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【ポイントまとめました】「社会モデル/人権モデルから考える支給決定の在り方」(DPI全国集会「地域生活分科会」報告・感想)

2023年06月13日 イベント地域生活

DPI全国集会「地域生活分科会」について、報告を下林慶史(日本自立生活センター・DPI常任委員)が、感想を油田優衣さん(京都市在住、SMA当事者)が書いてくれましたので、ご紹介します!


こんなことが報告されました(ポイントまとめ)

(敬称略)

1.沖田大(メインストリーム協会)

2.馬場秀司(CIL星空ワオ・アドベンチャー)

3.殿村久子(CILくにたち)+蛭川涼子(STEPえどがわ)

4.今村登(DPI事務局次長、STEPえどがわ代表)

詳細は下記報告をご覧ください。


分科会開催の経緯

DPIビジョン2030で「脱施設の法制化」を掲げていること、そのとっかかりとして「地域移行コーディネーター」の設置を主軸に訴えていること。その結果、障害者総合支援法改正において設置の努力義務を課すことができました。しかし、その一方で重度訪問介護の支給決定等で地域間格差があり、地域移行が進まない現状があります。この分科会では、様々な事例の共有を通して人権モデルに基づいた支給決定の在り方について考え、今後の取り組みに活かすべく開催しました。

分科会で議論したこと

地域生活分科会では、各地の事例として、まずメインストリーム協会事務局長の沖田氏から西宮市の事例や現状について報告がありました。重度訪問介護が比較的手厚く支給されており、2003年の支援費制度の頃から柔軟に運用されていました。しかし、2006年からガイドラインができたことで、呼吸器を付けている方以外は支給が出にくくなっている場合があるとのことです。

沖田さん

行政担当者の異動によっても変化があります。他市に比べて支給決定は出やすいのですが、運用されていない制度もあり地域間格差を感じているとのことでした。

地域移行コーディネーターについては、先んじて取り組まれてきましたが、役割を担う人への負担が重なり、動きにくさがありました。今後は制度が浸透すると共に動きやすさが出てくるのではないかとのことでした。

次に、CIL星空ワオ・アドベンチャー代表の馬場氏からはALSであるご自身の24時間介助獲得までの道のりについて語っていただきました。馬場氏は2018年にALSの確定診断を受け現在は24時間970時間出ています。

馬場さん

昨年4月に重度訪問介護の費用について相談。先に介護保険を利用していること、家族が介護していること、前例がないことなどを理由に門前払いされたとのことでした。

その後、広域協会に相談し、行政と交渉を始めた希望する地域で安心して暮らしたい旨や法律や権利条約、他都市の事例を提示しました。行政の回答としては介護保険優先が原則であり、介護保険で足りない部分を障害福祉で補う、とのことでした。

必要性を確認するためにヒアリングが行われ、ヒアリングの際は非常によく話を聞いてくれたのですが、区分認定6になったものの、支給決定された時間数はあまりにも少なく愕然としたとのことでした。

以後、弁護士を通してやり取りすることになったところ、現在の時間数か支給決定され、裁判はせずに済んだものの、当事者がそこまで動かないといけない現状や地域間格差を感じたとのことでした。

STEPえどがわの蛭川氏とCILくにたちの殿村氏からは、江戸川区の全身性脳性麻痺者の事例についての報告がなされました。江戸川区では、2016年ごろは24時間の支給決定の壁は厚く、「江戸川区の介護保証を確立する会」を発足させ、弁護士などにも関わってもらいながら交渉を続け1年半かけてALSの方と知的障害の方の24時間介助を勝ち得たそうです。

蛭川さん

しかし、全身性脳性麻痺者の介助は21時間止まり。その後も依然として脳性麻痺者の支給決定は厳しかったのです。

全身性脳性麻痺者であったFさんから江戸川区での自立希望がありましたが、支援者不足や行政交渉の難しさから江戸川区ではなくS区での自立を模索していました。しかし、S区にはCILがなく、Fさんの検討の結果、他市への転居で話を進めました。

殿村さん

そこからCILくにたちのサポートを得て動いたとのことです。殿村氏によれば、その後、ケースワーカーと綿密にやり取りをし、転居前に審査会が開かれ、24時間支給決定したとのことでした。その後、住居探しなどの環境整備を行い、4ヶ月後には自立を達成されました。それを聞いた蛭川氏は自治体による格差を痛感したとのことです。

続いて登壇していただいた方に再度、補足で発言をいただき、申請主義の問題点や制度へのアクセスのしにくさ、それらに対して徹底的に戦う姿勢を示すことが重要であると、行政交渉のスキルを身につけることの必要性、これまでの障害者運動の粘り強い積み重ねなど様々な視点で語られると共に今後拡充を求めていく「地域移行コーディネーター」も新たなサービス・資源を作り出すと言う視点を持つ必要があると指摘されました。

今後に向けて

このような登壇者からの発言を受け、最後に今村氏から、「ローカルルールが抑制に使われるのが問題であり家族が疲弊している。障害の有無に関わらずどこに誰と住むかは認められるべき自由権であり、DPI日本会議として地域移行コーディネーターを充実させていくことと併せて取り組んでいきたい」と発言があり、分科会は締めくくられました。

(日本自立生活センター 下林慶史)

参加者感想

本分科会では、西宮市の支給決定をめぐる状況の変遷や、愛媛県で一日24時間以上の時間数を獲得した馬場さんのお話、東京都での地域移行の事例を聞かせていただきました。

なかでも印象に残ったのは馬場さんのお話です。行政交渉の詳細な報告からは、学ぶことが多かったです。行政と果敢に交渉してきた馬場さんのパワー溢れる行動を心から尊敬するとともに、一方で、なぜ馬場さんがここまでしなければならなかったのか、ここまで強い思いとエネルギーをもって行政とやりとりし続けられる人はどれだけいるのだろうとも感じました。

話全体を通じて、再度、痛感したのは、支給決定をめぐる地域格差の大きさです。障害者権利条約19条には「居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有する」権利が記されていますが、日本はまだまだその状況には程遠く、どこに住んでいるか/住もうとするかによって(今流行りの言葉で言えば「自治体ガチャ」次第で)、当事者の生活の可能性は大きく制限され、また「当たり前の生活」を手に入れるために当事者がどれだけ(行政交渉のための)労力を払わねばならないかが大きく変わってしまいます。

そのような状況を変えていくためにも、全国の事例から学び、ノウハウや知識、思いを共有しつつ、引き続き動いていきたいと改めて思いました。

(京都市在住、SMA当事者 油田優衣)


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