【ポイントまとめました】「総括所見、脱施設化ガイドラインから見た改正障害者総合支援法の到達点と課題」(DPI政策論「地域生活分科会」報告・感想)
DPI障害者政策討論集会2日目「地域生活分科会」について、報告を下林慶史(日本自立生活センター・DPI常任委員)が、感想を山下幸子さん(淑徳大学)が書いてくれましたので、ご紹介します!
こんなことが報告されました(ポイントまとめ)
(敬称略)
1.今村 登(DPI日本会議事務局次長、STEPえどがわ理事長)
- 予算配分を地域移行への配分に変え、精神科病院での入院について見直すこと
- 総括所見はグループホームなどの生活形態についても述べられている
- 法的枠組みおよび国家戦略、並びに都道府県の義務として地域移行・脱施設化に取り組むこと
- 既存の評価スキームに人権モデルで考えることなどの指摘を受け、緊急に対応すること
- 脱施設実現に向けて拠点コーディネーターのあり方検討会や19条実現のため、総合支援法全体の抜本的な改革に向けた検討会設置が必要
- DPIビジョン2030のバージョンアップが必要
2.丹羽 彩文(全国地域生活支援ネットワーク事務局長)
- 地域移行コーディネーターや地域生活支援拠点等について全国に行き届くためには必要な検討会を設置し、論点整理する必要がある
- 大きくわけて6つの課題(1.検討する場の設置、2.意向調査の実施3.地域移行コーディネーターの具体的な役割の明確化、4.継続的な意向調査と結果開示5.業務内容の整理、6.人材確保と養成)がある
3.田中 正博(全国手をつなぐ育成会連合会専務理事)
- 第19条に対する日本への懸念・勧告は入所施設を利用している親御さんからすれば、かなり衝撃的な内容
- 親亡き後の問題ではなく、本人自身の生き方をどう支えるかが重要である
- 地域で暮らす経験を重ねることや支援体制を整えること、計画を丁寧に作ることなどが必要
4.田中 恵美子(東京家政大学)
- 計画的に施設を廃止していくことをまずしなければならない
- 日本の障害者基本計画や障害者福祉計画は特に、揺らいではいけないはずの長中期目標が揺らぎやすい
- 脱施設化ガイドラインにおいては、都道府県の目標値年々下がっている
- 脱施設化を進めるには必要な制度・サービスを利用しやすくするため、医学モデルから視点を変えることが必要
5.指定発言 安藤 信哉(DPI常任委員)
- 誰も排除しない地域社会をつくるための一つの答えが地域生活支援拠点である
詳細は下記報告をご覧ください。
地域生活分科会では「総括所見、脱施設化ガイドラインから見た改正総合支援法の到達点と課題」と題して報告や議論が進められました。
まず、DPI日本会議の今村氏からは、障害者権利条約第19条の総括所見の概要と障害者総合支援法の改正状況、DPI日本会議としてどう考えるかの方向性について報告がありました。
今村氏からまず述べられたのは、総括所見の懸念や勧告についてで、予算配分を地域移行への配分に変えていくこと、精神科病院での入院について見直すこと、グループホームなどの生活形態についても述べられていること、法的枠組みおよび国家戦略、並びに都道府県の義務として地域移行・脱施設化に取り組むこと、加えて既存の評価スキームに人権モデルで考えることなどの指摘を受け、緊急に対応することを強調されたとのことでした。
DPIとして、脱施設実現に向けて拠点コーディネーターのあり方検討会や19条実現のため、総合支援法全体の抜本的な改革に向けた検討会設置が必要と考えており、そのために DPIビジョン2030のバージョンアップをしていきたい旨が報告されました。
次に全国地域生活ネットワークの丹羽氏からは、主に地域移行コーディネーターや地域生活支援拠点等について全国に行き届くためには必要な検討会を設置し、論点整理する必要があると述べられ、
- 地域移行、地域生活支援の推進の在り方を検討する場の設置
- 現・全施設入所者への意向調査の実施
- 地域移行コーディネーターの具体的な役割の明確化
- 施設入所者への継続的な意向調査とその結果の開示
- 基幹相談支援センターと地域生活支援拠点及び地域移行コーディネーターの業務内容の整理
- 人材の確保と養成 といった課題を挙げられました。
続いて、全国手をつなぐ育成会の田中正博氏からは、今回ジュネーブに直接行って感じられたことや脱施設化に対する思い、気づきなどについて語られました。田中氏によれば、第19条に対する日本への懸念・勧告については入所施設を利用している親御さんからすれば、かなり衝撃的な内容であろうと率直に述べられました。
加えて印象に残ったこととして、知的障害当事者の権利委員であるロバート・マーチン氏からの「日本では2016年にやまゆり園事件のような悲劇があったが、施設入所者がたくさんいることについて考え直したか、地域で暮らすための必要な支援はどのように提供されているのか」という質問があったそうです。
この問いに対して、親亡き後の問題ではなく、本人自身の生き方をどう支えるかが重要であると述べられました。そのためには、地域で暮らす経験を重ねることや支援体制を整えること、計画を丁寧に作ることなどが必要であるとのことでした。
次に東京家政大学の田中恵美子氏は、まず第19条の総括所見の内容振り返った上で、先ずすべきことは、計画的に施設を廃止していくことだと強調し、日本の障害者基本計画や障害者福祉計画は特に、揺らいではいけないはずの長中期目標が揺らぎやすいという特徴があるとのことでした。
加えて、脱施設化ガイドラインにおいてはとりわけ、都道府県の目標値年々下がっていると指摘され、脱施設化を進めるには必要な制度・サービスを利用しやすくするため、医学モデルから視点を変えていく必要かあると述べられました。
そして、指定発言はDPI日本会議常任委員の安藤氏からあり、まず登壇者の方の報告のポイントをまとめられた後、政策目標を実現するための戦略の重要性や「誰も排除しない地域社会をつくるための一つの答えが地域生活支援拠点であると思う」と述べ、地域生活コーディネーターの役割と人材育成に期待を寄せられました。
最後の質疑応答では、談支援員とコーディネーターの役割分担をどうすればよいか、人材確保のための報酬改定どのように行えばよいかなどの質問が寄せられました。
障害者権利条約の総括所見を読み込む中で、どのように日本の障害者運動に落とし込んで進めていけば良いか思いを巡らせいましたが。その足がかりを今回の地域生活分科会から学ぶことができました。
(日本自立生活センター 下林慶史)
参加者感想
地域生活分科会のテーマは、「総括所見、脱施設化ガイドラインから見た改正障害者総合支援法の到達点と課題」でした。
2022年に公表された脱施設化ガイドライン、同年の障害者権利条約対日審査では、脱施設・地域生活の推進を求めています。この動きは、2022年度の障害者総合支援法等の法改正議論にも影響を及ぼし、付帯決議には、対日審査総括所見を踏まえることや当事者参画での今後の法制度見直しの必要の旨が盛り込まれています。
今回の分科会は、こうした流れに沿った意義あるものだったというのが、私の第一の感想です。
地域生活分科会では、複数の重要な論点が指摘されていました。地域生活支援拠点の強化や人材確保と養成の必要など。地域生活支援拠点の整備は、今般の障害者総合支援法改定で市町村の努力義務となりました。脱施設化に向け、この整備の必要はもちろん、ほかにも障害者の地域生活を具体的に支えるパーソナルアシスタントの養成と働き続けるための環境整備に取り組む必要があるでしょう。
脱施設化のために取り組むべき事柄は山積していますが、障害者権利条約が取組の道標になるように思います。
(淑徳大学 山下幸子)
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