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【ポイントまとめました】「総括所見の国別インパクトー勧告をどう受け止め、どう実践したか」(DPI政策論「国際協力分科会」報告・感想)

2022年12月26日 イベント国際協力/海外活動

DPI障害者政策討論集会2日目「国際協力分科会」について、報告を光岡芳宏さん(ヒューマンケア協会)が、感想を尾上裕亮さん(障害者の生活保障を要求する連絡会議)が書いてくれましたので、ご紹介します!


こんなことが報告されました(ポイントまとめ)

(敬称略)

降幡博亮(DPI常任委員):南アフリカ

井上武史(メインストリーム協会):コスタリカ

Anjana K C(ポカラ自立生活センター):ネパール

Arunee Limmanee(ラチャスダ大学):タイ

Chuluunaa Undrakhbayar(ユニバーサル・プログレス自立生活センター理事):モンゴル

崔 栄繁(DPI日本会議議長補佐):韓国

東 俊裕(熊本学園大学、国連障害者権利条約アドホック委員会日本政府代表団アドバイサー)

詳細は下記報告をご覧ください。


分科会開催の経緯

国際協力分科会は「総括所見の国別インパクト―勧告をどう受け止め、どう実践したか」と題し、障害者権利委員会からの総括所見を受けて、取り組みを進めてきた諸外国の報告を今後の日本での取り組みに活かすことを目的としました。

分科会で報告・議論したこと

降幡さんと西村さん

・南アフリカ

DPI日本会議の降幡氏が、南アフリカは2007年に障害者権利条約(CRPD)に署名、同年11月に批准し、2018年に総括所見を受け取り、その内容を受け政府が2019年に女性・子供・障害者省を、女性・若者・障害者省に再編したと報告しました。

2020年には新型コロナによるロックダウンで障害者関連施策が停滞し、その後2021年12月にユニバーサル・デザインとアクセスに関する全国戦略枠組が作られ、2022年6月になりコロナ規制が完全撤廃され、障害者関連施策が再開されています。

井上さん

・コスタリカ

メインストリーム協会の井上氏が、批准が2008年、同年メインストリーム協会のコスタリカ支援が、JICA自立生活研修の事前調査から始まり、障害当事者のエンパワメントが自立生活運動を通じて行われてきたと、現地から報告しました。

その後、2014年に総括所見が出され、国会障害者自立フォーラムの開催、2016年の障害者の自立法の大統領署名へと続いていきました。

この間、障害当事者リーダーの育成、自立生活センターの設立、TRY Costa Rica、国会議員へのロビーイングなど、障害者運動果たしてきた役割も非常に大きいものでした。

アンジャナさん

・ネパール

自立生活センターポカラのアンジャナ氏が報告しました。2009年に批准、2018年に総括所見がだされました。

勧告内容の実施に向け、政府と議会のメンバー、関連する省庁、司法機関、法執行官、関連する専門家グループ(教員、医療従事者、法律専門家など)、そして地方自治体、民間セクター、メディアに対して、協力の上、活動することを求め、2024年6月までに報告書を提出することとされています。

アップルさん

・タイ

発表はタイ盲人協会のアップル氏からでした。2008年に批准し、2016年に建設的対話に参加し、総括所見を受け取りました。

その後、国内法との調和は、障害者権利条約の漸進的な実現に寄与する重要な要素であること、市民社会団体などの参加、特に障害者団体は、そのプロセスを迅速化し、障害者の完全な参加を確保できること。

そして国の内外のパートナー間での知識の共有や情報交換で、障害者権利条約の適用を履行することが確認されました。

バヤールさん

・モンゴル

報告は、ユニバーサルプログレス自立生活センターのバヤール氏でした。2009年に批准し、障害者の自立生活運動の広がりと共に、2016年のモンゴル障害者権利法の制定へと進みました。

2015年に総括所見が出され、これを用いて、新しい理念の下で様々な活動が行われていますが、多くの政策はまだ未実施です。理由には政府の知識不足や公務員の障害者への不適切な態度などがあり、今後の障害者の取組みが重要です。

崔

・韓国

報告は、DPI日本会議の崔氏が行いました。2008年に批准し、2014年に最初の総括所見が出され、精神保健福祉法の制定やインクルーシブ教育に関する「統合教育ガイドブック」などが作成されました。これらの整備に国家人権委員会が関わり、さらに市民社会は障害等級廃止運動や脱施設運動などを強力に展開し、障害者「運動なくして改革なし」であるとの強いメッセージがありました。

今後の取り組み

東さん

熊本学園大学教授の東氏は、6か国の総括所見から見えるのは、総括所見が現実(社会的障壁)を映し出す鏡であり、個別の人権の実現を阻害する障壁や、条約の実施・監視のメカニズムの障壁をあぶり出しており、今後も障害者運動による継続が不可欠であるとコメントし、締めくくりました。

DPI日本会議国際協力部会(ヒューマンケア協会) 光岡芳宏

参加者感想

「障害者権利条約と、各国に出される総括所見の存在は、障害者運動をする人が国内外の仲間と語り合っていく上で非常に意義深いものだ」。2日目に行われた国際協力分科会では、コスタリカ・タイ・ネパール・韓国・モンゴル等の障害者政策の現状を聞きながら、こう実感しました。

モンゴルでは2009年の条約批准以降、様々な法令が改善していきました。そこには、自立生活運動など、自国の現状を権利条約に合わすために結束した力強い当事者運動がありました。

2008年に批准したタイでは、政策立案過程に障害者を参画させるよう訴えながら、情報アクセスや雇用などを推進していきました。いずれの国でも、権利条約を大きなきっかけにして運動側が、改革を社会に求めていたことがよく分かりました。

複数の国で選択議定書を批准し国内人権機関を設置できていることは、日本が学ぶべきことです。権利条約に合っていない状況を個人が訴えやすくなるからです。

障害者権利条約は、福祉の国際的な質的な「ものさし」であり、権利条約を通して国外の人と語り合う。それは、新しい運動のかたちかもしれません。対面やオンライン会議で定期的(年に1回?)に自分たちの国の現状を共有する企画も、面白そうに思います。

障害者の生活保障を要求する連絡会議(障害連) 尾上裕亮


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