザーとしての評価を報告していくことの重要性が説かれました。
各地域が、実際の街づくりとして、運動にすぐ取り入れらえる仕組みとしては、「移動等円滑化促進方針(マスタープラン)・バリアフリー基本構想作成に関するガイドライン」をいかに活用していくかという説明がありました。
(移動等円滑化促進方針・バリアフリー基本構想作成に関するガイドラインは、上記リンク中の<作成方法>から確認できます)
マスタープランは、市町村がつくるバリアフリー化の方針であり、市町村全域のバリアフリーに関する方針を明確にする目的と、市町村内の旅客施設を中心とした地区や、高齢者、障害者が利用する施設が集まった地区を『移動等円滑化促進地区』と位置付け、公共交通、建物、街づくり等について面的・一体的な方針を示すものであり、そのうえで、具体的な計画である『基本構想』において『重点整備地区』と位置付けることで、バリアフリー整備が進められる可能性が示されました。
重点整備地区に位置づけられるメリットとしては、バリアフリーを重点的かつ一体的に推進する地区となり、重点整備地区においては小規模店舗等(基準適合義務のない小規模店舗等)も助成が用いられる説明がありました。
(図:移動等円滑化促進方針・バリアフリー基本構想作成に関するガイドラインから転載)
基本構想は住民提案型で作られることから、バリアフリー化が急務と考えられる地区については、基本構想をつくるように、行政機関への働きかけを行う運動の方向性が示されました。また建設設計基準(追補版)についての説明では、法律が定めていない内容について個別に条例をつくることで基準を設けることができる(委任条例)の可能性が示されました。
第2報告では、工藤登志子氏(DPIバリアフリー部会、STEPえどがわ)から、「高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例」(東京都建築物バリアフリー条例)について、ホテルの一般客室に対するバリアフリーの基準の問題点について報告がありました。「条例では客室の出入り口からベッドやトイレ、浴室までの経路の幅が70cm以上」などの規定があり、これでは利用できない車いす利用者が出てくることが検証でわかりました。
▼「これでは客室の浴室・トイレに入れない」東京都バリアフリー条例改正案
この検証を元に働きかけた結果、条例に技術的助言として「便所又は浴室等の出入口に至る車椅子使用者の経路が直角路となる場合には、便所又は浴室等の出入口付近における通路の有効幅員は100cm以上が望ましいとされており、客室内の通路の計画に当たっては、車椅子使用者の利用に支障のないよう配慮する必要がある」という内容と、附則で「施行後三年以内の見直し規定」を入れることが出来たと報告がありました。
「おもてなし松山 観光地のバリアフリーの取り組み」
地元、愛媛松山からの報告として、金村厚司氏(特定非営利活動法人街づくりサークルスクランブル代表)が地元の公共交通等をになう伊予鉄道(郊外電車・路面電車・バスを運営)の、バリアフリー化(電車・バス・駅・電停・停留所等)の取り組みについて紹介がありました。
郊外電車のスロープ整備は進むも(35駅中29駅はスロープ設置)、路面電車の電停の整備は遅れている(28電停中10駅にスロープ設置)現状の説明があり、2017年9月から、精神障害保健福祉手帳保持者へのバス料金の助成制度が始まったことなども報告がありました。
ハード面ではまだまだ整備が進まないものの、伊予鉄道駅員・運転手等の対応は数年前から比べて格段に良くなっていることへの評価も述べられました。
愛媛松山においては、1970年代~90年代にかけては、運動団体の活動が発展的な時期であり、伊予鉄道とのバリアフリーに関する話し合いも具体的に行われていました(※主に、障害者の自立支援センター(故)水口英一氏が事務局長を務め推進)。
2000年代でも全国一斉交通行動の際は、伊予鉄道松山市駅前でのビラ配りや、年に1回、伊予鉄道の電車、バスの担当者と意見交換会が継続されていました。
当時を知る関係者(他の障害者団体や支援団体からも)は伊予鉄道のバリアフリーの取り組みがはじまるきっかけをつくったのは、”障害者の自立支援センター”の取り組みがきっかけとの声もあり、松山の今の在り方は、過去の取り組みからのレガシーと言えるのかもしれません。そのように考えるなら共生社会への当事者の参画を示す一例であるとも言えます。
このような取り組みは、自立生活センター星空をはじめとする後継団体に、新しい運動の形も模索されながら、引き継がれているように感じられます。
▼2016年5月13日 JR松山駅周辺再開発 障害者団体など、県と市に要望書(外部リンク:愛媛新聞online)
愛媛障害フォーラムでは、伊予鉄道との話し合いを、定期的に持つようにして、情報交換等を行うなどに努めていますが、具体的な活動には至っていないのが実情でした。
佐藤さんより、「地元で最も課題が感じられると意見が多く出た、JR松山駅周辺(伊予鉄道路面電停 JR松山駅や郊外電車 大手町駅)等の改修を進めるために、取り組みとしてマスタープランや基本構想を活用してはどうか」との助言をいただき、今後、愛媛障害フォーラムにても、どのように推進に関われるかなど、当事者の参画による検討が待たれる状況となっています。
武田 行雄(愛媛障害フォーラム事務局員)
以上
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