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【ポイントまとめました】京都市の「ALS患者嘱託殺人事件」裁判に何を問うか~重度の障害や疾患のある人たちが地域で生きていける尊厳生社会をめざして~(DPI全国集会「尊厳生分科会」報告・感想)

2024年07月11日 イベント尊厳生

DPI全国集会「尊厳生分科会」について、報告を下林慶史(DPI常任委員、日本自立生活センター)が、感想を参加者の見形信子さん(神経筋疾患ネットワーク)が書いてくれましたので、ご紹介します!


こんなことが報告されました(ポイントまとめ)

(敬称略)

1.渡邉 琢(日本自立生活センター(JCIL))

2.岡部 宏生(DPI常任委員・NPO法人境を越えて)

3.岡山 祐美(日本自立生活センター(JCIL))

詳細は下記報告をご覧ください。


尊厳生分科会では「京都市の『ALS患者嘱託殺人事件』裁判に何を問うか ~重度の障害や疾患のある人たちが地域で生きていける尊厳生社会をめざして~」と題し、報告とパネルディスカッションが行われました。

ALS患者嘱託殺人事件裁判を傍聴して

最初の登壇者は日本自立生活センター(JCIL)の渡邉琢氏で、ALS嘱託殺人事件の主犯格の大久保被告の裁判を傍聴して得られた情報や、後に調べて分かったことについて報告されました。

渡邉さん

渡邉氏によれば、今回の裁判はALS嘱託殺人を含む3つの罪で裁かれたもので、中でも量刑の重かったのは「精神障害を有する高齢者殺害事件」であり、ALS嘱託殺人事件の前提にはこの事件があったことが語られました。

「精神障害を有する高齢者殺害事件」では、被害者の息子と妻が大久保被告の共謀者となり計画・実行されたとのことでした。

犯行前後の被告たちのメールのやり取りやSNSへの投稿から、医師である大久保被告が立場と知識を利用して主体的に提案した内容を軸に計画・犯行が行われたことが示されており、大久保被告自身が出版した電子書籍(「扱いに困った高齢者を『枯らす』技術」)にも、高齢者の殺害等を示唆する内容が書かれているとのことでした。

なお、大久保被告は自閉症スペクトラムと診断され、自身もADHDだと認識しており、紆余曲折あったことから生きることを全く肯定できない状態であったとのことでした。

そして安楽死に手を染め「ALS嘱託殺人事件」の被害者である林優里氏と繋がり、犯行に及んだとのことでした。

続いてDPI常任委員でALS当事者の岡部宏生氏は、裁判後の3回の記者会見での発言をもとに報告されました。

岡部さん

1回目の2024年1月11日(木)の発言では、岡部氏は自身の置かれている環境が林氏に酷似しているとし、「介助を受けて充実した暮らしをしながらも『死にたい』と感じる時もあるが、周りの人に支えられ、また生きたいと思う。日々『生きたい』と『死にたい』を繰り返し、揺れながら生きている」と語られました。

また、林氏については「死にたがっていたことがクローズアップされているが、周りの人によっては生きる道を選択したかもしれない」と指摘し、大久保被告の行なったことは安楽死ではなく「殺人」であると力強く明言され、加えて安楽死を認めていない日本は重度障害者が生きていける最先端の国であると述べられました。

また2回目の2月1日(木)での発言で、大久保被告が林氏の文字盤を読み取りコミュニケーションを交わしたとされることに対して、初対面の状態で文字盤によるコミュニケーションを測るのは不可能であることを断言されました。

3回目の3月5日(火)の判決日には、「死にたい」と「生きたい」を揺らいでいたであろう林氏がもう戻ってこないことが何より悲しく、これは全ての人に関係する問題であると指摘されました。

次に岡山祐美氏は、所属しているJCILで取り組んできた、NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」をめぐる報道に対する抗議や、今回のALS嘱託殺人事件の裁判における記者会見での内容を中心に報告されました。

岡山さん

まず、2019年6月2日に放送された当該番組について、2019年6月24日に報道の問題点についてJCILから声明が出され、NHKとやり取りをしてBPO(放送倫理・番組向上機構)に調査・審議を依頼するも反応は芳しくなく、そんな最中、2019年11月30日にALS嘱託殺人事件が起き、その後すぐにBPOに質問状を送ったり、医師2名が逮捕された際にはJCILとして見解も出した、とのことでした。

大久保被告の裁判の際の記者会見では、JCILのメンバーをはじめ、岡部氏、増田氏などで、障害当事者・難病患者・ALS患者の思いを伝えました。

その中には「自分の命は家族や仲間が懸命に繋いでくれたものなので、死のうと思ったことはない」という声や「何度か死にたいと思ったことはあるけど、地域に出た今、様々な面で自由を感じており、生まれ変わってもまた、この自分で生まれたい」という思い、「このことは、生か死か選択させる社会の問題である。」と強い怒りを持って問いかけられたとのことでした。

そして、岡山氏からは自身の意見として、異性介助の耐え難い苦痛が一因であったこと、障害者・健常者の「生」を低く見る価値観が社会の根底にあることの問題点などを指摘されました。

法制化をめぐってのパネルディスカッション

第二部のパネルディスカッションでは、ALS/MNDサポートセンターさくら会の川口氏の進行で行われ、冒頭に2000年ごろから続く、安楽死・安楽死法制化に対する反対運動の歴史について、当事者とその周辺の人たちが繋がり、運動を継続することで、法制化の波を跳ね返しており、そこには先人たちの思いが詰まっている旨が語られました。

尊厳生登壇者

その後、「尊厳死法制化の大きな波に対して今後、どのよう捉え、反対運動を展開するか」という旨の4つの質問を川口氏が出され、自立生活運動に携わる4名の難病・障害当事者の方が各自の意見を述べました。

パネリストの方々は、ご自身の体験や日々の暮らしの中から「死にたい」=「権利」とすることの問題点や揺らぐ気持ちはあっても、ピアサポートによって支え・支えられてきた思いについて切に語っておられました。

私は今回の尊厳生分科会に参加して、一連の事件が紛れもなく「殺人」であることを改めて知るとともに、「死にたい」と「生きたい」を揺らぐ日々も含めて「生きる」ということなのではないか、と考えるようになりました。

そして「いろいろあるけど生きていこう」と思う側には、ピアサポートによる寄り添いが非常に重要であると痛感しました。

下林慶史(日本自立生活センター)

参加者感想

〜死にたいって思うのは自由、生きるは無条件に保障される権利!〜

私は小さい時、障害があることで親から周りに隠されて暮らしていました。

家族に遠慮し、施設では異性介助を受けたり、孤独感、劣等感、無力感に襲われたり、死にたいと思った時期もありました。

でも、死なないと退所できなかった仲間、自立生活の夢半ばで病気で倒れた仲間の分も「生きよう」と思うようになり、収容されているのはおかしい、社会を変えたいと思いました。

施設を出て地域で生きる方法※(自立生活プログラムとピアカウンセリング)を知り、介助者を育てることも学びました。何倍も施設より安心で楽しい暮らしができています。

めちゃめちゃ明るく生きているっていうわけでもないですが、悩んだ時は同じ障害のある仲間や友人に話を聞いてもらったり、遊んだり。夫に愚痴を言ったりして。

「こんな身体で生きていても仕方がない」「生きるのが辛い」って思ってもいい。その気持ちを聴く仲間と繋がる大切さを痛感します。

「最期まで生きたい」「生きる」を全力で応援してほしい。生きるための手段は限りなくあるはず。

死の選択は【事故決定】です。本当に本人が死を望むわけじゃない、そう社会に思わされてるだけ。

安楽死させる法律なんて要りません。人が幸せを追求する権利、誰もが助けをもらっていい権利、生存権を保障する人権法が必要なのです。

見形信子(神経筋疾患ネットワーク)


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