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【ポイントまとめました】「コロナの障害者への深刻な影響、障害者権利条約の推進、アジア太平洋から見たSDGsについて」(DPI政策論「国際協力分科会」報告・感想)

2021年12月23日 イベント国際協力/海外活動

DPI障害者政策討論集会2日目「国際協力分科会」について、報告を 降幡博亮さん(ヒューマンケア協会)が、感想を光岡芳宏さん(日本障害者リハビリテーション協会)が書いてくれましたので、ご紹介します!


こんなことが報告されました(ポイントまとめ)

(敬称略)

1.チャパル・カスナビス(世界保健機関(WHO)の支援技術・医療機器ユニット長)

2.秋山 愛子(国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)障害担当官)

3.秋山 愛子×笠柳 大輔(DPI日本会議事務局長補佐)による対談

詳細は下記報告をご覧ください。


分科会開催の経緯

近年の国際協力分科会は、国連障害者権利条約(CRPD)や持続可能な開発目標(SDGs)を取り上げ、アジア太平洋地域でのCRPDの実施状況や「誰一人取り残さない」というSDGsの基本理念実現に向けた各分野での取り組みや政策・施策についての理解を深めてきました。

そのような中、新型コロナの発生は障害者を含む世界のあらゆる分野に影響を及ぼしています。社会的活動の制限によりCRPDの推進に滞りが生じ、2030年という期限までのSDGs達成が困難であるとも言われるようになっています。

今回の国際協力分科会では、明らかになってきた新型コロナの障害者への影響を踏まえながら、「第三次アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)」以降、そしてSDGsが終わる2030年を見据えた将来の障害のあり方を検討していくこととなりました。

分科会で報告・議論したこと(敬称略)

基調講演①「Covid-19と障害者」
チャパル・カスナビス(WHO補助技術・医療機器ユニット長)

今回の分科会では、まず世界保健機関(WHO)の支援技術・医療機器ユニット長であるチャパル・カスナビス氏によるビデオ報告が行われました。新型コロナにより障害者への支援技術の提供は大きな影響を受け、とりわけ2020年3月から同年7月にかけて世界的な技術提供の中断が発生しました。

チャパル・カスナビスさん

補装具や車いすなどを含む支援技術にアクセスできなくなったことで、障害者の生活の質は著しく低下しています。

このことを受けて、支援技術の提供は保健医療と同様の必須サービスであると認識することと、支援技術の提供方法をこれまでの大規模集中的な形からデジタル化および地域分散化に基づくモデルに転換することを、カスナビス氏は提唱しています。

基調講演②「コロナ禍の混乱した現実から障害インクルーシブなアジア太平洋の未来へ」
秋山愛子(国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)障害担当官)

続いて国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)障害担当官の秋山愛子氏による報告が行われました。報告ではまずESCAPの概要と秋山氏の仕事について触れた後、三期にわたる「アジア太平洋障害者の十年」を通じて達成されたことが述べられています。達成されたこととして、

①CRPD、SDGs、仙台防災会議など障害のメインストリーミングに向けた規範の形成
②社会モデルに基づいた統計の増加
③モニタリング・システムの構築
④アセアン障害フォーラムなどの当事者組織の形成
⑤国連内の障害メインストリーミングの推進、などが上げられています。

秋山愛子さん

またコロナ禍における障害者の現状と課題を踏まえたアジア太平洋障害者の十年以降の取り組みとして、障害者の権利の実現という障害者の十年の骨子を残した国連カントリーチームによる実践や企業への聞き取り、権利実現に向けた実践の弱いところにサポートを行っていくなどの方向性が述べられました。

また将来的には、障害に特化した国連機関の設立や開発目標の設定、新たな障害者経済・社会参画モデルの構築に取り組んで行きたいとのことでした。

対話:私たちはどう国際社会と歩みをあわせていくのか
秋山 愛子×笠柳 大輔

報告に続いて秋山氏と笠柳DPI日本会議事務局長補佐との対談が行われましたが、この中では、これからの障害者運動の在り方がポイントになりました。

障害者のニーズは多様化が進んでいますが、それを取り残さないためには、保健医療問題、外国人問題、女性問題、環境問題といった権利や差別、貧困などへの問題意識を共有する運動とつながって障害者運動のすそ野を広げていくことが必要ではないかということでした。

秋山さんと笠柳さんの対談

また人権についてもっと語ることが必要となった一方で、人権アレルギーという現象も生じているといういまの時代の中で、人びとの共感を得ることのできるような運動の情報発信方法を考えていくことが必要ではないかということでした。

またIT技術の進歩とともに、言葉の壁に妨げられがちであった国際協力活動の広がりにも変化が生まれているということでした。

今後の取り組み

新型コロナは世界規模で障害者の生活に強い影響を与えていますが、その一方でIT技術などを活用した新しい障害者運動や支援サービス、国際協力の在り方が試みられるようになってきています。このような新型コロナのなかで生じてきた流れをCRPDの推進、SDGsの達成、そして2030年のSDGs終了後を見据えた国際的な障害者運動につなげていくことは、今後の国際協力分科会の重要な取り組みの一つであると考えられます。

報告:降幡博亮(ヒューマンケア協会)

参加者感想

近年、「SDGs(持続的開発目標)」が、企業やテレビ番組で取り上げられるようになりましたが、「障害」との関連について知識不足だったので、この分科会の内容は非常に興味深かったです。チャパル・カスナビス氏の基調講演では、コロナ禍で障害者への医療的ケアや介助サービスへのアクセスにバリアがあることに改めて危機感を覚えました。

長期化するコロナ禍において、誰もがアクセスできるインクルーシブな保健・医療・福祉システム構築が大きな課題だと思います。秋山愛子氏の講演から、SDGsの達成状況を把握するためには、「数値化・見える化」の必要性を感じ、加えて「障害の視点」からの評価が不可欠であると思います。

現在、障害の属性に関する各種指標が不足しているという問題がある中、今後、作成されるSDGsアクションプランやVNR(自発的な国家レビュー)に、「障害の視点」が盛り込まれるよう、障害当事者からの働きかけを行っていかなければと感じました。

また秋山氏と笠柳氏との対談からは、障害者運動(障害者権利条約の推進)とSDGsとを組み合わせた、新たな動きを生み出せる可能性を感じました。障害当事者の声を核として、柔軟なアイディアを取り入れ、共生社会の実現に向けて取り組みたいです。

(日本障害者リハビリテーション協会 光岡芳宏)


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