全ての人が希望と尊厳をもって
暮らせる社会へ

English FacebookTwitter

【ポイントまとめました】「障害者雇用と合理的配慮の確保 ~労働組合運動と訴訟を通して、働く障害者の権利と合理的配慮を考える~」(DPI全国集会「雇用労働・所得保障分科会」報告・感想)

2023年06月16日 イベント雇用労働、所得保障

DPI全国集会「雇用労働・所得保障分科会」について、報告を戸田二郎(DPI常任委員)が、感想を参加者の小島絵美さんが書いてくれましたので、ご紹介します!


こんなことが報告されました(ポイントまとめ)

(敬称略)

1.相星勝利(自治労障害労働者全国連絡会 代表幹事)

2.訴訟原告と弁護士

3.東俊裕(DPI日本会議顧問、元弁護士、元熊本学園大学教授)

詳細は下記報告をご覧ください。


分科会開催の経緯

今年の雇用・労働・所得保障分科会「障害者雇用と合理的配慮の確保〜働く障害者の権利と合理的配慮について、労働組合運動と訴訟を通じて考える〜」では、障害者の雇用を促進する法律において、官民を含めた雇用主と障害当事者の間には合理的配慮に関する認識の隔たりがあります。

この課題に対して、労働組合運動と合理的配慮の確保を争点とした訴訟についての経過と争点を通じて、障害者雇用における合理的配慮の確保に向けた現状と課題を共有し、障害者が働くために必要な合理的配慮を推進することを目的として企画しました。

分科会で議論したこと

伊藤常任委員は冒頭で「広島でのG7で障害者の人権に触れられなかったのは残念です。DPIはインクルーシブ雇用議連の市民側会合やビジネスと人権市民社会プラットフォームにも参加しており、今日の議論を参考に今後の取り組みを進めていきたいと思います。」とあいさつしました。

伊藤常任委員のあいさつ

最初に相星勝利氏(自治労障害労働者全国連絡会代表幹事)からの報告がありました。障労連は全国14県の自治労で組織されており、職場での人事異動に伴う合理的配慮の不十分さやITの進化による対応不足などの問題が存在しています。この問題の解消には、他の団体と連携を強化し、改善に取り組む必要があると述べました。

相星さん

次に、障害者を持つ方の合理的配慮に関して企業に対し訴訟を起こしている原告のぷるもさん(匿名での登壇)らの報告がありました。ぷるもさんは、発達障害の診断を受けた後、外資系の会社で働いていました。

入社時に期待していた合理的配慮を得られたものの、その後、異動になり、引継ぎをしたはずの新たな上司からは十分な対応を受けず、権利を主張した際に軋轢が生じました。この事例から、障害者に適切な配慮が不十分であると感じ、働きやすい環境の確保を求めて裁判を起こしたそうです。

続いて、原告の訴訟代理人である伊藤弁護士から裁判の争点について解説がありました。伊藤弁護士は、労働契約法19条や障害者差別解消法に基づき、障害者雇用における合理的配慮の権利を主張する訴訟を担当しています。

伊藤弁護士

訴訟の過程で明らかになったのは、企業側の合理的配慮の認識の欠如や差別的な態度が障害者の雇用機会を制限しているという事実です。裁判所は合理的配慮の重要性を認めつつも、その具体的な内容については判断を避ける傾向にあります。

私たちは訴訟を通じて障害者の権利を守り、合理的配慮の具体的な要件を明確化するために取り組んでいると述べました。続いて、同じく原告の訴訟代理人である早田弁護士が、合理的配慮の中身について触れました。

早田弁護士によれば、合理的配慮は個々の障害によってその内容が異なり、原告の障害についての特性についてはメモも用意して提出するなどしてきました。また、指示が曖昧になるため、口頭や書面で何度も配慮を求めるよう伝えてきました。

早田弁護士

しかし、会社側はそれらに十分に対応しなかったため最終的には雇止めになりました。裁判官からは詳細な報告がなされましたが、まとめが不十分であり、資料を参照して欲しいとのことでした。

休憩後、東俊裕(DPI日本会議顧問、元弁護士、元熊本学園大学教授)から「障害者権利委員会の勧告と職場における合理的配慮の確保」について講演をいただきました。

東さんと西村さん

今回の日本政府に向けた総括所見は非常に力強い内容の勧告となっています。まず、日本は一般就労と福祉的就労に分かれており、同一労働・同一賃金を保証する形で一般就労を推進する必要があります。

次に、より困難な状況の雇用を促進する必要があります。さらに、雇用の場でのパーソナルアシスタントの導入も進めるべきです。

これらの指摘に関して、東さんは障害者は適切な配慮がない中で主張することが難しく、孤立することがあると述べました。

また、雇用促進法の実態に関しては、パラレルレポートでの指摘が不十分だった可能性があると指摘しました。

最後に、障害者を雇用する際には厄介者という認識があるのではないか、差別的なハラスメントが障害を助長している可能性があると述べました。

今後に向けて

分科会では、障害者雇用における合理的配慮の確保が重要であると結論づけました。社会全体が理解し、障害者の能力を最大限に活かせる雇用環境の整備が求められます。これにより、より包括的かつ公正な社会の実現に貢献することが期待されます。と、西村部会長が締めくくりました。

(DPI常任委員 戸田二郎)

参加者感想

合理的配慮を求めても配慮の拒否や拒絶、そして上司からは心無いひどいことを言われ、それを訴えても会社は対応してくれない。そしてうつ病の増悪により休職、退職に追いやられる。他企業でも起こっている現実であり、大変共感しました。きっと日本中の多くの企業で合理的配慮への誤解や認識の差があるのではないでしょうか。

障害のある人の発言を信じてもらうのがいかに大変か、身を持って実感し、闘っております。

まずはぷるもさんの言うように、(障害者差別をなくすための研修、とりわけ、管理職に対し、障害を有する職員に必要な措置を講じるための研修や対応マニュアルの整備と、管理職研修の実施などの取り組みを促すこと)を行って欲しいです。

そして、国民全体に合理的配慮について、障害者差別や虐待についてもっと知ってもらいたいです。誰もが障害者になる可能性がある、明日は我が身という事も。

ぷるもさんの(障害者が職場で辛い目にあった際は泣き寝入りせずに自身の権利を主張できること、合理的配慮を求めることは個人のわがままではないということを、障害を持つ当事者にも知っていただきたい。)と言う言葉に感化されました。私も当事者としてきちんと声を上げていきます。

しかし、いつ、どこに、どのように訴えていったら良いかが手探り状態です。この部分に関しても、当事者が声を上げやすい仕組みが分かりやすくあって欲しいなと思います。

(小島絵美)


私たちの活動へご支援をお願いします

賛助会員募集中です!

LINEで送る
Pocket

現在位置:ホーム > 新着情報 > 【ポイントまとめました】「障害者雇用と合理的配慮の確保 ~労働組合運動と訴訟を通して、働く障害者の権利と合理的配慮を考える~」(DPI全国集会「雇用労働・所得保障分科会」報告・感想)

ページトップへ