【ポイントまとめました】DPI政策論 障害女性分科会報告・感想「6条だけではない!~障害者権利条約における複合的・交差的差別の位置づけ~」
12月4日(日)DPI政策論「障害女性分科会」について、報告を村田惠子(DPI常任委員)が、感想を木村由美さん(自立生活センターてくてく)が書いてくれましたので、ご紹介します!
こんなことが報告されました(ポイントまとめ)
(敬称略)
1.キム・ミヨン(国連障害者権利委員会副委員長)
- 女性と障害という生物学的側面だけでなく、ジェンダーという視点で捉えることにより、ジェンダーと平等という概念で考えることが重要になる
- ジェンダーと障害の交差的差別という概念はダブル差別という考え方から始まったが、障害のある女性が多く集まる中で障害と女性という単純なダブルの問題ではなく、様々な問題、マイノリティの問題があることが分かった
- 障害者権利条約の総則にあたる1条から9条の中の第6条に「条約に定める人権と自由を行使し目的として」という文章が入ったことがすべての条項において横断的な課題とすることにつながった
- 第6条の「複合差別」という言葉は、障害女性だけのものではなく、様々なマイノリティの立場にある人達への救済に大きく影響を与える
- 総括所見に書かれたすべてのものは履行しなければならないことではあるが、書かれていないことを根拠に履行しないというものではない
- 障害女性に関する人権、権利は、今までの人権概念を揺り動かす力がある
- 私たちの世代でやらなければいけないこととして、障害女性の平等、複合差別について、国レベルでどのように法律や制度に反映させるか、考えていかなければならない
2.藤原久美子(DPI常任委員・DPI女性障害者ネットワーク代表・NPO法人CIL神戸Beすけっと)
- ジュネーブでは特に、あらゆる法律に障害女性の実態を把握し解消するための施策を実施するという文言を明記することと、性被害の防止と権利を守るため包括的性教育の実施を求めた
- 第5次障害者基本計画に障害のある女性に関する文言が案として出されようとしている
3.指定発言 田中恵美子(東京家政大学)
- 第6条障害女性に関連するということは、すべての条文に関連している分野、横断的なもの
- 障害女性という言葉がなくても障害女性の問題があると想起しなければならない
- 障害のある女性がメインストリーム化されることで、他の少数派の人たちが声を挙げやすい環境をつくることにつながる
詳細は下記報告をご覧ください。
分科会開催の経緯
障害者権利委員会の総括所見における横断的な障害のある女性への課題の認識から社会的にも障害のある女性の課題をメインストリームされる必要性があります。法制度への具体的な成果に繋げていきたいです。
分科会で議論したこと
国連障害者権利委員会副委員長 キム・ミヨン氏から
国連障害者権利委員会副委員長のキム・ミヨン氏から、障害者権利条約の第6条に「障害女性」が実現した経緯と日本政府への総括所見で横断的に障害女性の権利が入った意義について以下のとおり報告されました。
障害女性については、女性と障害という生物学的側面だけでなく、ジェンダーという視点で捉えることにより、ジェンダーと平等という概念で考えることが重要になります。
ジェンダーと障害の交差的差別という概念はダブル差別という考え方から始まりましたが、障害のある女性が多く集まる中で障害と女性という単純なダブルの問題ではなく、様々な問題、マイノリティの問題があることが分かりました。複合差別という言葉は障害者権利条約の策定過程で生まれたものです。
障害者権利条約に障害女性の権利を検討することは簡単ではなかったが、韓国が提案した草案への15条をもとに特別委員会で障害女性の議論が始められた。多くの国、国際法の学者からの反対がありましたが、ヨーロッパと韓国の女性による障害女性の権利への協働が生まれました。
障害女性が代表を務める団体からの支持やアラブ諸国の女性障害者が自国を説得しました。国際障害フォーカスでも女性委員会がつくられて議論されることになりました。前文や主要な条項にジェンダー、障害女性を入れ、第6条について国連アジア太平洋障害者経済社会委員会の文章をもとに起草して議論を始めました。
条約の総則にあたる1条から9条の中の第6条に「条約に定める人権と自由を行使し目的として」という文章が入ったことがすべての条項において横断的な課題とすることにつながりました。
第6条の意義は「複合差別」という言葉が入ったことです。「交差的差別」という言葉を入れることをめざしたが世界各国で「複合差別」という言葉が入った法のない背景から実現しませんでした。
「複合差別」という言葉が条約に入ったことから、国際人権法上では難民、先住民、複合的な、様々なマイノリティの属性をもつ人たちへの差別の概念を広げることができました。
国際人権法では高く評価されている。障害女性が受ける差別の複雑さは理解が困難であり、障害女性に対する政策や施策がなく、障害女性に関する報告がされていないなど、一般の社会や男性障害者、障害界に未だ理解が進んでいないことが起因していると捉えています。
障害者権利条約に「複合差別」が入ったことにより、障害者に関する法制度、施策はもとより、憲法など国の基本となる法律にも「複合差別」を盛り込むようにしないといけません。世界各国にある法律で「複合差別」を明記したものはないため、複合的マイノリティに対する差別を防止する法的根拠がありません。
障害者権利条約は国際法上の義務ですが、国内法に反映させることが履行につながります。「複合差別」という言葉が位置づけられれば、たとえば女性に対する暴力の中に、障害女性、複合的マイノリティの立場にいる女性に対する暴力が位置づけられます。構造的に解決するには「複合差別」を法律や制度に盛り込まなければなりません。
第6条の「複合差別」という言葉は、障害女性だけのものではなく、様々なマイノリティの立場にある人達への救済に大きく影響を与えるものです。「複合差別」はすべての少数者への差別、平等にかかわることであり、ジェンダーという言葉により女性の平等も同時に意味し、その意義を強調しています。
総括所見は、障害女性にとってすべて満足できるものではありません。総括所見に書かれたすべてのものは履行しなければならないことではありますが、書かれていないことを根拠に履行しないというものではありません。
障害者権利条約本文が、国が履行しなければならない法的根拠となるものです。総括所見はその中でも特に重要な緊急的な履行しなければならない課題を指摘しています。
今回、日本政府への総括所見では18頁におよぶものとなりましたが、障害女性についてすべてを挙げることはできませんでした。総括所見、一般的意見は効力をもった文書です。障害女性に関する人権、権利は、今までの人権概念を揺り動かす力があります。
私たちの世代でやらなければいけないこととして、障害女性の平等、複合差別について、国レベルでどのように法律や制度に反映させるか、考えていかなければなりません。
DPI常任委員・DPI女性障害者ネットワーク代表 藤原久美子氏から
障害のある女性の状況は残念ながら変わっていません。
女性であり障害者であることで性差別と障害者差別の両方を受けることにより困難が重なってしまいます。また障害者として一括りにされてしまい、女性として尊重されない状況の中で、家庭・施設・病院等での搾取に遭い、更に性的な搾取をされてしまいます。これは社会的に弱い立場にあることから起きるものです。
ジュネーブでは、私たちは特に、あらゆる法律に障害女性の実態を把握し解消するための施策を実施するという文言を明記することと性被害の防止と権利を守るため包括的性教育の実施を求めました。そして総括所見では、障害女性の課題が横断的に捉えられ、12の条項に障害女性に関する文言が入りました。
これからの活動として、第5次障害者基本計画に障害のある女性に関する文言が案として出されようとしており、具体的に実行するためには障害女性の参画、同性介護の標準化といった文言が入っているか、総括所見の勧告を活かし、障害女性の課題をメインストリームしているかをチェックしていきたいです。
東京家政大学 田中恵美子氏から(指定発言)
総括所見では障害女性にかかわる多岐に渡る内容について書かれています。第6条障害女性に関連するということは、すべての条文に関連している分野、横断的なもので、障害女性という言葉がなくても障害女性の問題があると想起しなければなりません。
障害のある女性について意識することは差別の複合性、交差性、重なり合うだけではなく絡み合ってより複雑に差別を生み出すことを障害女性という言葉の中に含まれています。少数派、マイノリティの立場にある人達を前提にした議論を展開していくことになります。
障害のある女性がメインストリーム化されることで、他の少数派の人たちが声を挙げやすい環境をつくることにつながり、課題を通じて連携し現状を変えていくという取り組みにつながるのではないかと思います。
今後に向けて
今後改正される障害者基本計画、障害者差別解消法、男女共同参画基本計画、地方条例への障害のある女性の課題への具体的な施策の明記、審議会等への障害女性の委員としての参画が進むよう、取り組んでいきたいです。
全国頸髄損傷者連絡会 村田 惠子
参加者感想
今回の分科会は、女性障害者は、女性であるという事と、障害者であるということで複合的に、交差的に差別を受けており、それらが複雑に絡み合うことで問題解決の糸口が見えにくくなっているという問題と、ジュネーブでの対日審査の様子、また厳しい勧告を受けて今後日本がやるべきことについてお話がありました。
私個人としてはまず障害女性は交差的に差別を受けているということに同感し、さらに被害を受けても受け皿が無いために逃げ場が無い。もしくは障害のために声が上げられない。もっと言うと声をあげて良いんだということを学ぶ機会が無い。という実態等々に、その通りだよなあと深く共感しました。
また対日審査の報告からはたくさんのことを学びました。ただ私個人的に感じることは条約や、法律は存在することはとても意義あることですし、重要であるとは思います。ただ一方でその法律や、条約をきちんと一人ひとりが生活レベルまで落とし込んで行くことそしてその法律を使って生活を豊かにしていくことの両輪が回って初めて意味があるものになるのだと思っています。
勧告を受け、日本はまだまだ改善しなければならないことが多くあることが分かりました。
私個人的には女性障害者の問題には特に法改正も含め様々な女性障碍者が関わる必要があると感じています。
ただそれだけではなく女性のエンパワーメント、「特にパワーレスな女性障碍者の救済」や深刻な問題に対応できるように人的、物質的な手厚い支援とそれを作れるための法制度の両方が整えられるような仕組みを女性障害者の立場から作るあるいは今ある法律を変えていく必要があると思いました。
そしてそのことを個々人が活用し、浸透してきて初めて法は生きてくるのではないかと思いました。
自立生活センターてくてく 木村由美
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