【報告】「2024タウンミーティングin大分 障害者権利条約を活用した法制度整備」(キリン福祉財団助成事業)
2025年03月24日 イベント地域生活バリアフリー権利擁護障害者権利条約の完全実施
2025年1月25日(土)にタウンミーティングin大分をDPI日本会議と自立支援センターおおいたが共催しました。
このタウンミーティングは公益財団法人キリン福祉財団の助成事業である「障害者権利条約の審査・総括所見を活用した国内法制度整備事業」の一環として、国連障害者権利委員会から出された総括所見の意義やその内容を障害者団体や市民に広く共有する普及啓発と総括所見を活用した地域課題への取り組みの促進などを主な目的として実施しています。
この大分のタウンミーティングでは第一部で「権利条約」、「差別解消法」、「バリアフリー」の3つのテーマについて、DPI日本会議副議長の尾上浩二による基調講演、「障害者権利条約と差別解消・バリアフリー~世界とつながり、地域から変えていこう~」が行われました。
基調講演では、障害者権利条約について、特に2022年に行われた国連・障害者権利委員会による対日審査に関する取り組みと総括所見の内容について説明しました。また、改正障害者差別解消法の概要とともに法改正により民間事業者も義務化された合理的配慮の考え方について詳しく話しました。
特に合理的配慮については、尾上自身のホテルでの経験を紹介しながら、合理的配慮の提供にあたっては①代替措置の選択も含め、②双方の建設的対話により、③必要かつ合理的な範囲で柔軟に提供されることが重要であるとして、具体的な合理的配慮の提供に至る過程について解説しました。
一方、差別解消法の課題として、相談・紛争解決の仕組みが不十分であるとし、相談件数をカウントしてない自治体が半数以上、年間件数9件以下を合わせると96%にも上ること、差別にあった時の相談体制として相談がたらい回しにされないよう、ワンストップの相談窓口が重要だと指摘され、内閣府に作られたつなぐ窓口の取り組みについて紹介しました。
バリアフリーについては、この間の権利条約やオリパラを契機としたバリアフリー法改正の内容や各種の基準の見直しについて紹介されました。大きな成果として2021年の義務基準改正により、総席数が1001席以上の新幹線・特急車両では車いす席が6席以上となったことなどが紹介されましたが、一方でタウンミーティング開催地である大分県の別府市への移動時に乗車した特急ソニックの車いす席がとても狭く、通路を塞ぐような作りになっていたことから、改善が必要だと指摘しました。
公共交通のバリアフリー整備は都市部ではだいぶ進んでいる一方で、地方のバリアフリー整備が遅れていること、また小規模店舗やホテル、住宅などの建物関係も課題であると述べました。
最後のまとめでは尾上が長い間障害者運動に携わってきた経験から、障害者が街に出ることによってバリアが可視化され、それを壊していくことでバリアフリーが進んだとして、実感としてはバリアフリーという言葉よりもバリアを壊すという意味で「バリアブレイク」という言葉の方がしっくりくる、と言っていたのが印象的でした。
第二部のシンポジウムでは「障害者差別解消法・合理的配慮の推進に向けて」をテーマにNPO法人自立支援センターおおいた代表の後藤秀和氏によるファシリテートのもと、大分県議会議員の猿渡久子氏、別府・大分バリアフリーツアーセンター代表の若杉竜也氏、自立生活センターぐっどらいふ大分の安部雄貴氏に登壇していただきました。また、基調講演をした尾上もコメンテーターとして引き続き登壇しました。
シンポジウムの中では、身近な合理的配慮が進んだ事例として散髪屋に行った時に最初はスロープがついていなかったが、一度車いすで散髪屋に行ったことで店長さんが気づいてくれて、後日散髪屋にスロープがつけられていたという事例が報告されました。法律や制度を作るためにもこうした障害者が実際に街に出ることでバリアにぶつかり、それを壊していく取り組みの積み重ねが重要であることが示唆されました。
また、別府・大分バリアフリーツアーセンターの取り組みとして、別府市内のバリアフリー観光情報の発信などが紹介されました。市内のバリアフリーは進んでいる一方で、空港からのアクセスについてはまだ課題が多く、地方における公共交通のバリアフリーの課題があらためて確認されました。
その他、第一部の権利条約の話との関連で障害者手帳の対象にも難病の対象にもならない制度の谷間におかれて困っている人がいるという話もありました。
参加者からも積極的に感想や意見、質問が出され、どれも合理的配慮やバリアフリーにかかわる具体的なお話で大分という地域の実情と課題について知ることができました。
ファシリテーターの後藤氏からも1つ1つの事例をもとに地域や社会を変えていくことの重要性が話され、あらためてDPIと地域の団体と連携した運動の重要性を確認する貴重な機会となりました。
最後に、共催いただいた自立支援センターおおいたのみなさま、助成いただきました公益財団法人キリン福祉財団の皆様に心より御礼申し上げます。
報告:白井(事務局次長)
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