【ポイントまとめました】「今こそ本気の地域移行の仕組みを!~障害者総合支援法見直しへの提案~」(DPI全国集会「地域生活分科会」報告・感想)
DPI全国集会「地域生活分科会」について、報告を白井誠一朗(DPI事務局次長)と下林慶史(DPI常任委員、日本自立生活センター)が、感想を塚田芳昭さん(ヒューマンケア協会)が書いてくれましたので、ご紹介します!
こんなことが報告されました(ポイントまとめ)
(敬称略)
1.水流 源彦(NPO法人全国地域生活支援ネットワーク代表/社会福祉法人ゆうかり理事長)
- 「ゆうかり学園」の利用者を114名から40名に削減し地域移行を進めてきた
- 保育園事業では障害の有無に関わらずインクルーシブ保育を実施している
- 基幹相談支援センターが一般相談を受け、緊急対応を地域支援拠点が行う
- 鹿児島市の基幹相談支援センターは原則、共同運営している60法人が順番に担当する方式を採用している
- 地域側と施設側に地域移行支援コーディネーターを置くことが重要
2.渡邉 琢、岡山 裕美(日本自立生活センター(JCIL))
- 京都における地域移行・脱施設化の取り組みや京都市施策推進協議会での施設入所者・待機者の意向調査を行うワーキンググループの立ち上げ経緯について報告
- 2010年代後半からは京都市施策推進協議会の委員として、障害者福祉計画が医療モデルであるという点や地域移行・施設入所者数削減の目標値が記載されていないといった問題点を訴え続けた
- その結果、施設入所者・待機者意向調査を行うワーキンググループが立ち上がった
3.今村 登(DPI日本会議事務局次長)
- 現状として地域移行者よりも新規入所者、希望者の方が上回っているという長年続く傾向がある
- 施設入所者全体は減っているものの理由としては死亡や他の施設に移るなど、高齢化や障害の重度化が原因
- 法的な仕組みとして、地域移行コーディネーターや地域生活支援拠点を創設することや基盤整備のための基金を創設することなどを求めていく
詳細は下記報告をご覧ください。
分科会開催の経緯
昨年の3月から社会保障審議会障害者部会で障害者総合支援法の見直しの議論がスタートしました。DPI日本会議では「DPIビジョン2030」で地域移行の推進を明記し、モデル事業の実施などを通じて、地域移行の具体的な仕組みづくりに向けた提案をまとめています。また、他団体とも連携をして、厚労省などに対しても積極的に働きかけをしています。
その一環として、昨年末の政策討論集会においても、障害者総合支援法の見直しをテーマに地域移行の課題に焦点をあてた分科会を開催しました。
本分科会は、引き続き議論が続けられている障害者部会の検討状況を踏まえながら、地域移行に取り組んでいる事業者やCILの立場からそれぞれの地域における実践と現状の課題を伺うことで、実効性のある地域移行の仕組みづくりに向けた議論を深めていきたいという思いから企画をしました。
分科会で議論したこと
「今こそ本気の地域移行」と題して、まずは地域生活支援ネットワークの水流氏より、自身が運営に関わる「ゆうかり学園」の利用者を114名から40名に削減し地域移行を進めてきた旨、保育園事業では障害の有無に関わらずインクルーシブ保育を実施している旨、60の運営法人で共同運営されている地域支援拠点について報告がなされました。
水流氏によれば、基幹相談支援センターが一般相談を受け、緊急対応を地域支援拠点が行うとのことでした。その際は、様々な社会資源と連携し対応しているとのことです。この鹿児島市の基幹相談支援センターは原則、共同運営している60法人が順番に担当する方式を採用しているのが特徴的です。最後のまとめで地域移行について、地域側と施設側に地域移行支援コーディネーターを置くことであり、その役割が最も重要だと述べられました。
次に日本自立生活センターの岡山氏と渡邉氏からは、京都における地域移行・脱施設化の取り組みや京都市施策推進協議会での施設入所者・待機者の意向調査を行うワーキンググループの立ち上げ経緯について報告があり、70年代・80年代からのアテンダントによる外出支援や研修キャンプから始まり、2000年代の支援費制度、障害者権利条約の批准と完全実施を目指す京都の会の発足、2010年代ピープルファースト京都などの知的障害者の当事者運動の支援を行なっていること。
2010年代後半からは京都市施策推進協議会の委員として当事者参画しており、障害者福祉計画が医療モデルであるという点や地域移行・施設入所者数削減の目標値が記載されていないといった問題点を訴え続け、障害当事者以外の委員からも声が上がりこの度、施設入所者・待機者意向調査を行うワーキンググループが立ち上がったとのことでした。
続いては、DPI日本会議の地域生活部会長の今村より、障害者総合支援法改正に際して、地域移行の仕組みをしっかりと法に盛り込んでいくためのDPI日本会議の考え・提案について述べられました。
まずは、現状として地域移行者よりも新規入所者、希望者の方が上回っているという長年続く傾向が報告され、施設入所者全体は減っているものの理由としては死亡や他の施設に移るなど、高齢化や障害の重度化が原因で地域移行がなかなか進んでいないとのことでした。
こうした現状に対し、DPI日本会議として「DPIビジョン2030」で地域移行の促進を明記しており、昨年度は日本財団の助成を受け、日本自立生活センターや自立支援センターおおいたの協力を得てオンラインを活用した地域移行のモデル事業を行い、その中で実際、1名の筋ジス当事者の方が病棟を出て地域生活を開始されたことなどが報告されました。
この事業では他にも既に地域移行された筋ジス当事者の方に地域移行前後の体験談の聞き取りをまとめ、地域定着するための支援を行うなどされました。
一連の事業の中で、特に議論されていたことは地域移行コーディネーターを地域側と施設・病院側の双方に置き、連携して地域移行を促進することが重要であるとし、法的な仕組みとして、地域移行コーディネーターや地域生活支援拠点を創設することや基盤整備のための基金を創設することなどを求めていくとなどの報告がなされました。
今後に向けて
現在、社会保障審議会障害者部会では、障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについての報告書のとりまとめが行われています。ここでは、DPIが他団体とともに共同して提案している地域移行コーディネーターの設置や地域生活支援拠点の法定化など、一定の意見が盛り込まれています。
今後は障害者部会における議論やとりまとめられる報告書の内容を踏まえた法律改正や地域移行を進めるための具体的な仕組みづくりに向けた検討の場の設置を働きかけることなど、様々な取り組みが重要となりますので、引き続き他団体とも連携しながらしっかり取り組んでいきたいと思います。
参加者感想
三人の登壇者の方の実践や報告を伺い、自分自身の活動に照らし併せることもでき大変有意義な時間となりました。
最初に鹿児島市の水流さんのお話の中で基幹相談支援センターと地域生活拠点の役割を複数法人で担い、地域で一体となって相談支援体制を作り、特に緊急時の支援体制を365日24時間体制で実現されているので、地域移行の受け皿となる支援体制の在り方を確認できました。
次に京都市の渡邉さんと岡山さんからは70年代からの団体の取り組みを昇華させ、権利条約を機会とし、他団体との連携体制や地域福祉計画に地域移行の取り組みを位置付けさせる核となる活動の様子や、常時医ケアが必要で24時間支援が必要な方の地域移行をコロナ化で実践され、地域移行の可能性を大きく広げる取り組みを学べました。
DPIの今村さんからは現状の制度化で支援の手が届いていない施設入所者や長期入院者に地域生活を動機付ける担い手を専任で担う地域移行コーディネーターを制度化することが、現在行われ最終取りまとめに入っている障害者総合支援法の見直しに必要であり制度化に向けて進捗していると伺いました。
登壇者の方やDPIの尾上さんもお話されていましたが、国連障害者権利委員会による日本の条約審査を踏まえての総括所見を前向きなものにし、総合支援法の地域移行を進めるための法整備などをDPIが他の全国団体とも連動している様子が伺えたので、日々の活動に活かしこの流れを後押しできるよう思いを新たにしました。
塚田芳昭(ヒューマンケア協会)
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