2月13日(水)「JDF障害者権利条約 パラレルレポート公開フォーラム in大阪」報告
2019年03月01日 イベント権利擁護障害者権利条約の完全実施
2月13日(水)「JDF障害者権利条約 パラレルレポート公開フォーラム in大阪」が大阪市阿倍野区民センターにて開催されました。
(主催:大阪障害フォーラム(ODF)、協力:DPI日本会議)
当日はODF各団体を中心に、約80名の参加がありました。
開会あいさつ、大阪府福祉部障がい企画課課長武矢幸信さんから来賓のご挨拶を頂いた後、前半はJDF代表の阿部一彦さんからご講演頂きました。
第1部 講演「障害者権利条約を暮らしに生かすために~パラレルレポート作成の取り組み」
報告:阿部一彦さん(日本障害フォーラム代表・日本身体障害者連合会会長)
○国内法整備の重要性
国連で障害者権利条約(以下、権利条約)が採択された後、JDFは国内法の整備を優先させる立場をとり、早急な批准に当事者団体として反対したこと。その結果、障害者基本法・総合支援法・障害者差別解消法などの改正・制定をさせたこと。
障害者基本法の改正では、目的規定の見直し、障害者の定義の見直し、社会モデルの考え方の導入等、障害者権利条約の理念が反映されたこと等、権利条約が日本の法制度にどう影響を与えたかをお話頂き、2019年度はJDFとして障害者差別解消法、障害者基本法、障害者虐待防止法の、見直しについて取り組むと発言されました。
○パラレルレポートについて
2020年度の国連での審査を控えてのスケジュールについては、現在パラレルレポート作成の大詰めであること。2019年の夏に事前質問事項と、国別報告者名(日本の審査担当者)が公表されること。その後日本政府の事前質問に対する回答に、再度パラレルレポートを作成すること。
それらを経て、2020年度には建設的対話(国家審査)が行われ、総括所見が出されること。
その後国内法等の整備実施の働きかけを、障害者団体として行っていくこと等、分かりやすく説明して頂きました。
そしてこの過程で、権利委員等に対する働きかけが重要であることを指摘され、ご自身が2017年にカナダの国家審査の傍聴に行かれた時の詳細をお話頂きました。
カナダからは複数のパラレルレポートが提出され、それら団体の発表前日の会議が夜遅くまで行われたこと、結果翌日の発表はとても良いものであったが、英語が日常に使われている国と日本では状況が違うので、不安があること。本来他国は入れない建設的対話の場にも入り傍聴ができたこと。
カナダ政府や当事者団体とのコミュニケーションが深まったので、その後も関係が続いていること、などを写真を交えてお話頂きました。
次にこれまで準備してきた、パラレルレポートについて、いくつかの例を出しながら説明して頂きました。
特徴的なのが、課題ごとに「事前質問事項案」とそれに対する「総括所見案」を記述していること。
例えば第9条「施設及びサービス等の利用の容易さ(アクセスビリティ)」では、「地方におけるアクセシビリティを推進するためにどのような取り組みをしているか(事前質問事項案)」「地方におけるアクセシビリティ確保を義務づけた法制度を策定すること(総括所見案)」というように、事前質問と所見をセットにしてレポートを作成いること。
また第11条「危険な状況及び人道上の緊急事態」については、東日本大震災を踏まえ、また昨年の大阪での震災等についても適用できるような、レポート案についてご説明頂きました。
○今後に向けて
最後に2020東京オリンピック・パラリンピックに向け、ユニバーサルデザイン2020行動計画が進んでいることに触れられ、それ以降も、大阪万博や札幌冬季オリンピック・パラリンピック構想など、次につなげていくことの重要性についてお話頂きました。
全体を通して、権利条約を決して理念的なものとして捉えるのではなく、何が社会的障壁でどのような合理的配慮が必要かを当事者団体が訴えていくことや、総括所見を「施策を進めるための根拠」として使いながら、私たち自身が地域・生活と密着した施策に適用させていくことが重要であることを、伝えて頂けたと感じました。
第二部 パネルディスカッション
後半はDPI副議長の尾上浩二さんをコーディネーターとしてパネルディスカッション形式で、ODF加盟団体からの課題提起を行いました。
まず障大連の西尾からは、障害者基本法の改正について。
前半の阿部さんのお話も踏まえ、まず2011年に大きく改正された内容を説明し、次回の改正には
・「可能な限り」という文言を削除すること
・新たに「差別」「合理的配慮」の定義の作成、「障害者」の定義の追記
・「障害のある女性」「意思決定支援」の項目の新設
・権利委員会に条約監視機能を追加すること
等が必要であり、障大連の加盟するDPIの案が、ホームページに公開されていることなどを説明しました。
- 障害者基本法改正DPI試案
- 障害者基本法改正DPI試案Vol.1(2017.10.11)
障害者基本法改正DPI試案Vol.2(2017.11.24)
障害者基本法改正DPI試案Vol.3(2018.10.3)(ワード版)、(PDF版)
大阪府聴力障害者協会の大竹浩司さんからは、権利条約で手話が言語として定められ、障害者基本法にも記されていること。その上で、特にろう児の手話言語獲得は急務であり、手話言語法の成立を目指していくこと。パラレルレポートでは、手話言語法とともに、電話リレーサービスの制度化等を求めていくことが話されました。
大阪精神障害者連絡会の山本美雪さんからは、精神障害者の入院期間が長期であること、隔離・身体拘束件数が増加していること、大阪でも全国でもそのような状況になっていること。
その理由として未だに的確な権利擁護の仕組みがないこと。大阪も全国に先駆けて取り組みを進めてきたが充分な状態ではなく、権利条約の対応する項目に則して、不要な長期入院を無くしていくような仕組みが必要であることが話されました。
大阪精神障害者家族会連合会の倉町公之さんからは、大阪府で昨年4月から、ようやく他の障害種別と同様に精神障害者に医療費助成が適用されるようになったが、他の障害より重度障害(1級)手帳の保持者比率が低いことから、より広い適用が必要であること。
また交通運賃の割引きは全国で取り組んでいるが、いまだに一部の交通事業者でしか行われていない実態についてお話がありました。
大阪手をつなぐ育成会の 宮下愛さん(当事者)と佐古久代さんからは、当日刷り上がったばかりの「障害者の権利条約のわかりやすい版」を会場にも配布しお話頂きました。
▽障害者の権利条約のわかりやすい版(大阪手をつなぐ育成会HP)
分かりやすい版は毎年作っているが、今年は権利条約になったこと。昨年の世界大会に参加した時に世界の当事者が当たり前に「CRPD」と言っていたが、何のことか分からずに悔しかったこと。
全部の項目で作るのは大変なので、権利・合理的配慮・虐待など、いくつかの項目に絞ったこと。これを使っての勉強会が2月末にあるので、楽しみにしていることなど。
障害者(児)を守る全大阪連絡協議会の井上泰司さんからは、家族介護の限界性が目で見える形で現れてきていること、寝屋川・三田という大阪やその近辺で障害者を監禁する事件が起きたこと。
虐待防止法で通報はされるものの、その原因に対する対策が不充分であり、地域生活支援拠点の具体化もほとんど進んでいない等、障害者の高齢化に伴う課題が大きくなっているということ等お話されました。
ODF事務局の細井清和さんから、ODFがこの間特に取り組んできた、差別解消条例や福祉医療費制度問題について、報告がありました。
会場からの指定発言として、きょうされんの泉本徳秀さんから、ホームドアの整備が条項人数が多いところに限定されている問題や、駅の無人化の問題等について、お話頂きました。
コーディネーターの尾上さんからは、それぞれの発題について、権利条約の第何条に関係するものか、また課題によっては、JDFが作成しているパラレルレポートの中で、すでに事前質問事項・総括所見案に記載されているということ等、参加者の理解がより深まるよう、補足して頂きました。
最後に阿部さんから、改めてそれぞれの課題や意見をつないでいき、良い総括所見・勧告につないでいくことが重要であること、JDFとして今後も各団体・地域と意見交換を行い、権利条約の完全実施に向け、活動を続けていく旨のご発言を頂きました。
報告:西尾 元秀( DPI日本会議常任委員、障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議)
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